EPISODE.41話〘二つの協力クエスト、そして木箱の中に眠る従魔の卵〙
翌日、俺たちは昨日見た進捗状況の結果に驚いていたが、やることはいつも通りやるだけだ。
ロウハさんの畑仕事を手伝ってから街に行くのが、俺たちのルーティンになっていた。
畑の作業を終えた、その時。突然、足元が光りだした。
光が消えた後、俺たちは街の中央噴水広場に立っていた。
「従魔たちも居るな。良かった」
俺たちだけでなく、他のプレイヤーも全員ここに集められているようだ。
すると、アナウンスが流れた。
【各グループの皆さん、イベントも半分が過ぎ、本日16日目から進捗状況によって難易度が大きくストーリーが変わります。まず、4つのグループは難易度が上がります。どこのグループかは、この後に分かりますのでご了承下さい。次に3つのグループは難易度が少しだけ上がります。次に2つのグループは難易度はそのままです。最後に残ったグループは、難易度はかなり下がります。以上になります。ではこれより協力イベント開始致します。頑張って進捗状況を上げて下さい。】
ざわつく広場に、この街の町長ら住人たちがこちらに向かって来た。
「おお、冒険者達、ここにいたか。丁度お願いがあるのだよ。君たちに協力して欲しいのじゃ。」
プレイヤー全員の画面が開いた。協力依頼クエストだ。
【協力依頼クエスト】
・騎士団が街を防衛をしている。救援物資を運搬して欲しい。
・生産作成するアイテム素材を採取して欲しい。
※この2つを協力して達成せよ。
報酬: クリア達成率により、全員一律の報酬。
(なるほどね、ほとんどが収穫の方に行くだろうな。どうせ、ロクでもないプレイヤーだらけだろうし)
俺はそう思っていた。
リョウと相談し、俺たちはあえて「救援物資支援」に向かうことに決めた。
俺たちが救援物資支援に向かおうとしたその時、2人のプレイヤーから声をかけられた。
「…あの〜…あなた達に聞きたい事があるんですが、いいですか?」
「…何でしょうか?」
「今の協力依頼クエストですけど、二手に分かれて作業なのですが、あなた達はどちらに行くのかを聞きたくて、話しに来ました」
「…なる程、他のプレイヤー達は全て聞いたのかい?」
「一応聞きました。それでその……どちらに行かれますか教えて頂けませんか? お願いします。」
2人のプレイヤーが深々と頭を下げた。
教えても、どうせ救援物資支援に行くのは俺たちだけだろうけどね。
俺は2人に答えた。
「…救援物資支援だ。時間が無いから、先に行かせて頂くよ。」
「あの、待って下さい。私たちも今から行くので一緒に同行させて欲しい。」
意外な返事が返ってきたので、驚いてしまった。リョウに相談し、同行を了承する。
「すみません、名前を言ってなかったですね。私は、マイ、弓使いです。」
「私は、ナナ、魔法使いです。よろしくお願いします。」
「トレンだ、素材採取師、従魔のエアネス・ヴィーシュ・ペルナギだ。」
「リョウっす。剣闘士、従魔のナイトディラン・ヴェイルガー・サクメっす。」
従魔たちはマイとナナに一礼した。
それを見た2人が小声で話している。
「噂通りの方だよ」
「本当だよ。マジ同行でも嬉しいけどね~」
ん? どういう意味だ?
