EPISODE.306話〘成長した氷臨樹――待ち受ける予想外の展開〙
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、束の間の休息を過ごしていた八人が、成長した氷臨樹を見に向かうところから始まります。
しかし、そこで待っていたのは思いもよらない真実でした。
それでは、EPISODE.306話をお楽しみください。
【四精霊の大樹】の下で、俺たち八人と従魔たちはゆっくりと過ごしていた。
しばらくすると、六人からもう一つの氷臨樹も見てみたいと言われた。
「それじゃ、見に行くか」
俺とリョウは六人を連れて、氷臨樹を植えた場所へ向かった。
そして――
そこへ到着した瞬間、俺たち八人は目の前の光景に驚きを隠せなかった。
「……え?」
「トレン、こんなに大きかったっすか?」
「いや……俺も知らない」
氷臨樹は、俺たちが知らない間に約五メートルほどまで成長していた。
水属肥料と火属肥料を撒いただけだったはずなのに……。
その成長の仕方は、以前【四精霊の樹木】を植えた時とよく似ている。
「凄いわね……」
「これが氷臨樹なの?」
六人も成長した氷臨樹を見上げながら驚いていた。
俺とリョウも、ここまで成長しているなんて思っていなかった。
すると――
「ん?」
氷臨樹の近くに、見慣れない姿があることに気づいた。
その人物の傍にはファルギマがいて、楽しそうに戯れている。
「ファルギマ?」
バレグも不思議そうにその光景を見ていた。
俺は声をかけようと一歩前へ出る。
だが――
向こうの方が先に俺たちの気配に気づいた。
こちらを振り返り、穏やかな表情を浮かべる。
「やっと会えましたね。トレン、リョウ。初めまして。私は氷の大精霊シヴァーレナス」
「…………」
俺たち八人は、その場で固まった。
そして――
「「「「「「「「えええぇぇぇ〜!? 氷の大精霊シヴァーレナス様!?」」」」」」」」
全員の声が重なった。
まさか俺たちのホームで、氷の大精霊と出会うなんて思ってもいなかった。
しかもファルギマは、シヴァーレナス様にすっかり懐いている。
俺たちが驚いていると、シヴァーレナス様は静かに口を開いた。
「驚かせてしまいましたね。でも今日は、貴方がたにお願いしたいことがあって来たのよ」
「お願い……ですか?」
俺が聞き返す。
シヴァーレナス様は頷いた。
「貴方がたが討伐しようとしている、始まりの街のエリアボスについては私も知っています」
俺たちは黙って話を聞く。
「本来あの魔物がいるドラレード山岳から、私たち氷の精霊がいなくなっているの」
「えっ……」
俺とリョウは思わず顔を見合わせた。
ドラレード山岳。
本来なら【零氷炎轟翼鳥デドロアジャガーバード】がいるはずの場所だ。
だが、そのエリアボスは今、始まりの街の東の森最奥にある湖にいる。
そして今度は、ドラレード山岳にいるはずの氷の精霊たちが姿を消している。
「だから貴方がたにお願いしたいの。ドラレード山岳へ向かい、氷の精霊たちの消息を調べてもらえないかしら?」
その言葉を聞いた瞬間――
俺とリョウは同じことを考えていた。
――こっちもか。
西エリアでは、水の精霊たちの消息に関わる依頼があった。
そして今回は、氷の精霊たち。
まさか、この二つも繋がっているのか?
俺とリョウは、運営側が仕掛けた特殊イベントチェーンの一つなのではないかと感じていた。
だけど――
答えは決まっている。
「わかりました。俺は受けます」
「自分も受けるっす」
俺とリョウが迷わず答えると――
「ちょっと待ちなさいよ」
ナナの声が聞こえた。
振り返ると、六人全員が俺たちを見ている。
「トレン、リョウだけの問題では無いわよ」
「そうよ。みんなと従魔たちで協力するんだからね」
マイも当然のように続ける。
「私たちも協力するわ。たとえ厳しいとしても、ついて行くからね」
ナギサも迷いなくそう言った。
するとバレグが、シヴァーレナス様の傍にいるファルギマを見る。
ファルギマは今も嬉しそうにシヴァーレナス様へ懐いていた。
「もちろん私も同じです。ファルギマがシヴァーレナス様に懐いているのを見て、無関係だとは思えません。ファルギマとミュラスと共に、トレン、リョウに協力しますよ」
「これは八人全員の試練への序章に感じます。私も協力するつもりですよ」
サンオンも静かに答えた。
「そうですね。今回の特殊イベントは複雑な展開に感じます。でも、全員でやり遂げるような気がするんです。私も協力しますよ。トレン、リョウ」
バウトも迷わず参加を決めた。
「みんな……」
どうやら――
俺とリョウだけで受けると考えていた方が間違っていたみたいだ。
するとシヴァーレナス様は、そんな俺たち八人を見ながら微笑んだ。
そしてナナとマイへ視線を向ける。
「そうそう、ナナ、マイ。貴方たちが見つけた氷の精霊の卵だけど、もうすぐ孵化するはずよ」
「「え?」」
「本当ですか?」
二人が驚いたようにシヴァーレナス様を見る。
「ええ。二体をよろしくね」
「「はい」」
ナナとマイが頷いた。
これで話も終わり――
そう思っていた。
だが。
シヴァーレナス様が突然、指を鳴らした。
パチン――。
その瞬間、俺たちの目の前に淡い光が現れる。
「……え?」
光が消えると――
そこには六体の氷の精霊が立っていた。
しかも六体は、俺、リョウ、ナギサ、バレグ、サンオン、バウトの前へそれぞれ移動する。
まさか……嫌な予感がする……。
そんな俺たちを見ながら、シヴァーレナス様は笑顔で口を開いた。
「貴方たちの覚悟に共鳴して、この子たちから純粋に契約したいと言って来たのよ」
「「「「「「…………コクコク(頷く)」」」」」」
「この子たちと契約してくれないかしら?」
一瞬の沈黙。
そして――
「「え?……ええええぇぇぇぇ〜!! なんでその流れになるんだよ!!」」
「おかしいだろうが!! どうしていつもそうなるんだよぉぉぉ!!」
「運営ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
俺たちの叫び声がホーム中に響き渡った。
氷の大精霊シヴァーレナス様との予想外の出会い。
ドラレード山岳から消えた氷の精霊たち。
そして――
まさかの六体の氷の精霊からの契約希望。
どうして俺たちは、いつもこうなるんだよ……。
こうして俺たちは、またしても予想すらしていなかった特殊イベントと、突然の氷の精霊との契約に巻き込まれるのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、成長した氷臨樹を見に向かった八人が、思いもよらない存在と出会い、新たな特殊イベントへ繋がっていくお話となりました。
ドラレード山岳から消えた氷の精霊たち。
そして最後には、六人の前へ現れた氷の精霊たちから突然の契約まで持ちかけられることになりました。
休息から一転し、またしても予想外の展開へ巻き込まれていく八人。
ここからどのような流れへ繋がっていくのか、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
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今後とも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




