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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第2章】街へ――冒険者への一歩

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【24話】昇格依頼

翌朝、ギルドの扉をくぐると、見慣れた受付の女性がこちらに気づいて手を振った。


「トウマさん、リュカさん。少しよろしいですか?」


呼ばれてカウンターへ向かうと、彼女は一枚の書類を差し出す。


「最近の依頼内容と達成状況を確認しました」

「お二人、そろそろ――冒険者ランク昇格依頼を受けてみませんか?」


一瞬、言葉を失った。


「……昇格、ですか?」


「はい。正式な試験依頼です」

「危険度は上がりますが、実力を示せば問題ありません」


俺は横を見る。

リュカも、少し驚いた顔をしていたが、すぐに小さく息を整えた。


「……二人で、受けられますか?」


「ええ。ペアでの受注も可能です」


視線が交わる。


「どうする?」

俺が聞くと、リュカは少しだけ迷ってから、頷いた。


「……受けよう」

「今なら、できる気がする」


胸の奥が、静かに熱を帯びた。


「お願いします」


受付の女性は微笑み、依頼内容を読み上げる。


「指定地域に出現する《グレイウルフ》一体の討伐」

「単体行動が多く、知能は低めですが、素早さに注意してください」


――討伐自体は、順調だった。


森の奥、開けた場所で現れたグレイウルフは、想定通りの動きだった。

俺が前に出て間合いを取り、リュカが後方から魔法で牽制する。


連携は噛み合っていた。


「今!」


リュカの声と同時に、俺が踏み込む。

数合の後、獣は地に伏した。


「……やった」


肩で息をしながら、剣を下ろす。


その瞬間だった。


――背後の空気が、歪んだ。


「トウマ、後ろ――!」


叫びと同時に、何かが地面を裂く音。


間に合わない。


黒い影が、木々の間から飛び出した。

グレイウルフより一回り大きい、異質な魔力を纏った魔獣。


別個体――いや、想定外。


回避しきれず、狙われたのは――


「リュカ!」


鈍い音。

衝撃とともに、リュカの身体が吹き飛ばされる。


「っ……!」


地面に叩きつけられ、動かない。


頭が、真っ白になった。


「リュカ……!?」


駆け寄ろうとするが、魔獣が立ちはだかる。

牙が、俺に向けて剥かれた。


(くそ……!)


剣を握る手が、震える。


――ノートを使えば、勝てる。

でも。


(間に合わない)


視線の端で、血に染まったリュカの姿が映る。


(また、守れないのか)


胸の奥が、焼けるように痛んだ。


――その瞬間。


音が消えた。


世界が、俺を中心に静止する。


胸元が、熱い。


ノートだ。


勝手に、開いていた。


ページが、白く発光する。


《条件、達成》

《使用者の“自力による選択”を確認》


《封印、部分解除》


視界が、闇に染まる。

だが、それは恐怖じゃない。


――理解だった。


(……そうか)


俺は、初めて“選んだ”。


頼らないことも、

頼ることも。


魔力が、身体の奥から溢れ出す。

今までとは、違う感覚。


「……下がれ」


自分の声が、低く響いた。


魔獣が、一瞬だけ怯む。


闇が、俺の影から立ち上がる。


それは武器でも、魔法でもない。

意志そのものだった。


「俺が――終わらせる」


次の瞬間、世界が再び動き出す。


魔獣が低く唸り、地面を蹴った。


速い。

さっきまでなら、間違いなく反応できなかった。


――でも、今は違う。


世界が、妙にゆっくり見えた。


(……逃げるな)


俺は深く息を吸い、足を踏みしめる。


背後で、リュカの小さな呼吸音が聞こえた。

生きている。それだけで、胸が締めつけられる。


「……詠唱に入る」


誰に言うでもなく、そう呟いた。


闇が、足元から静かに広がる。

恐怖じゃない。

これは――俺の影だ。


「――我は拒む」


魔獣が飛びかかる。

牙が迫る。


「理を、運命を、定められた結末を」


一歩、前に出る。


「我は否定する」


影が、空間を侵食するように伸びる。


「名を持たぬ闇よ、ここに集え」


魔獣の動きが、明らかに鈍った。

まるで空気そのものが、重くなったかのように。


「これは魔法ではない」


胸の奥が、熱く、痛い。


「誰かに与えられた力でもない」


詠唱が長い。

だが、不思議と焦りはなかった。


「――俺自身が選び、掴み取った“意志”だ」


闇が、形を持ち始める。


刃でも、槍でもない。

ただ“断絶”そのもののような黒。


「終焉を拒む記録よ」


ノートが、勝手に震えた。

だが、ページは開かない。


(……今は、いらない)


「――《黒影・断章》」


最後の言葉と同時に、闇が解き放たれた。


音は、なかった。


ただ、影が走り、

魔獣の存在そのものを――切り離した。

次の瞬間。


魔獣は、崩れ落ちた。


肉体ではなく、

“力”が先に壊れたかのように。


地面に倒れ伏したそれは、二度と動かなかった。

魔獣の残骸が、ゆっくりと霧のように消えていく。


完全に――終わった。


俺は、その場に立ったまま、動けずにいた。


(……勝った、よな)


そう思った瞬間。


ぐらり、と視界が傾いた。


「……っ」


足に力が入らない。

いや、足だけじゃない。

体の内側が、空っぽになったみたいだった。


(まず……い……)


「トウマ――!?」


リュカの声が聞こえた。

でも、振り返ることができない。


耳鳴りがする。

世界の音が、遠ざかっていく。


(……やっぱり、無理、したか)


闇を使った感覚が、まだ体に残っている。

熱くて、冷たくて、輪郭が曖昧で――

自分の体なのに、他人のものみたいだ。


「……リュ、カ……」


名前を呼ぼうとして、声にならなかった。


視界の端で、リュカが駆け寄ってくるのが見える。

必死な顔。

泣きそうな、怒っているような――そんな表情。


(ああ……)


(ちゃんと、守れた、よな……)


それだけを確認したくて、

俺は無理やり意識を繋ぎ止めようとする。


そのとき。


胸元で、ノートが――重く脈打った。


まるで心臓みたいに。


《警告》


そんな言葉が浮かんだ気がした。


《負荷超過》

《使用者の意識維持、困難》


(……今さら、かよ……)


苦笑しようとして、できなかった。


視界が、暗く染まる。


最後に見えたのは、

俺の体を抱き留めようとする、リュカの細い腕だった。


「トウマ! ねえ、目、開けて……!」


声が、震えている。


(……ごめん)


(でも――)


(次は、もっと上手くやる)


そう思ったところで。


意識は、完全に途切れた。

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