EPISODE.308話〘未知の山岳エリア――悪夢再び〙
いつも本作をお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、ヴィーシュとヴェイルガーに関係しているというグラディア山岳へ、八人で向かうところから始まります。
まだ足を踏み入れていなかった山岳エリア。
その先で、トレンたちを待ち受けているものとは――。
今回も最後までお楽しみいただけましたら幸いです。
八体の氷の精霊たちは、同じ【シヴァ】でありながら、それぞれ能力値もスキルも奥義も異なっていた。
しかも八体すべてがユニークモンスター。
俺たち四組の従魔編成に合わせたように、それぞれ能力の特徴が違っている。
もちろん、そのことも気になる。
だが――。
俺がそれ以上に気になっていたのは、シヴァーレナス様が言っていたヴィーシュとヴェイルガーのことだった。
六体の氷の精霊たちは、ヴィーシュとヴェイルガーからグラディア山岳に関係する何かを感じ取ったという。
何故、俺とリョウのヴィーシュとヴェイルガーが関係しているんだ?
グラディア山岳に何があるのかも分からない。
それでもシヴァーレナス様の言葉を思い返していると――。
これが俺たちにとって、新たな試練の始まりになるような気がしてならなかった。
するとリョウも、俺と同じことを考えていたようだった。
「トレン、もしかしてヴェイルガーとヴィーシュの関係と、自分たちの何かのイベントが絡んでいる感じっすね」
「ああ、俺も同じに感じる。新たな試練への茨の道を感じるよ」
グラディア山岳――。
そこに何があるのか分からないなら、実際に行って確かめるしかない。
俺はシヴァーレナス様へ視線を向けた。
「シヴァーレナス様が言っていたグラディア山岳に向かいます。その後、エリアボスへ向かう前にドラレード山岳も調べてみます」
「ありがとう、トレン、リョウ。よろしくお願いします」
シヴァーレナス様は俺とリョウへ頭を下げた。
ナナ、マイ、ナギサ、バレグ、サンオン、バウトの六人も、俺たちと一緒に協力するとシヴァーレナス様へ伝える。
「みんな、ありがとう。グラディア山岳のことも、ドラレード山岳から消えた氷の精霊たちのことも、よろしくお願いします」
俺たちが頷くと、シヴァーレナス様の身体が淡い光に包まれた。
「それじゃあ、また会いましょう」
その言葉を最後に、シヴァーレナス様は光の粒となって、その場から姿を消した。
俺はシヴァーレナス様が消えた場所を見ながら、ふと気になったことを思い出す。
今回、全員に新たな従魔が加わった。
「そういえば、みんなのテイマーギルドランクは?」
突然の質問に、ナナたちが俺を見る。
「テイマーギルドランク? 確か私とマイは12よ」
ナナの言葉に、マイも頷いた。
続いてナギサが答える。
「私たちは15よ」
「「「「「「15!?」」」」」」
俺たちは一斉に声を上げた。
「ちょっと待ってくれ。ランク15ってかなり早くないか?」
するとナギサとバレグは顔を見合わせた。
「前に話したでしょ? スヴァログの街で資金を集めていた時よ」
「一日まるまる依頼を続けてましたからね」
「前に冒険者ギルドの依頼を丸一日やってたのを、テイマーギルドでもやったのかよ」
「そういうことよ」
ナギサは何でもないことのように答えた。
俺とリョウは、二人がまた丸一日ひたすら依頼をこなし続けていたことに驚きを隠せなかった。
するとサンオンが口を開く。
「私は12ですよ」
「私も12です」
バウトも続いて答えた。
「なるほど……」
これで六人のテイマーギルドランクも確認出来た。
俺たちは準備を整え――。
ヴィーシュとヴェイルガーに関係しているという、グラディア山岳へ向かうことにした。
――二時間後。
俺たちはグラディア山岳の入口へ到着した。
そこから八人で山岳を進んでいく。
しばらく進み続け、グラディア山岳の中腹付近まで辿り着くと、草原が広がるエリアへ出た。
俺はその先へ続く山岳地帯を見る。
そういえば――。
この先の山岳エリアが開放されたというアナウンスが流れてから、一度も先へ進んでいなかった。
「この先に進むぞ、リョウ、みんな。まだ行っていない山岳エリアを調べよう」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
こうして俺たちは、まだ足を踏み入れていなかったグラディア山岳の先へ進み、頂上を目指した。
中腹からさらに進むこと一時間――。
俺たちはグラディア山岳の頂上へ到着した。
リョウが周囲を見渡す。
「ここが頂上っすね」
マイも辺りを確認しながら呟いた。
「何もないわね」
「でも、シヴァーレナス様が言っていた以上、何かあるはずよ」
ナギサがそう言った――次の瞬間。
俺とリョウは同時に息を呑んだ。
背筋を凍らせるような、凄まじい気配。
明確な殺気が俺たちへ向けられている。
考えるより先に、俺とリョウは従魔たちへ叫んでいた。
「エアネス【風神大盾】!! ヴィーシュ【爆黎障壁】!! セフィラ【雷光障壁】!! ファヴァン【炎帝流水刃】!! レイネス【闇盾】!!」
「ナイトディラン【氷雷神】!! ヴェイルガー【風龍黎障壁】!! シドレア【多重障壁】!! ヴァルーラ【炎帝障壁】!! レヴァリィ【影盾】!!」
さらに俺も即座に防御魔法を発動する。
「【ガードプロテクシールド】!!」
直後――。
ドゴォォォォォォーン!!