理由を聞くと、どうやら俺たちがエリアを解放したことや従魔のことが掲示板で話題になっており、トッププレイヤーだと思われているらしい。
(勘弁してくれよ。俺たちは、のんびりプレイするだけなのに……)
俺は心の中でそっと溜息をついた。
俺たちは無事、騎士団の所に到着した。
話によると、防衛門を守っている騎士たちに回復アイテムを届けてほしいそうだ。
俺たちは了承し、準備に取り掛かった。
「よし、さっそく防衛門まで運ぶか。」
「そうっすね。行きますか。」
出発しようとした時、ナナに呼び止められた。
「…出発って、荷物は? 荷物無いみたいですけど、どこにあるのですか?」
「…ああ、あるよ。マイさんとナナさんは、そこで次の準備をお願いしていいかな? 俺たちだけで向かうから、よろしくお願いします。」
俺たちは、2人に頭を下げた。従魔のマジックボックスを知られたくないのだ。
2人は慌てて「頭を上げてください!」と返事した。
運搬を開始してすぐ、俺はリョウに言った。
「ペルナギとサクメのマジックボックスのことは、他のプレイヤーには見せたくない。リョウも頼むよ。これが知られたら、乱獲されたり奴隷のようにこき使われるかもしれない。それは絶対にさせたくないからな」
「そうっすよ。守ってみせるっす」
俺たちの言葉に、ペルナギとサクメは本当に嬉しそうに微笑んでいた。
ようやく防衛門に到着する。
「あの、騎士団から救援物資を持って来ました。
どこに置けばいいでしょうか?」
「おお、助かった。こっちに置いてくれ。」
指示された場所に支援物資を並べていく。
1時間後、全ての荷物を降ろし終えて報告した。
「荷物を降ろし終えました。これでいいでしょうか?」
「おお、これだけの量を運んでこれたのか? 2人では不可能だと思ったが……」
「はい、実は従魔のペルナギとサクメがマジックボックスを持っておりまして。あまり知られたくないことだったので、正直にお話ししました。」
「いや、君たちは正直に言ってくれた。我々も騎士団長として、この場にいる者たちに箝口令を敷くことを約束しよう。これだけの物資があれば、かなり持ち堪えられる。ありがとう、冒険者よ。」
「いえいえ、また戻ったら支援物資を持って来ます。」
「それならちょっと待っていてくれ。」
騎士団長は部下に指示を出し、奥のテントから書類を持って戻ってきた。
「向こうに戻ったら、これを担当に渡してくれ。」
「分かりました、必ずお渡しします。では、皆さん頑張って防衛して下さい。失礼します。」
俺たちと従魔が深く一礼した。
すると、騎士団長が声を張り上げた。
「冒険者達に敬礼!!」
騎士たちが一斉に敬礼する。
俺たちはその見送りを受けながら、元の場所へ戻った。
その時、アナウンスが流れた。
【只今、救援物資支援の協力クエストクリア達成しました。現在、クリア達成率50%】
「えええぇ~!! あの量だけでクリア?」
まあ今更だけど、ペルナギとサクメが優秀すぎる。
帰還すると、ナナさんとマイさんが駆け寄ってきた。
「トレンさん、リョウさん、アナウンス聞きました?」
「ああ、荷物を渡した時に聞いたよ。」
マイさんによると、俺たちの運んだ「あの量」で戦況は十分だったらしい。
2人は俺たちが帰ってくるのを待っていてくれたそうだ。
「これからどうしますか?」
「もう一つの協力クエストに行くつもりだ。俺たちはね。マイさんとナナさんは?」
「あの、ご迷惑じゃなかったら、私たちも一緒に同行します。」
俺たちは了承し、次の目的地へ向かった。
数時間後、採取場所に到着した。
前線の騎士団員に事情を話し、預かった手紙を責任者に渡してもらう。
数分後、俺たちに会いたいとのことで案内された。
「失礼します。騎士団長、例の冒険者達をお連れしました。」
「ご苦労、下がって良いぞ。」
「は!」
「初めまして、師団長のロックスだ。先程の救援物資支援の件は本当に感謝する。礼を言わせてくれ。」
師団長は深く一礼した。
「いえいえ、当然の事をしたまでですよ。それよりも、素材採取の方はどうですか? 他の冒険者達は?」
「それが、冒険者達の採取は順調なんだが……全然足りないのだ。このままではアイテム製作に間に合わない。」
「なる程、それなら今から俺たちも採取に協力します。」
「本当か!! 助かるよ。よろしく頼んだよ。」
一礼して現場へ向かうが、そこにいたプレイヤーたちは疲弊していた。
1人のプレイヤーに事情を聞く。
「大丈夫ですか? 何があったのですか?」
「採取しても、厄介な敵が奪っていくんだよ。……ほら、あいつだよ!」
指差す先では、魔物が素材を根こそぎ強奪して逃走していた。
俺が【鑑定】しようとした瞬間、リョウがナイトディランに指示を出す。
一瞬で敵を捕まえた。早い!
