EPISODE.286話〘それぞれの日常へ――動き出す大手企業との最終契約〙
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、【水の精霊の里】での出来事を終えたトレンたちが、パラエムの街へ戻るところから始まります。
ナナとマイは依頼を終え、それぞれが再びいつもの日常へ戻っていきます。
そして現実側では、以前から進めていた三条グループとの契約が最終段階へ入り、西石と若い社員に新たな動きが訪れます。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、EPISODE.286話をお楽しみください。
洞窟での採掘を終え、【水の精霊の里】へ戻って来た俺たちは、そのまま【大精霊の館】へ向かった。
俺たちが館へ到着したその時、ウンディーメード様が姿を現した。
「戻って来ましたか。どうでしたか? 求めていた鉱石の収穫はありましたか?」
「はい。お蔭様で、ここでしか採れない鉱石を沢山採掘する事が出来ました。」
「そうっすね。それでウンディーメード様、一つお願いがあるっす。」
「なんでしょう?」
リョウは、俺たちを案内してくれた三体の水の精霊へ視線を向けた。
「案内してくれた三体の水の精霊たちに、お礼として【水轟極霊氷縁黎雫鉱石】を渡したいっすけど、いいでしょうか?」
ウンディーメード様は俺とリョウを見ると、嬉しそうに微笑んだ。
「ええ、もちろん構いませんよ。あなた達の気持ちですから、この子たちもきっと喜ぶでしょう。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうっす。」
俺とリョウは【水轟極霊氷縁黎雫鉱石】を三個取り出した。
そして案内してくれた三体の水の精霊へ、一個ずつ【水轟極霊氷縁黎雫鉱石】を渡した。
三体の水の精霊たちは受け取った鉱石を嬉しそうに見つめると、俺とリョウへ一礼した。
「こちらこそ案内してくれてありがとう。お蔭で助かったよ。」
三体の水の精霊たちは嬉しそうに頷いていた。
その後、俺たちはウンディーメード様へ挨拶をして【大精霊の館】を出た。
そして宿屋へ戻り、四人で明日の予定について話す事にした。
「それじゃ、明日はパラエムの街へ戻ろうか。」
「そうっすね。自分もそれでいいっすよ。」
「私も大丈夫よ。」
「私も賛成よ。」
こうして俺たちは、明日【水の精霊の里】を出発して、パラエムの街へ戻る事に決めた。
翌日――。
俺とリョウは宿屋の主へお礼を伝え、宿屋の前でナナとマイを待っていた。
数分後、ナナとマイが宿屋から出て来た。
「それじゃ、パラエムの街に戻るか。」
「ええ、そうしましょう。」
俺たちは宿屋を後にして、【水の精霊の里】の入口へ向かった。
そして里の入口まで来ると、俺とリョウは一度振り返った。
「今回も色々あったな。」
「そうっすね。」
俺とリョウは【水の精霊の里】へ向かって一礼した。
すると俺たちの姿を見ていた従魔たちも、同じように里へ向かって一礼していた。
そして俺たちは【水の精霊の里】を後にし、パラエムの街へ向かった。
その後、パラエムの街へ到着した俺たちは、そのまま商業ギルドへ向かった。
俺とリョウは商業ギルドの前で待ち、ナナとマイは【水薬草】の依頼完了報告をするために中へ入っていった。
しばらくすると、依頼完了報告を終えたナナとマイが戻って来た。
「トレン、リョウ。協力してくれて本当にありがとう。お蔭で助かったわ。」
「本当に感謝するわ。それに進化、大精霊様との友好関係、里への通行証、それからエリア解放まで一気にアナウンスが来たから、情報が多すぎて混乱したけどね。」
マイは少し困ったように笑っていた。
「あれは仕方ないっすよ。自分たちも同じだったっすからね。」
「確かにな。俺たちも最初は色々一気に来て驚いたからな。」
俺はそう言って少し笑った。
「それじゃ、俺たちは今日はログアウトするから、ここで別れるな。じゃあな、ナナ、マイ。」
「ええ。またね。」
「二人とも、本当にありがとう。またね。」
俺たちはナナとマイとその場で別れ、ホームへ戻った。
そして俺とリョウはログアウトした。
翌日――。
俺はいつも通り会社で仕事をこなしていた。
