EPISODE.307話〘新たな氷の精霊たち――八人を繋ぐ不思議な共鳴〙
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、突然契約を望んできた氷の精霊たちの想いと、その共鳴から新たな出来事へ繋がっていくお話です。
そして、八人それぞれに新たな変化が訪れていきます。
それでは、EPISODE.307話をお楽しみください。
俺たちは目の前に現れた六体の氷の精霊を見ながら、しばらく言葉を失っていた。
まさか特殊イベントの話から、突然契約する流れになるとは思ってもいなかった。
俺は六体の氷の精霊を見たあと、シヴァーレナス様へ視線を向ける。
「契約する前に一つ聞いていいかな?」
「何かしら?」
「どうして、この六体は俺たちと契約したいんだ?」
俺の質問を聞いたシヴァーレナス様は、六体の氷の精霊へ視線を向けた。
「そうね。それを知ってから契約したいと思うのは当然ね」
シヴァーレナス様は再び俺たちを見る。
「この子たちは、貴方たち六人の覚悟と想いに共鳴したのよ」
「共鳴?」
「ええ。精霊たちは姿が見えなくても、人や精霊たちの想いを感じ取ることがあるの。そして純粋な想いや強い決意に共鳴することもあるわ」
その言葉を聞いて、俺は以前にも似たような話を聞いたことを思い出した。
精霊たちは、俺たちから見えていないだけで、こちらを見ていることがある。
そして想いや決意に共鳴し、契約したいと自ら望むこともある。
だが――
シヴァーレナス様は、さらに話を続けた。
「ただ、それだけではないのよ」
「それだけじゃない?」
俺とリョウは顔を見合わせる。
するとシヴァーレナス様は、ヴィーシュとヴェイルガーへ視線を向けた。
「トレンのヴィーシュ。そしてリョウのヴェイルガー」
「「え?」」
「この子たちは、二体からグラディア山岳に関係する気配を感じ取っているのよ」
「グラディア山岳……?」
俺は思わず聞き返した。
グラディア山岳。
以前、新たなエリアとして開放された場所ではある。
だが俺とリョウは、開放したエリアの全てを詳しく探索しているわけではない。
グラディア山岳も、その一つだった。
「ヴィーシュとヴェイルガーに、何かあるってことなのか?」
「それは、貴方たち自身で確かめた方がいいわ」
シヴァーレナス様は、それ以上の答えを教えるつもりはないようだった。
俺とリョウは再び顔を見合わせる。
「また何かありそうっすね……」
「俺もそう思うよ」
俺たちは六体の氷の精霊を見る。
六体は真剣な表情で俺たちを見つめていた。
本当に俺たちと契約したいらしい。
「そこまで俺たちと契約したいと思ってくれているなら、断る理由はないな」
「そうっすね」
ナギサ、バレグ、サンオン、バウトも同じようだった。
六体の氷の精霊へ確認すると、それぞれ嬉しそうに頷いた。
そして――
「「「「「「【テイム】」」」」」」
六人は同時に【テイム】を発動した。
次の瞬間、六体の氷の精霊が淡い光に包まれる。
俺たちは新たに六体の氷の精霊と契約することになった。
そして、それぞれ名前を付ける。
俺が契約した氷の精霊は【ティファラ】。
リョウは【ハルレナ】。
ナギサは【ヴィージェル】。
バレグは【アミールス】。
サンオンは【ミシュエル】。
バウトは【マリスレム】と名付けた。
俺たちが六体との契約を終えた直後――
シヴァーレナス様が、何かを感じ取ったように少し表情を変えた。
「……やっぱり、あの子たちも共鳴したわね」
「あの子たち?」
ナナとマイが不思議そうにシヴァーレナス様を見る。
「貴方たち二人が見つけた、二つの氷の精霊の卵よ」
「「え?」」
「今ここにはいなくても、同じ氷の精霊なの。姿が見えないだけで、精霊たちは互いの想いを感じ取り、共鳴することがあるわ。この子たちが六人との契約を望んだ想いに、あの二つの卵の中にいる子たちも共鳴しているのよ」
