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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第2章】街へ――冒険者への一歩

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【23話】預ける背中

ギルドへ戻る道すがら、俺は無意識に拳を握っていた。

今日は、うまくいった。

――少なくとも、戦いの最中は。


受付で依頼完了の手続きを終えると、背中に視線を感じた。


「……来たな」


ヴァルドの声だった。

振り返ると、エリオと並んでロビーの壁際に立っている。


「お疲れ」

エリオが軽く手を振る。


近づくより早く、ヴァルドは俺とリュカをじっと見据えた。


「……ほう」


それだけだったが、背筋が自然と伸びる。


「どうしたんですか?」

俺が聞くと、エリオが先に口を開いた。


「いやさ。二人とも、前と“立ち方”が違う」


「立ち方……?」


「うん。気配、かな」


エリオは指で宙をなぞる。


「前はさ、同じ場所にいても、別々の方向を向いてた」

「今は――ちゃんと、同じ戦場に立ってる」


ヴァルドが低く頷く。


「互いの間合いを理解している」

「無意識でな」


胸が、少しだけ熱くなった。


「……でも」

俺は言う。

「俺たち、見てないんです。お互いのこと」


「?」


「リュカが、どんな訓練をしてるかも」

「俺が、何をしてるかも」


リュカが一瞬、目を見開いた。


(……そうか)


俺は知らなかった。

リュカがどんな特訓をしていたのか。

どんな壁にぶつかって、何を掴んだのか。


同時に、リュカも俺を見ていない。

ヴァルドにしごかれ、剣を振り、何度も倒れた俺の姿を。


それでも――


「それでいい」

ヴァルドが断言した。


「見えないところで積み重ねたものは、戦場で滲み出る」

「今日のお前らは、まさにそれだ」


エリオが笑う。


「隠れて修行してたんでしょ?」

「二人とも」


リュカが小さく息を吸う。


「……はい」

「トウマに遅れたくなくて」


俺も、正直に答えた。


「……足手まといになりたくなかった」


一瞬の沈黙。


それから、ヴァルドが杯を持ち上げた。


「立派だ」

短く、重い一言。


「お前たちは、もう“偶然並んだ二人”じゃない」

「選んで、背中を預けている」


エリオも続ける。


「これ、結構すごいことだからね?」

「大抵は、どっちかが見えるようになって、どっちかが見えなくなる」

「でも君たちは、両方とも“見えないまま”進んでる」


その夜、四人で食事をした。

笑い声もあったし、他愛のない話もした。


でも、俺の胸の奥では、ずっと何かが静かに動いていた。


――宿に戻ったあと。


ベッドに腰掛け、俺は胸元からノートを取り出す。

前世の、黒歴史ノート。


(……今日は、使ってない)


使わずに、戦った。

それでも、前に進めた。


ページをめくる。


いつもの、見慣れた文字。


――と。


その先。


本来なら、何もないはずの場所に。


白紙だったはずのページに、

薄く、滲むように文字が浮かび始めていた。


《条件、未達》

《使用者の“自力”を確認》


《――新規ページ、解放準備中》


息を呑む。


(……なんだ、これ)


ノートは、俺を甘やかしていたわけじゃない。

試していたのか。


俺は、ノートを強く握りしめる。


(……まだだ)


まだ、この力に頼るべき時じゃない。


でも――

確実に、次の扉は、そこにあった。

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