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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第2章】街へ――冒険者への一歩

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【25話】メイドが現れた

目を覚ました時、最初に見えたのは天井だった。


木目のある、どこにでもある宿の天井。

戦場の闇でも、魔獣の残骸でもない。


「……生きてる、のか」


声は、ひどく弱々しかった。


体を起こそうとして、力が入らないことに気づく。

魔力も、底が抜けたみたいに空っぽだった。


――まただ。


あの時も。

村を救った時も。

結局、ノートに頼っただけ。


自分の力じゃ、何もできていない。


「……守れた、なんて……」


自嘲が、喉に引っかかる。


ベッドの脇で、椅子が軋んだ。


「起きた?」


リュカだった。

怪我はもう治っているらしいが、包帯の痕がまだ残っている。


「……ごめん」


反射的に、そう言っていた。


「え?」


「俺が、弱いから……無茶させた」


言葉にすると、余計に胸が痛んだ。


リュカは少し驚いた顔をしてから、困ったように笑う。


「トウマ、変なところで責任感じすぎ」


そう言いながらも、その目には不安が残っていた。


――また、同じことが起きたら。


その答えは、二人とも持っていなかった。


回復してからの日々は、拍子抜けするほど平凡だった。


薬草摘み。

配達。

討伐と呼ぶにはお粗末な小型魔獣の間引き。


以前と、何も変わらない。


変わったのは、トウマの中身だけだ。


(ノートを使わなきゃ、俺は……)


闇属性の魔法を試しても、威力は低い。

工夫しても、リュカの足元にも及ばない。


結局、また彼女の背中を見るだけ。


――昇格依頼なんて、夢だったのかもしれない。


そんなある日のことだった。


ギルドの扉が開き、場の空気が微妙に変わった。


「……?」


視線を向けると、そこにいたのは――


メイド服の少女。


フリルの多い黒と白の衣装。

場違いにも程がある。


年頃はトウマと同じくらい。

銀色に近い淡い髪と、どこか作り物めいた整った顔立ち。


少女は、一直線に――トウマを見た。


次の瞬間。


「お会いできて光栄です、ご主人様!」


「…………は?」


思考が止まった。


少女はスカートの端を摘まみ、完璧な所作で一礼する。


「私はあなたに仕える存在。ずっと、あなたをお慕いしておりました」


その声、その言い回し。

――何か、引っかかる。


(……待て)

脳裏に浮かぶのは、前世のノート。

痛すぎる設定。

「主人公ラブ」「絶対忠誠」「メイド」。

一致点が、多すぎる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!人違いだ!」


「いいえ。間違いありません」


少女は即答した。


「あなたはトウマ様。闇を宿し、自己評価が低く、無駄に責任感が強い」


「やめて! それ以上言わないで!」


リュカが、横からじっと少女を見ている。


「……ねえトウマ」


「な、なんだ」


「この子、どういう知り合い?」


「知らない! 本当に!」


少女は、にこりと微笑んだ。

「今は、考える余裕なんてありませんよね」


少女は静かに距離を詰める。


「無理に理解しなくて大丈夫です。ただ、覚えていてください。私はいつでも、ご主人様の味方ですから」


トウマの背筋に、ぞくりとしたものが走った。

懐かしさ。恥ずかしさ。そして、確信。


――これは、偶然じゃない。


ノートの力の延長線。


平凡な日常に、また一つ。

不穏な歯車が、噛み合い始めていた。

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