ナナとマイは顔を見合わせる。
するとシヴァーレナス様が、二人へ告げた。
「ナナ、マイ。一度ホームへ戻ってあげなさい」
「ホームへ?」
「ええ」
ナナとマイは少し考えたあと、頷いた。
「分かりました。一度戻ってみます」
「私も卵の様子が気になるわ」
ナギサ、バレグ、サンオン、バウトも二人と一緒に向かうことになった。
俺とリョウは、その間ここで待つつもりだった。
「それじゃ、俺とリョウはここで――」
「トレン、リョウ。貴方たち二人も一緒に行きなさい」
「「え?」」
俺とリョウは思わずシヴァーレナス様を見る。
「自分たちもっすか?」
「ええ」
「何かあるのか?」
「行けば分かるわ」
シヴァーレナス様は、それ以上何も言わなかった。
俺とリョウは戸惑いながらも了承する。
「分かった。一緒に行くよ」
「自分も行くっす」
「私はもう少しここにいるわ」
シヴァーレナス様がそう言うと、ファルギマが嬉しそうに傍へ近づき、身体を擦り寄せていた。
本当にシヴァーレナス様へ懐いているらしい。
すると――
俺、リョウ、サンオン、バウトの闇の精霊たちが、何かを訴えるように俺たちを見ていた。
俺たちが首を傾げていると、シヴァーレナス様が微笑む。
「この子たちが、ナナとマイのホームまで送ってあげると言っているわ」
「送る?」
ナナがそう聞き返した直後――
レイネス、レヴァリィ、ミューローズ、ルーレイの四体が力を使った。
俺たちの目の前に空間が広がり、【ワープ】が出現する。
「「「「え?……ええええぇぇぇぇ〜!?」」」」
ナナ、マイ、ナギサ、バレグの四人が一斉に声を上げた。
一方、バウトとサンオンは驚いた様子を見せていない。
ナナは二人の反応に気づいた。
「ちょっと待って。バウトとサンオンは知ってるの?」
「闇の精霊の里で知りましたから」
バウトがそう答える。
俺が説明しようとしたその時――
「俺から説明を――」
「私から説明するわ」
シヴァーレナス様が俺の言葉を遮るように口を開いた。
「【ワープ】は、精霊の中でも闇の精霊たちが持つ特別な力なのよ。とても珍しい力だから、むやみに人前で見せるものではないわ」
四人は目の前にあるワープと闇の精霊たちを交互に見る。
するとシヴァーレナス様は、今度は俺が持っている杖へ視線を向けた。
「ただし、精霊以外にも極稀に同じ力が宿ることがあるわ」
「精霊以外にも?」
ナギサが不思議そうに聞く。
「ええ。例えば――トレンの杖ね」
「「「「え!?」」」」
今度は四人の視線が一斉に俺へ向けられた。
「トレンも【ワープ】を使えるの!?」
ナナが驚きながら聞いてくる。
「正確には、この杖だよ」
俺は杖を四人へ見せた。
シヴァーレナス様が、その杖を見ながら説明する。
「その杖には虹色結晶が使われているわ。その結晶に宿った力によって、【ワープ】を使えるようになっているのね」
俺は頷いた。
「前に、指名依頼の時に手に入れた虹色結晶を使って製作した杖なんだ」
「そんなこと今まで聞いてないんだけど」
ナナが俺を見る。
俺は少し苦笑した。
「あの時は知られたく無かったんだ。【ワープ】はかなり希少なスキルだから、むやみに話さない方がいいと思っていたんだ」
四人は俺の説明を聞き、ようやく納得したようだった。
「なるほどね……それなら話さなかった理由は分かるわ」
マイがそう答えた。
説明を終えた俺たちは、レイネス、レヴァリィ、ミューローズ、ルーレイが作った【ワープ】へ入る。
次の瞬間――
俺たちは南エリア・パラエムの街にある、ナナとマイのホームへ移動した。
ホームへ到着すると、ナナとマイはすぐに【氷の精霊の卵】がある場所へ向かう。
俺たち六人も、そのあとについて行った。