すると少し離れた場所で、若い社員が西石へ相談している姿が見えた。
「西石部長。あの例の超大手企業との契約なんですが、最終契約段階でちょっと問題がありまして……。」
「問題? どういう事だ。落ち着いてゆっくり話せ。相談ならちゃんと聞くから。」
西石がそう言うと、若い社員は少し落ち着いて事情を説明し始めた。
「実は相手側から連絡がありまして、最終契約は本社で判断するそうなんです。ただ、その本社が他県にあるんです。」
「三条グループの本社が他県なのか。それなら出張になるだけだろ?」
「それが……今回対応するのが担当者だけじゃなくて、三条グループの社長、三条音峰さんも同席するそうなんです。」
「マジかよ……。三条グループの社長自ら契約を判断するなら、そりゃ荷が重いよな。それで相談しに来たんだな。」
「はい……。」
「分かった。ちょっと待ってろ。」
西石はそう言うと、俺のところへやって来た。
「東条本部長。例の三条グループとの契約なんですが、最終契約段階で問題が発生しました。」
「問題? 詳しく説明してくれ。」
西石は、先ほど若い社員から聞いた内容を俺に説明した。
「なるほど……三条グループの本社へ出向いて、社長の三条音峰さんも同席するのか。」
俺は少し考えたあと、西石と若い社員を見る。
「分かった。三条グループの件は、西石も一緒に行ってくれ。西石の仕事は俺がやっておくから、若い社員と二人で出張を頼むよ。」
「分かりました。自分が一緒に行きます。」
「ありがとうございます、西石部長。東条本部長。」
こうして三条グループとの最終契約に向けて、西石と若い社員が出張する事になった。
午後も俺たちは、いつも通り仕事をこなしていた。
西石は若い社員と、三条グループへの出張日程や最終契約の内容について確認しながら話し合っていた。
そして時間が過ぎ、社員たちは次々と退社していく。
俺と西石も仕事を終え、十七時に会社を退社した。
その後、俺たちはいつもの居酒屋へ向かった。
「今日は予想外だったな。まさか三条グループの社長自ら同席するとはな。」
「そうっすね。自分たちなら、いつも通り仕事をしながら相手とコミュニケーションを取って、雑談なんかも交えながら契約まで進めるっすからね。」
「でも若い社員には、まだ俺たちみたいな上の立場の人間との対話経験が少ないからな。相手が大企業の社長となれば重圧を感じるのも仕方ない。最悪、契約に失敗する事もある。」
西石は俺の話を静かに聞いていた。
「ただ、一度失敗した事を引きずって、次々と契約出来なくなる事だけは本人が乗り越えるしかないからな。」
「そうっすね。でもアドバイスはしてあげられるっすからね。東条先輩も、困った時はいつでも相談しろって常に言ってますよね。自分も同じ考えっすよ。」
「ああ。もし契約に失敗したとしても、若い社員のケアだけはちゃんとしてあげよう。」
「了解っす。」
俺たちはそこで仕事の話を終え、今度はVRMMOの話へ切り替えた。
「そういえば西石。出張から帰って来たら、【水の精霊の里】で採掘した鉱石を使って武器製作をするぞ。」
「水属性専用武器っすね。了解っす。明後日から三日間出張っすから、必ず契約して帰って来るっすよ。」
「まあ、気負いすぎるなよ。若い社員のフォローも頼むからな。」
「分かってるっすよ。任せて下さい。」
こうして俺たちは、西石の出張が終わった後に【水の精霊の里】で採掘した鉱石を使い、水属性専用武器を製作する事に決めるのであった。
今回もお読みいただきありがとうございます。
今回は【水の精霊の里】での出来事を終え、トレンたちはパラエムの街へ戻ることになりました。
ナナとマイも【水薬草】の依頼を無事に終え、ヴィーナとエルマの進化や大精霊との友好関係、里への通行証など、一度に多くの出来事を経験することになりました。
そして現実側では、以前から進めていた三条グループとの契約が最終段階へ入り、西石と若い社員が出張することになりました。
出張が終わった後には、【水の精霊の里】で採掘した鉱石を使った水属性専用武器の製作も控えています。
最後になりますが、ブックマークや評価、ご感想をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




