EPISODE.297話〘二つ目の火属肥料――静かなる始動〙
今回も『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、火の精霊の里での時間を終えたトレンたちが、それぞれ次へ向けて動き出していきます。
その先でどのような流れへと繋がっていくのか、ぜひ最後まで楽しんでいただければと思います。
それでは、EPISODE.297話をお楽しみください。
翌日――。
俺たちは街へ戻る準備を済ませ、火の精霊の里を出る前にイフリードライム様へ挨拶をするため、大精霊の館へ向かった。
大精霊の館へ到着すると、俺たちはイフリードライム様へ帰る事を伝えた。
「イフリードライム様。いろいろとお世話になりました。俺たちはこれから街へ戻ります。」
「今回は本当にありがとうございました。」
リョウに続いて、バウトとサンオンもイフリードライム様へ頭を下げる。
「私たちも大変お世話になりました。」
「ありがとうございました。」
するとイフリードライム様は俺たちを見ながら話した。
「そうか、またいつでも里に来なさい。」
そしてバウトとサンオンへ視線を向けた。
「バウト、サンオン。君達に渡すものがある。」
「私たちにですか?」
イフリードライム様は二人へ、それぞれ一枚ずつ通行証を渡した。
バウトとサンオンは受け取ったものを確認する。
「これは……」
「里へと入るための専用の通行証だよ。火の精霊の里に自由に入る事が出来る。」
イフリードライム様の説明を聞いた二人は、通行証を大切そうに持ちながら頭を下げた。
「「ありがとうございます。大切にします。」」
こうしてイフリードライム様への挨拶を終えた俺たちは、火の精霊の里をあとにした。
来た道を戻りながらデヴァランザ山岳を進み、山岳の入り口を抜ける。
その後、俺たちはクラムヴァの街へ到着すると、その日は街で一泊した。
そして翌日――。
クラムヴァの街を出発した俺たちは、再び四人で移動を開始した。
しばらく進み、スヴァログの街の手前まで到着すると、そこからワープを使う。
そして東エリアにあるバグヴァラの街の手前まで移動し、そのまま四人で街へ向かって歩いていった。
その途中、俺は今回一緒に行動してくれたバウトとサンオンへ改めてお礼を伝えた。
「バウト、サンオン、協力本当に助かったよ。ありがとう。」
「いえいえ、お蔭様で火の精霊の里へ行けて良かったよ。こちらこそありがとうトレン、リョウ。」
サンオンがそう答えると、バウトも今回の出来事を思い返しながら話した。
「そうですね。予想外な展開に驚きましたけどね。アナウンスもあり、多少は混乱しましたけどね。」
「確かに、自分たちも同じっすよ。アナウンスが一気に流れる感じ混乱するっすよ。アレは。」
確かに今回も、いろんな出来事が一気に起こったからな。
ファヴァンとヴァルーラの進化だけではなく、バウトとサンオンが予想外の素材を発見し、さらに二人は火の精霊とも契約する事になった。
最初に火の精霊の里へ向かった時には、ここまでいろんな事が起こるなんて思ってもいなかった。
俺たちはそんな話をしながら歩き、バグヴァラの街へと戻って来た。
そして街へ入ったところで、俺はバウトとサンオンへ声を掛けた。
「それじゃ俺たちはここで別れてホームに戻るよ。バウト、サンオン。」
「わかりました。もし協力があればホームに来て下さい。協力しますので。」
「私も何か協力出来るなら協力しますので。」
「助かるっす。」
「ありがとう。その時はまたお願いするよ。バウト、サンオン。」
俺たちは互いに挨拶を交わすと、ここでバウトとサンオンと別れた。
そして俺とリョウは、そのままホームへ戻った。
ホームへ戻って来た俺たちは、【鍛冶錬金工房】の裏へ向かう。
そこには、以前植えた【氷臨樹の苗】がある。
「それじゃリョウ、さっそく火属肥料を撒こうか。」
「了解っす。」
俺たちはアイテムボックスから、火の精霊の里で採取してきた【火属肥料】を5袋取り出した。
今回、火の精霊の里へ向かった目的の一つだった素材だ。
俺とリョウは【氷臨樹の苗】の周囲へ、5袋の【火属肥料】を少しずつ撒いていった。
そして最後の一袋を撒き終える。
「これで5袋全部撒いたな。水属肥料、火属肥料……これで二つ目だな。」
「そうっすね。」
俺たちは【氷臨樹の苗】を確認すると、今回の作業を終える事にした。
その後、俺とリョウはログアウトしたのであった。
―――――――――運営Side―――――――――
運営本部では、今回も各プレイヤーたちの行動が大型モニターに映し出されていた。
すると一人の社員が、主任へ報告した。
