EPISODE.301話〘予想外の形で再会する八人――偶然が繋いだ仲間たち〙
今回も『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をお読みいただき、ありがとうございます。
今回は現実側から始まり、前回決まったエリアボス討伐へ向けて、思わぬところから新たな繋がりが見えてきます。
仕事として始まった一日の中で、どのような再会が待っているのか、ぜひ最後まで楽しんでいただければと思います。
それでは、EPISODE.301話をお楽しみください。
翌日――。
俺はいつも通り会社へ向かい、仕事を始めようとしていた。
その時、専務の秘書から連絡が入った。
「東条本部長、専務からです。西石部長と一緒に専務室へ来て下さい。」
「わかりました。直ぐに向かいます。」
俺は電話を切ると、西石部長のところへ向かった。
「西石部長、俺と一緒に専務室に行くぞ。専務からのお呼びだ。」
「わかりました、東条本部長。」
俺と西石部長は仕事の手を止め、専務室へ向かった。
専務室の前へ到着すると、秘書が俺たちに気づく。
「少々お待ち下さい。」
秘書は専務へ、俺たちが来た事を伝える。
しばらくすると、専務室へ入るように言われた。
「失礼します。」
俺と西石部長が専務室へ入る。
すると――。
そこには専務だけではなく、社長の姿もあった。
「社長!? いらっしゃっていたのですか?」
「すまないね。仕事開始早々に呼んでしまって。」
「問題ありません。それで、お呼びした理由は何でしょうか?」
社長は俺と西石部長を見ると、昨日話していた井澤グループと七瀬グループの大型合同プロジェクトについて話し始めた。
「昨日の合同プロジェクトの件なんだが、今日から一ヶ月間、二人には井澤社長の会社へ出張してもらいたい。」
「今日から一ヶ月間ですか?」
「そうだ。今回のプロジェクトは規模が大きいからね。二人には向こうで参加してもらう事になった。」
すると専務も口を開く。
「二人が担当しているこちらの仕事については心配しなくていい。他の部署にも協力してもらって対応する。」
「承知しました。」
「私も問題ありません。」
「出張は今日の午後からだ。午前中のうちに、必要な引き継ぎを済ませておいてくれ。」
「「承知しました。」」
俺と西石部長は専務室を出ると、午前中の仕事と引き継ぎを進めた。
そして昼休憩を済ませたあと、俺たちは井澤社長の会社へ向かった。
会社へ到着すると、俺たちは受付へ向かう。
「東条と申します。西石と二人で、本日から合同プロジェクトに参加するため伺いました。」
「確認致しますので、少々お待ち下さい。」
受付嬢が確認を取る。
しばらくすると、一人の男性がこちらへ歩いてきた。
馬場蓮仁本部長だった。
「東条本部長、西石部長。お待ちしておりました。」
「本日からよろしくお願い致します。」
「こちらこそよろしくお願い致します。それではプロジェクト会議室へご案内します。」
俺たちは馬場本部長のあとについて行く。
そして案内された会議室へ入った瞬間、俺はその光景に驚いた。
会議室には多くの参加メンバーが集まっていたからだ。
(本当に大がかりなプロジェクトなんだな……。)
昨日話を聞いていたとはいえ、ここまで多くの人が参加しているとは思わなかった。
正直、俺と西石部長がこの中に加わって大丈夫なのかと思ってしまう。
そんな俺たちへ、馬場本部長が担当する仕事について説明してくれた。
「東条本部長と西石部長には、完成したプロジェクトデザインの最終チェックとデザイン案件を担当していただきます。」
「最終チェックとデザイン案件ですか?」
「はい。これまでのお二人の仕事も拝見しておりますので、ぜひお願いしたいと思っています。」
「承知しました。」
その後、今回の大型合同プロジェクトに参加するメンバーの紹介が行われた。
そして紹介が終わると、それぞれ担当する仕事ごとに編成が振り分けられていく。
俺と西石部長が振り分けられたメンバーは――。
井澤渚社長。
馬場蓮仁本部長。
七瀬麗花社長。
井野麻衣。
そして俺と西石部長だった。
(このメンバーなのか……?)