「ナイトディランが新たなスキルを使ったっすよ。スキル【狼速】っす!」
捕獲した敵を【鑑定】する。
『シーキャッツ』だ。
強奪された素材は守り抜いた。
さらに俺は【捜査】を発動した。
「かなりいるな……全部で46体だ」
「マジっすか? なら、自分たち2人で殲滅しますか」
すると、ナイトディランが吠えた。
エアネスが通訳する。
「インフェルウルフの王権を使ってと言ってます。」
「了解っす。ナイトディラン!!【インフェルウルフの王権】!!」
「ウゥゥゥゥゥワォォォォォォォォォォォォォォォン!!!」
咆哮一閃。
シーキャッツたちは恐怖で動けなくなった。
その隙に従魔たちに指示を出し、一気に殲滅する。
再度【捜査】をしたが、もう気配はない。
後ろで見ていたマイさんとナナさんは呆然としていた。
「…なんですかこれ? シーキャッツを殲滅した?」
「ナイトディランの察知範囲が広いからな。敵を発見して殲滅しただけだよ。」
その後、俺たちは驚異的なスピードで採取を開始した。
数時間後、大量の素材を確保する。
俺たちの活躍を聞いた他のプレイヤーもやる気を出したようで、現場は一気に活気づいた。
俺たちは一旦、師団長のもとへ戻った。
「只今戻りました。採取した素材は何処に置けばいいでしょうか?」
あまりの量に師団長は唖然としていた。経緯を説明すると、深く感謝された。
「なるほど、シーキャッツがいたのか。それなら今までの不振も納得だ。トレンさん、リョウさんにマイさん、ナナさん。本当にありがとう。これだけあれば安心だ。」
全員がやり切った顔をしていると、アナウンスが流れた。
【アイテム素材採取の協力クエストクリア達成しました。クリア達成率100%になりました。直ちに全ての協力クエスト終了です。おめでとうございます。】
さらにアナウンスが続く。
【おめでとうございます。協力クエストクリア達成、初グループが出ました。直ちにクリア達成者は、今から2時間後、イベントに戻りますので、ご了承下さい。】
どうやら俺たちの第1グループが最初の達成者らしい。
他のプレイヤーは大歓喜だ。
俺たちは気づかれないように師団長のもとへ向かい、最後のご挨拶をした。
「任務終了しました。ここを離れる前にご挨拶を、と思いまして。」
「ああ、君たちの活躍には本当に救われた。心から感謝する。」
ロックス師団長は一礼し、2つの木箱を差し出した。
「君たち2人だけに渡したいものがある。これを受け取ってくれ。……従魔の卵だ。」
「「従魔の卵!!!」」
驚愕する俺たちに、師団長は優しく笑った。
「採取中に騎士団員が巣を見つけたんだ。君たちなら大事にしてくれると思ってね。」
ありがたく受け取ると、他のプレイヤーへの報酬(シーキャッツの卵)も預かった。
さらにマイさんとナナさん用の卵を【鑑定】すると、なんと【地の精霊】の卵。これは特別に渡してあげよう。
去り際、ロックス師団長が号令した。
「冒険者トレン、冒険者リョウ、冒険者の従魔達に敬礼!!!」
全騎士の敬礼を背に、俺たちは他のプレイヤーのもとへ戻った。
まずマイさんとナナさんを呼び出し、預かった木箱を渡す。
「これは……従魔の卵!?」
「しかも【地の精霊】!? 凄すぎるよ! スキル取らないと損だわね!!」
2人が驚愕している間に、俺たちは他のプレイヤー16名にも報酬を配った。
当然、「従魔の卵!」と大騒ぎになったが、経緯を説明すると皆大喜びだ。
一段落したところで、マイさんとナナさんが少し照れくさそうに切り出した。
「フレンド申請してくれない? イベントが終わってからも交流したいし、良いかな?」
リョウと顔を見合わせ、俺たちは笑顔で頷いた。
「俺たちはいいよ。よろしく。」
「ありがとう! さっそく申請するね。」
フレンド登録を済ませると、再び足元が光に包まれる。
「あ! 光りだした。転送開始みたいね。何かあった時は連絡してね。」
「ああ、分かったよ」
俺たちはそう言い合い、元の位置に転送されたのだった