そして【水臨樹種】を植えた場所へ到着した時――
俺たちは足を止めた。
そこには――
見覚えのない二体の従魔がいた。
「……え?」
ナナとマイが二体を見つめる。
すると二体はナナとマイに気づき、嬉しそうに二人へ駆け寄ってきた。
そして、そのまま二人へ抱きつくように身体を寄せ、何かを訴えている。
「え? ちょっと待って……」
「もしかして……」
二人が戸惑っていると、エルマがナナとマイへ状況を伝えた。
二体は――
少し前に、二つの【氷の精霊の卵】から孵化したばかりだった。
「「「「「「「「ええええぇぇぇぇ〜!?」」」」」」」」
俺たち八人は揃って声を上げた。
「もう孵化してたの!?」
ナナが驚きながら二体を見る。
マイも同じように驚いていた。
二体はそんな二人の反応を気にする様子もなく、嬉しそうに身体を寄せている。
ナナとマイは二体を優しく撫でた。
そして――
ナナは自分の氷の精霊を【パレア】。
マイは【アスム】と名付けた。
「これからよろしくね。パレア」
「よろしくね。アスム」
二体は嬉しそうに頷いた。
こうしてナナとマイにも、新たな氷の精霊が加わることになった。
俺たちは二体を連れ、一度俺たちのホームへ戻ることにした。
するとミューローズとルーレイが前へ出た。
ミューローズとルーレイが【ワープ】を発動する。
俺たちは再びワープへ入り、俺たちのホームへ戻った。
そして全員で【氷臨樹】のところへ向かう。
そこにはシヴァーレナス様が待っていた。
ファルギマも変わらずシヴァーレナス様の傍にいて、嬉しそうにしている。
シヴァーレナス様は、ナナとマイの傍にいる二体を見ると静かに微笑んだ。
「やっぱり孵化したわね」
「シヴァーレナス様、分かっていたんですね」
ナナがそう言うと、シヴァーレナス様は微笑んだまま二体を見つめていた。
こうして――
俺たち八人の前に、八体の氷の精霊が揃った。
俺のティファラ。
リョウのハルレナ。
ナナのパレア。
マイのアスム。
ナギサのヴィージェル。
バレグのアミールス。
サンオンのミシュエル。
バウトのマリスレム。
「せっかくだし、八体のステータスを確認してみるか」
「そうっすね」
俺はまず、ティファラとハルレナのステータスを確認した。
――――――――――――――――――――――
従魔:【ティファラ】 契約者:トレン
従魔:【ハルレナ】 契約者:リョウ
――――――――――――――――――――――
種族:【シヴァ】
基礎Lv15
HP221 MP246
腕力176 体力158
俊敏193 器用160
知力200 精神186
スキル:
【氷斬連撃】【氷剣】
【氷霧陽炎】【氷斬空刃】
【氷抜刀一閃】【氷水大盾】
【氷水障壁】【氷水流水】
奥義:【ブリザードハリケーンストーム】
加護:【氷の大精霊シヴァーレナスの加護】
――――――――――――――――――――――
「なるほど……」
俺とリョウの二体は、攻撃だけではなく防御系のスキルも持っている。
続いてナナとマイのパレアとアスムを確認する。
――――――――――――――――――――――
従魔:【パレア】 契約者:ナナ
従魔:【アスム】 契約者:マイ
――――――――――――――――――――――
種族:【シヴァ】
基礎Lv15
HP190 MP264
腕力165 体力146
俊敏200 器用159
知力246 精神170
スキル:
【氷魔術・極】【水魔術・極】
【氷連撃弾】【氷大盾】
【氷の息吹】【氷の纏い】
【氷水障壁】【水大盾】
奥義:【ウォールダストブリザーストリーム】
加護:【氷の大精霊シヴァーレナスの加護】
――――――――――――――――――――――
「……こっちは魔術寄りだな」
「知力とMPも高いっすね」