少し疑問に思ったが、俺は何も言わなかった。
「それでは、こちらのメンバーは別室へ移動しましょう。」
井澤社長の言葉に従い、俺たちは会議室を出る。
そして少し離れた別室へ入った。
全員が中へ入ると、井澤社長が扉の鍵を閉める。
ガチャッ――。
その直後、俺と西石部長は別室の光景を見て唖然とした。
テーブルの上には、デザートやサンドイッチ。
さらに様々な飲み物まで用意されている。
どう見ても仕事をするための場所ではなかった。
完全に女子会の休憩場所みたいな光景だった。
「ちょっと待てよ! 何なんだよ、この光景は!? 明らかに休憩するための場所じゃないかよ!」
俺が思わず声を上げると、井澤社長が馬場本部長を見る。
「馬場本部長、言わなかったの? 私たちは最終チェックだけって説明しなかったの?」
「申し訳ありません。言ったつもりでしたが、忘れておりました。まあ、こんな感じですのでリフレッシュして下さい。東条本部長、西石部長。」
「「リフレッシュしすぎるんだよ!! なんでそうなるんだよぉぉぉ!!」」
俺と西石部長の声が重なった。
すると七瀬社長が、何事もないように口を開く。
「ちなみにこの部屋、どれだけ大声を出しても周りには聞こえないそうよ。」
「完全防音になっているそうです。」
井野さんも冷静に付け加える。
「「なんでやねん!! 二人共、何しれっと言ってるんだよ!! 冷静すぎるんだよ!!」」
「それが普通です。」
井野さんが平然と答えた。
「んなわけあるかい!! 普通じゃないですよ!!」
西石部長が即座にツッコミを入れる。
「なんでいつもそうなるんだよぉぉぉ!!」
俺の叫び声が、完全防音の別室に響き渡った。
しばらくして、俺は改めて井澤社長を見る。
「それで、この部屋で何するんだよ。」
「何もしないよ。リフレッシュしましょう。飲み物も好きなのをどうぞ。」
「無いのか〜い!! 何のために一ヶ月こっちに来たんですか!?」
「まあまあ、今はゆっくりしましょう。西石部長、東条本部長。」
「女子会トークでもしながら、のんびり話しましょう。」
七瀬社長と井野さんが平然と話す。
「なんでそうなるんだよぉぉぉ!!」
そう言いながらも、俺たちは用意されていた飲み物やサンドイッチを手に取り、リフレッシュさせられるハメになった。
それから六人で雑談を続けていた。
しばらくすると、井澤社長が本題に入る。
「それでね。今回の大型プロジェクトだけど、私たちが直接確認するのは最終日だけなの。」
「……え?」
俺と西石部長は井澤社長を見る。
すると馬場本部長が補足する。
「表向きは大型合同プロジェクトへの参加です。ただ、本当の目的は別にあります。」
「別の目的?」
「はい。【始まりの街】のエリアボス討伐に向けて、協力をお願いしたメンバーについての情報収集です。」
俺と西石部長は顔を見合わせた。
(やっぱりそっちもあったのか……。)
俺たちがそう思っていると、馬場本部長が何気なく話を続ける。
「そういえば、私の同級生もこのゲームをやっているんですが、私より凄い従魔を二体所持しているんですよ。」
「馬場本部長より凄い従魔?」
井野さんが興味を示す。
「どんな従魔なの?」
「【闇の精霊】と【火の精霊】です。」
「「え!?」」
井澤社長、七瀬社長、井野さんが驚きの声を上げる。
だが俺と西石部長は、別の意味でその言葉が引っ掛かった。
【闇の精霊】と【火の精霊】。
しかも二体の従魔を所持しているプレイヤー。
(まさかな……。)
俺と西石部長は嫌な予感を感じながら顔を見合わせる。
「馬場本部長、その同級生のプレイヤー名は何ですか?」
西石部長が聞く。
「同級生の名前は武藤十夢です。プレイヤー名は……確かバウトですね。」
「「バウト!?」」
俺と西石部長は同時に声を上げた。
四人が驚いた表情で俺たちを見る。
「知っているの?」
「知っているも何も、俺たちが今回のエリアボス討伐に協力をお願いする予定のバウトに間違いない。」
「ええっ!?」
「それに【闇の精霊】と【火の精霊】についても、俺たちが一緒に行動していた時に契約した従魔だ。」
「「えええぇぇぇぇ〜!!」」
今度は四人が一斉に驚いた。
西石部長は、さらに馬場本部長へ聞く。
「ちなみに、その武藤十夢さんはどんな仕事をしているんですか?」
「確か三条グループ系列の会社に勤めていますよ。」
「三条グループ……。」
