【19話】闇に選ばれ、光に並ぶ
翌日、俺とリュカでギルドを訪れると、受付の女性がにこやかに声をかけてきた。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした。おふたりは今まで、レベルと魔法適性の測定をしたことはありますか?」
俺とリュカは顔を見合わせてから、揃って首を横に振る。
「いいえ、したことないです」
「ええ」
「それなら、今やってみませんか?」
「お願いします」
「ええ」
測定用の部屋に通されると、床の中央には複雑な魔法陣が描かれていた。
受付の女性が説明を始める。
「この魔法陣の上に立って、自然体で魔力を流してください。ご自身の適性が分かります」
俺は魔法陣を見下ろしながら、少しだけ息を整えた。
(……正直、自分がどんな魔法に向いてるのか、全然わからないんだよな)
隣では、リュカが両手を軽く広げて目を閉じている。
(全部使えるはずだけど……どれが得意かは測ってみないと、か)
やがて測定が始まり、魔法陣が淡く光り出した。
光は俺たちの足元から立ち上り、空間に色として浮かび上がっていく。
しばらくして、受付の女性が結果を告げた。
「トウマさん。魔法属性の適性は……闇属性が中心ですね。他の属性は、ほとんど反応がありません」
「……へぇ」
続いてリュカの方を見る。
「リュカさんは、全属性に適性があります。その中でも、光属性との相性がやや高めですね」
「なるほどね」
俺たちは互いに顔を見合わせ、小さく頷いた。
その時、背後の扉が開いた。
「お、今日は測定か」
振り返ると、ヴァルドとエリオが部屋に入ってきた。
ヴァルドが剣に手をかけたまま、簡潔に名乗る。
「改めて言っておく。俺はヴァルド・セリオン。風と闇属性適性持ち。冒険者ランクはC、レベルは386だ」
続いてエリオが軽く手を振る。
「エリオ・ラヴィアン。全属性いけるけど、光を使うことが多いかな。ランクは同じくC、レベルは333。森ではちょっとカッコ悪いとこ見せたけど……俺たち、意外と強いだろ?」
俺はリュカと顔を見合わせ、少し照れながら頷いた。
(……実際、あの二人は本当に強い)
受付の女性が話を戻す。
「それでは次に、レベル測定を行いますね」
再び魔法陣の上に立つと、今度は空気そのものが微かに揺れた。
やがて、数字が宙に浮かび上がる。
「トウマさんのレベルは15です。まだ低いですが、成長の余地は十分あります」
……まあ、そんなもんだよな。
「リュカさんは、レベル87ですね。冒険者になったばかりとしては高めですが、慢心せず訓練を続けてください」
リュカは少し驚いた顔をしてから、小さく頷いた。
ヴァルドが低く笑う。
「なるほど。トウマは俺と適性がかぶっているな。手が空いた時に稽古をつけてやる。覚悟しておけ」
エリオも楽しそうにつぶやく。
「へぇ、リュカちゃんは俺と同じタイプか。じゃあ、俺が手取り足取り教えてあげるよ」
俺は思わず、拳をぎゅっと握りしめた。
(……これからが、本番だな)
視線を向けると、リュカも静かに微笑んでいる。
どうやら、同じ気持ちらしい。
受付の女性が、場を締めるように言った。
「これで測定は終わりです。次は掲示板から依頼を選んでください。初めてでしたら、簡単なものが良いですよ」
俺とリュカは測定室を出て、ロビーの掲示板へ向かう。
壁一面に貼られた依頼書を眺めながら、俺は呟いた。
「草刈り、運搬、護衛……思ったより色々あるな」
リュカが一枚の依頼書を指差す。
「これ……薬草摘み。危険度も低めみたい」
「うん。最初は、これくらいがちょうどいいな」
俺たちはその依頼書を外し、受付に提出した。
「この依頼を受けます」
「はい。では、道順と注意事項を説明しますね」
説明を受け終え、俺たちはギルドを出て街の門へ向かう。
「初めての依頼だと思うと……ちょっと緊張するね」
リュカの言葉に、俺は小さく息を吐いた。
「まあな。でも――頑張ろう」
リュカも笑みを浮かべ、俺たちは並んで門をくぐった。
空は高く澄み渡り、街を出た途端、道は前よりもずっと広く、長く感じられる。
胸の奥に、わずかな高揚と期待が混ざり合った。
(……これが、冒険者としての最初の一歩か)
そう思いながら、俺は前を見据えた。。