凄まじい一撃が俺たちへ叩き込まれた。
十体の従魔たちが展開した防御と、俺の【ガードプロテクシールド】が重なり合い、その攻撃を何とか防ぎ切る。
「ほう……我が攻撃を防ぐとはね。流石だよ、トレン、リョウ」
「……ッ!!」
「「……!!」」
声が聞こえた瞬間――。
俺とリョウの全身に、先程以上の悪寒が走った。
身体が本能的に警告している。
この威圧感。
この異常な気配。
俺たちは、似た感覚を知っていた。
「アイムフィロゼの気配が消えたからな……ヤツを倒した二人に興味が湧いたよ」
「まさか……この気配……」
リョウの表情も一気に強張る。
「嘘だろ……この気配、魔神四天王っすよ」
すると声の主が俺たちの前へ姿を現した。
「そういえば名乗っていなかったな。我が名は魔神四天王、ヴィネギアオリズだ」
「「「「「「魔神四天王!!」」」」」」
ナナ、マイ、ナギサ、バレグ、サンオン、バウトの六人が同時に声を上げた。
「よりによって、ここで魔神四天王と遭遇するとはな」
「そうっすね。やるしかないっすよ、トレン」
「ああ、そうだな」
俺とリョウが戦闘態勢へ入ろうとした、その時だった。
「場所を移動しよう、トレン、リョウ。他の奴らに興味無いからな」
「即座に殺すくせによ」
俺が睨みながら言うと、ヴィネギアオリズは僅かに笑った。
「そこまで野蛮な事はしないよ」
そして――。
「【魔空陣・転移】」
ヴィネギアオリズがスキルを発動した瞬間、俺とリョウの足元へ巨大な魔法陣が展開された。
同時に、その傍らにいた俺たちの従魔たちまで魔法陣に包み込まれていく。
「なっ――!?」
次の瞬間。
ヴィネギアオリズと俺、リョウ、そして十体の従魔たちの姿は、その場から消えた。
「え……? トレン! リョウ!」
ナナが慌てて周囲を見渡す。
「従魔たちもいないわ!!」
「私たちに興味無い……」
マイは震える声で呟いた。
何も出来なかった。
魔神四天王が目の前に現れただけで、身体が動かなかった。
トレンとリョウが連れ去られるのを、ただ見ていることしか出来なかった。
悔しい――。
そう思っているのに、身体に残った恐怖が消えない。
マイは強く拳を握り締める。
そして脳裏に浮かんだのは、光の大精霊エンジェルクライズ様が言っていた言葉だった。
本当の試練――。
自分たちは、まだそこまで辿り着けていない。
マイはその意味を、今になって痛感させられていた。
――――――――――――――――――――――
一方――。
ヴィネギアオリズの【魔空陣・転移】によって別の場所へ飛ばされた俺とリョウは、すぐに周囲を確認した。
「ここはどこだ? エアネスたちもいる」
エアネスを始め、俺とリョウの十体の従魔たちも全員一緒だった。
リョウも辺りを見渡す。
「山岳にいるけど……」
するとヴィネギアオリズが静かに答えた。
「ドラレード山岳だ」
「「!!」」
俺とリョウは驚愕する。
ドラレード山岳――。
シヴァーレナス様から、氷の精霊たちが消えた原因を調べてほしいと頼まれていた場所。
まさか魔神四天王の手によって、その場所へ転移させられるとは思わなかった。
ヴィネギアオリズは俺たちへ向き直る。
「さて、邪魔はいないし思う存分……君たちの力を見せてもらうぞ!!」
「リョウ!! やるぞ!! ヤツを殲滅するぞ!!」
「了解っす!! トレンと従魔たちみんなで倒すっすよ!!」
俺とリョウ、そして十体の従魔たちはヴィネギアオリズへ向き直った。
こうして――。
魔神四天王ヴィネギアオリズとの戦いが始まるのであった。
だが――。
この時の俺とリョウは、まだ知らなかった。
この戦いが想像を遥かに超える壮絶なものとなり――。
その先に、予想外の展開が待っていることを。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、八人でグラディア山岳へ向かったトレンたちが、魔神四天王ヴィネギアオリズと遭遇するお話となりました。
ヴィネギアオリズの【魔空陣・転移】によって、トレンとリョウ、そして十体の従魔たちはドラレード山岳へ。
一方、グラディア山岳に残された六人も、突然の出来事に大きな衝撃を受けることになりました。
それぞれ別の場所に分かれた八人。
ここからどのような試練が待ち受けているのか。
次回もお楽しみいただけましたら幸いです。
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これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




