EPISODE.304話〘死神鳥の正体――八人それぞれの想いと覚悟〙
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、ドムバスギルド長から明かされるエリアボスの正体と、その討伐依頼を前にした八人それぞれの想いを描くお話です。
それぞれがこれまでの試練ややり残したことを胸に、ひとつの決断を下します。
それでは、EPISODE.304話をお楽しみください。
俺たち八人は、ドムバスギルド長から詳しい状況を聞くため、ギルド長室にいた。
ドムバスギルド長は俺たちを見渡し、ゆっくりと口を開く。
「ナギサ、バレグから報告を聞いたあと、こちらでも調査を行った。その結果――ナギサたちが確認した個体は、エリアボスで間違いなかった」
その言葉に、俺たちは表情を引き締める。
ドムバスギルド長は、そのまま話を続けた。
「本来なら、始まりの街から北東に位置するグラディア山岳。そのさらに北にあるドラレード山岳に生息しているはずの個体だ」
そこで一度言葉を区切る。
「だが今回、その個体が東の森の最奥にある湖にいることが確認された」
「本来の生息場所から、かなり離れているってことか……」
俺がそう呟くと、ドムバスギルド長は静かに頷いた。
そして――
「今回確認されたエリアボスの名は――【零氷炎轟翼鳥デドロアジャガーバード】」
その名前を聞いた瞬間、俺たち八人の空気が一変した。
「……零氷炎轟翼鳥」
リョウが小さく呟く。
ドムバスギルド長は、そのまま言葉を続けた。
「そして、我々はあの魔物を別名『死神鳥』と呼んでいる」
「死神鳥……」
その呼び名を聞いた瞬間、俺たち八人は思わず息を呑んだ。
ドムバスギルド長は、さらに険しい表情を浮かべながら話を続ける。
「すでに緊急討伐依頼を出し、討伐へ向かわせている。だが、あの魔物はかなり手強い」
俺たちは黙ったまま話を聞く。
「現在はギルド四天王の【月乃轟璃雷】と【光冥乃氷輪】に依頼し、東の森の最奥にある湖で足止めをしてもらっている状況だ」
「ギルド四天王が二組も……」
ナナが驚いたように呟いた。
ドムバスギルド長は静かに頷く。
「だが、その二組でもかなり苦戦していると報告が入っている」
その言葉を聞き、俺たちは改めて【零氷炎轟翼鳥デドロアジャガーバード】の強さを感じていた。
ギルド四天王。
その中の【月乃轟璃雷】と【光冥乃氷輪】が二組で戦っているにもかかわらず、苦戦している。
それだけで、今回のエリアボスがどれほど危険なのか十分に伝わってくる。
俺はリョウを見る。
リョウも同じことを感じているのか、真剣な表情をしていた。
――また、新たな試練が始まろうとしている。
俺とリョウは、そんな予感を感じていた。
するとドムバスギルド長が、俺たち八人を見渡しながら口を開いた。
「ただし、お前たちに強制するつもりはない。無理に参加する必要もない」
俺たちは黙ったまま、その言葉を聞く。
「すでに王都からも支援を受けている。こちらだけで対応するつもりではない」
その言葉を聞いた直後――
俺たち八人の目の前に、同時に画面が現れた。
――――――――――――――――――――――
【緊急討伐依頼クエスト】
内容:
エリアボス【零氷炎轟翼鳥デドロアジャガーバード】の討伐
報酬:????