ナナとマイの二体は、遠距離攻撃と支援に向いているように見える。
次に、ナギサとバレグのヴィージェルとアミールスを確認する。
――――――――――――――――――――――
従魔:【ヴィージェル】 契約者:ナギサ
従魔:【アミールス】 契約者:バレグ
――――――――――――――――――――――
種族:【シヴァ】
基礎Lv15
HP200 MP201
腕力183 体力186
俊敏220 器用176
知力155 精神154
スキル:
【水剣】【氷剣】
【氷水衝撃覇】【氷斬空刃】
【氷抜刀一閃】【水抜刀一閃】
【氷水牙突刃】【氷水虚空拳】
奥義【氷水修羅煉獄殺】
加護【氷の大精霊シヴァーレナスの加護】
――――――――――――――――――――――
「俊敏が高いな」
ナギサとバレグの二体は、速度を活かして一気に仕留める戦い方に向いているようだった。
そして最後に、サンオンとバウトのミシュエルとマリスレムを確認する。
――――――――――――――――――――――
従魔:【ミシュエル】 契約者:サンオン
従魔:【マリスレム】 契約者:バウト
――――――――――――――――――――――
種族:【シヴァ】
基礎Lv15
HP200 MP191
腕力185 体力175
俊敏186 器用150
知力179 精神146
スキル:
【氷斬連撃抜刀】【氷剣】
【氷霧朧月】【氷斬虚空剣】
【氷水抜刀一閃】【氷大盾】
【氷障壁】【氷流水壁】
奥義【氷斬瞬獄滅殺斬鉄剣】
加護:【氷の大精霊シヴァーレナスの加護】
――――――――――――――――――――――
「こっちは中距離を意識したバランス型みたいだな」
八体すべてのステータスを確認し終えた俺たちは、改めて画面を見比べた。
全員が同じ【シヴァ】。
基礎Lvも同じ15。
そして全員が【氷の大精霊シヴァーレナスの加護】を持っている。
しかも――
八体すべてがユニークモンスターだった。
だが、それにもかかわらず――
ステータスも違う。
スキルも違う。
奥義まで、それぞれ違っている。
「……同じ【シヴァ】なのに、全部違うぞ」
「しかも四組で特徴が分かれてるっすね」
俺とリョウは、もう一度八体を見る。
俺とリョウは、全体のバランスを考えた従魔編成。
ナナとマイは、遠距離と支援を中心とした従魔編成。
ナギサとバレグは、速度を活かし、一撃で仕留める従魔編成。
サンオンとバウトは、中距離を軸にしたバランス型の従魔編成。
そして今回加わった八体の【シヴァ】は――
まるで、俺たち四組それぞれの従魔編成に合わせたかのように、能力が分かれていた。
「……これ、偶然じゃないよな」
俺がそう呟くと、リョウも真剣な表情で頷いた。
「自分もそう思うっす」
俺たちは八体の【シヴァ】を見つめる。
同じ種族。
同じ基礎Lv。
同じ大精霊の加護。
それなのに、それぞれ異なる能力を持つ八体のユニークモンスター。
この違いが何を意味しているのか――
この時の俺たちには、まだ分からなかったのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、六体の氷の精霊との契約から始まり、ナナとマイの【氷の精霊の卵】も孵化し、八人それぞれに新たな仲間が加わるお話となりました。
同じ【シヴァ】でありながら、四組それぞれの従魔編成に合わせたように異なるステータスやスキル、奥義を持つ八体。
さらに、ヴィーシュとヴェイルガー、そしてグラディア山岳にも新たな繋がりが見え始めています。
八体の違いが何を意味しているのか、これから少しずつ明らかになっていきます。
皆様からの応援やブックマーク、評価が執筆の励みになっています。
今後とも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