「主任、トレンとリョウがバウト、サンオンに協力を頼み、火の精霊の里へ向かいました。」
「そこまでは予想通りだな。各属性肥料を集めるなら、二人にも協力を頼む可能性はあると思っていたよ。」
主任はモニターを確認しながら話した。
トレンとリョウが育てている【氷臨樹の苗】は、特殊チェーンイベントへと繋がっている。
しかも、その難易度はかなり高く設定されていた。
各属性肥料を集めていく中で、他のプレイヤーへ協力を頼む事も、運営側ではある程度予想していた。
だが――。
その時、一人の社員が慌てた様子で主任の元へやって来た。
「主任、大変です! バウトが【火臨樹の苗】、サンオンが【火霊樹の種】を採取しました!」
「!? ちょっと待て! あの二つを見つけたのか?」
主任はすぐにキーボードを操作した。
カタカタカタカタ……。
しばらく採取ログを確認すると、主任は驚いた表情を浮かべる。
「……マジか。本当に見つけているな。」
さらに詳しくログを確認していく。
「かなり見つけにくいようにしていたんだけどな。【火属肥料】の採取場所からも、かなり離れた場所に設定していたはずだ。」
社員もバウトとサンオンのデータを確認した。
「二人とも【鑑定】のスキルレベルは、まだ低いですよね?」
「ああ。【鑑定】を習得してから、まだそこまで時間が経っていないからな。だから自分たちでは分からず、トレンとリョウに【鑑定】を頼んだんだろう。」
主任はモニターに映る四人の様子を見ながら、少し考え込んだ。
「まさか【火属肥料】を採取しに行った先で、あの二つまで見つけるとはな……。これは予想外だ。」
すると社員が主任へ尋ねた。
「主任、どうしますか? 【火臨樹の苗】と【火霊樹の種】の特殊イベントを発生させますか?」
主任は少し考えたあと、答えた。
「仕方ない。正規の条件で二人が見つけたんだ。バウト、サンオンの特殊イベントを発生させる。」
そして続けて指示を出した。
「それと、二人に火の精霊との契約も発生させる。」
「分かりました。処理します。」
社員はすぐに作業を始めた。
主任は再びモニターへ視線を向けながら話した。
「本当にトレンたちと一緒に行動すると、予想外な展開が起こるな。トレンとリョウも同じようにいろんな出来事に遭遇しているのに、楽しそうにしているしな。」
社員も笑いながら答えた。
「本当、そうですよね。主任もその仲間みたいな感じですよ。」
「……かもな。」
主任はそう答えると、別のモニターへ視線を向けた。
そこには北エリアへ挑戦しているプレイヤーたちの状況が映し出されていた。
「しかし、北エリアは苦戦しているプレイヤーが続出しているな。」
主任はプレイヤーたちのデータを確認していく。
「生産職プレイヤーの中で、移動手段として使える拠点を持っているのはサンオンだけだからな。あの超特殊チェーンイベントをクリアしているしな。」
そう――。
サンオンは以前、超特殊チェーンイベントをクリアし、大商人リオポゼの技術と意思を受け継いだ継承者となっていた。
そして現在、北エリアへ到達しているプレイヤーも、まだ数人しかいない。
主任は東西南北、それぞれのエリアの進行状況を確認した。
「まあ、東西南北それぞれのエリアで、ある条件を一つはクリアしたプレイヤーもほとんど揃ってきたな。」
そして社員たちへ視線を向ける。
「そろそろ今の第1エリアから、次の第2エリアを解放する準備を始めるか。」
「「了解」」
主任の指示を受け、社員たちは一斉に作業を開始した。
こうして運営側でも、プレイヤーたちの進行に合わせ、次の第2エリアを解放するための準備が始まるのであった。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、火の精霊の里をあとにしたトレンたちがバグヴァラの街へ戻り、バウトとサンオンに別れを告げました。
その後、トレンとリョウはホームへ戻り、【氷臨樹の苗】へ【火属肥料】5袋を撒き、水属肥料に続く二つ目の属性肥料を終える事が出来ました。
そして後半の運営Sideでは、バウトとサンオンが【火臨樹の苗】と【火霊樹の種】を発見した事が、運営側にとっても予想外の出来事だった事が明らかになりました。
さらに、各エリアで条件を満たすプレイヤーたちが増え始めた事で、運営側でも次の第2エリアを解放するための準備が静かに動き始めました。
次回は、トレンたちが新たな一日を迎えていきます。
最後になりますが、ブックマークや評価、ご感想をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