――――――――――――――――――――――
「…………」
俺たちは揃って画面を見つめたまま固まった。
俺は表示されたクエストを見ながら、ある戦いを思い出していた。
【光魔竜翼冷翠黎轟ジンライベルエアーバーン】
西エリアで戦った、あのエリアボスだ。
あの戦いで俺は、自分の弱さを思い知らされた。
自分の力を過信していた。
そして僅かではあったが、迷いもあった。
それでも――
従魔たちを護る。
その想いだけは、最後までブレなかった。
だからこそ、あの戦いを乗り越えることができた。
だけど今回は、それ以上の何かが待っている。
そんな気がしてならなかった。
そして俺は、火の大精霊イフリードライム様に言われた言葉を思い出す。
『今のトレンなら、レベルだけを見れば申し分ないよ。』
『だけど――それだけでは足りないんだ。』
『だけど、今はあえて答えを教えないでおくよ。自分自身で見つける事に意味があるからね。』
あの言葉の答えを、俺はまだ見つけていない。
それに――
始まりの街にも、南エリアにも、まだやり残したことがある。
あの時、勝てなかったヤツとの再戦も残っている。
だったら――
今の自分がまだ弱いとしても、俺は挑み続ける。
従魔たちと一緒に。
俺は覚悟を決め、ドムバスギルド長を見る。
「強制では無いなら尚更だ。俺は受けるよ。やり残しがあるからね」
俺の言葉を聞いたリョウが、何かに気づいたような表情を見せた。
――トレンの言う、やり残し。
それは、ヤツしかないっすね。
自分も他のプレイヤーより弱い。
でも――
従魔たちは絶対に護る。
その想いだけは貫くっす。
リョウは心の中で自分自身の弱さを受け止め、俺の言葉の意味を理解したようだった。
そして――
「自分も受けるっす。トレンと同じやり残しは、このエリアボスを倒してからっすね。トレン」
「ああ」
俺とリョウの言葉を聞いていたナナとマイも、何かに気づき始めていた。
「ナナ、トレンたちのやり残しって、もしかして……」
「マイ、私も同じことを考えていたわ」
二人は顔を見合わせる。
「私たちが試練への険しい道のりで【炎國乃黎闘翠】と一緒に倒した魔物。そして、あの時は未熟で姿を見ることすらできずに逃げた魔物しかないよ」
「【黎玄武雷獣ライガボルドキャッツ】ね。私たちにとっても、険しい試練の先にいる相手だわ」
ナナとマイも、俺とリョウが言った「やり残し」の意味を理解していた。
二人もまた、光の大精霊エンジェルクライズ様から本当の試練を受けている。
以前、南エリア東のミゴ高原峠へ向かい、【ロックシーレガロゴーレム】へ挑んだ二人は、その戦いに勝利した。
だが、それで二人の試練が終わったわけではない。
するとナナが、俺とリョウを見ながら口を開いた。
「何勝手に二人だけで決めてるのよ。トレン、リョウ。私も混ぜなさいよ」
「そうよ。強制では無いのに、自分たちだけ受けて見せられないことでもあるのかしら? 私もナナも受けるわよ」
マイも迷うことなく続いた。
そして、それはナギサとバレグ、サンオンとバウトも同じだった。
「私もバレグと受けますよ。険しい試練に挑んでいるのですから、本当の試練はまだ道の途中ですから」
ナギサがそう言うと、バレグも頷いた。
「そうですね。私たちがエリアボスを発生させたので、受けないという選択はしません。やらかし組の一員ですからね」
その言葉に、俺は思わず苦笑する。
続いてバウトが口を開いた。
「私も戦いはある程度にして、生産職に没頭していましたから。それに、闇の大精霊アゼルオメガ様からアドバイスも受けました。みんなと一緒に戦うと決めましたから、私も受けますよ」
「私もバウトと同じ意見ですよ。闇の大精霊アゼルオメガ様からアドバイスを受けて、今まで生産職だった自分自身のことも考えました。戦うのは最低限にしてきましたからね。私ももちろん受けますよ」
サンオンも迷いなく答えた。
こうして――
俺たち八人全員が【緊急討伐依頼クエスト】を受けることを決めた。
「そうか、わかった。君達にもお願いするよ」
ドムバスギルド長の言葉を聞いた俺たちは、ギルド長室を退出した。
そして俺は、六人を自分のホームへ招待することにした。
実はギルド長室を出たあと、俺は運営側へある問い合わせをしていた。
ナナ、マイ、ナギサ、バレグ、サンオン、バウト。
この六人に【四精霊の樹木】を見せても問題ないか確認したところ――運営側から了承を得ることができた。
俺はその回答画面をリョウにも見せる。
「絶対に驚くっすね」
「ああ、六人の従魔たちも喜びそうだからな」
こうして俺は、六人をホームへ招待した。
ナナ、マイ、ナギサ、バレグは二回目。
サンオンとバウトは、今回が初めての訪問となる。
だが――
ホームへ足を踏み入れた六人は、目の前に広がる光景に衝撃を受けることになるのだった――。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、エリアボス【零氷炎轟翼鳥デドロアジャガーバード】の正体が明らかになり、八人それぞれが自分の想いや過去の試練と向き合いながら、緊急討伐依頼を受ける決意を固めました。
トレンやリョウだけではなく、ナナとマイ、ナギサとバレグ、サンオンとバウトにも、それぞれ戦う理由があります。
そして討伐へ向かう前に、六人をトレンのホームへ招待することになりました。
そこで六人を待っている光景とは。
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今後とも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