馬場本部長は少し考えたあと、スマートフォンを取り出す。
「本人に確認してみます。」
馬場本部長は、その場で武藤十夢へ電話を掛けた。
しばらく話をしたあと、電話を切る。
「確認出来ました。武藤のプレイヤー名は、やはりバウトで間違いありません。」
「やっぱりそうだったか。」
「それと、武藤から聞いたんですが、三条音峰社長もこのゲームをプレイしているそうです。」
「三条社長も?」
七瀬社長が驚く。
「はい。詳しいプレイヤー名までは聞いていませんが、プレイしているのは間違いないようです。」
馬場本部長はスマートフォンを確認する。
「それと、武藤にはリモートでも話せないかお願いしておきました。」
しばらくすると、リモートが繋がった。
画面に一人の男性が映し出される。
「お待たせしました、馬場。」
その顔を見た瞬間、西石部長が目を見開いた。
「……え? 武藤さん!?」
「え? 西石部長?」
今度は画面の向こうにいる武藤さんが驚いた。
「西石部長、知り合いなのか?」
俺が聞く。
「知り合いも何も、以前出張で三条グループの本社に行った時、契約案件を担当してもらった方ですよ!」
「マジかよ……。」
まさかゲーム内で知り合ったバウトが、西石部長と現実でも仕事で繋がっていたとは思わなかった。
その時だった。
西石部長が画面の端を見て、さらに驚いた表情を浮かべる。
「……ちょっと待って下さい。」
「どうした?」
「武藤さんの隣にいる人……三条社長!?」
俺たちも画面を見る。
武藤さんの隣には、三条音峰社長が座っていた。
「ああ、社長も一緒ですよ。」
武藤さんが何事もないように答える。
俺は画面に映る三条音峰社長を見ながら、名前に引っ掛かった。
三条音峰――。
三条の『三』。
そして音峰の『音』。
(……三と音……。)
俺は思わず口に出す。
「……ちょっと待てよ。三と音……サンオン?」
その瞬間だった。
画面の向こうにいた三条社長が驚いた表情を浮かべる。
「まさか……その声はトレン?」
その言葉に、隣にいる武藤さんも目を見開く。
「え? トレン?」
俺はその反応を見て確信した。
「やっぱりサンオンだったか。」
一瞬、部屋の中が静まり返る。
そして――。
「「え?………ええええぇぇぇぇ〜!! こんなあっさりメンバーが揃うなんてありえないよ!!」」
西石部長、七瀬社長、井野さん、馬場本部長、井澤社長の声が一斉に重なった。
しばらく全員が驚いていたが、俺は気持ちを切り替えて画面の向こうにいる二人へ話す。
「それじゃ、せっかくだし二人にも今回の事を説明するよ。」
「今回の事?」
武藤さんが聞く。
「始まりの街でエリアボスが確認されたんだ。ナギサとバレグが調査中に遭遇して、その後、始まりの街の冒険者ギルド長からエリアボスだと聞いた。」
三条社長と武藤さんの表情が真剣になる。
俺は続けて、ナギサとバレグからエリアボス討伐への協力をお願いされた事。
そして俺たちも参加する事になったと説明した。
「それで俺たちは、バウトとサンオンにも協力してもらいたいと思ってたんだ。」
「なるほど。」
三条社長は少し考えたあと、頷く。
「私は参加しますよ。」
武藤さんも続けて頷いた。
「私も参加します。少しでも力になれるのであれば協力しますよ。」
「助かるよ。」
こうして思わぬ形で現実でも繋がった俺たちは、八人で始まりの街のエリアボス討伐へ挑む事になったのであった。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は現実側で、東条本部長と西石部長が大型合同プロジェクトへの一ヶ月間の出張を命じられ、井澤社長の会社へ向かうところから始まりました。
大がかりなプロジェクトに参加すると思いきや、別室では思わぬ形でリフレッシュする流れとなり、六人らしい賑やかなやり取りが続きました。
そして本題では、馬場本部長の同級生がバウトだと判明し、さらに三条音峰社長がサンオンだった事も明らかになりました。
ゲーム内で知り合った仲間たちが、現実側でも思わぬ形で繋がっていく回となりました。
最後にはバウトとサンオンもエリアボス討伐への参加を了承し、八人で始まりの街のエリアボスへ挑む事になりました。
最後になりますが、ブックマークや評価、ご感想をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




