EPISODE.272話〘リョウの新たな試練――そして四人で再び洞窟へ〙
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は、長い戦いを終えたトレンとリョウが、それぞれ自分自身と向き合っていくお話となります。
そして再び四人で洞窟へ向かう中、どのような展開が待っているのか。
最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
それでは、EPISODE.272話をお楽しみください。
激闘の末、【魔神四天王】アイムフィロゼに勝利した俺は、覚醒魔神の姿から元の状態へ戻っていた。
そして俺は、リョウのところへ向かった。
リョウはまだ岩壁の近くで身体を休めている。
回復はしているみたいだが、アイムフィロゼから受けたダメージはかなり大きかった。
「リョウ、大丈夫か? 念のため防御付与をかけていたけど」
俺が声を掛けると、リョウはゆっくりと身体を起こした。
「大丈夫っす。だけど……魔神と戦って、自分じゃ勝てないって思って身を引いたのがいけなかったっす」
「…………」
「その隙をヤツは逃さず攻撃してきたっすから。トレンの防御付与が無かったら、本当に殺られていたっすよ」
リョウは悔しそうな表情をしていた。
今回、初めて【魔神四天王】と直接戦ったんだ。
無理もないと思う。
だけど――。
俺はアゼルオメガ様から言われた言葉を思い出していた。
リョウには、自分自身で見つけさせる。
俺から答えを教えるつもりはない。
「そうだな。だけど俺もまだまだ未熟だよ」
「リョウも気付いているはずだろ? 自分自身の中にある、本当の弱さを」
「本当の……弱さ……」
リョウはその言葉を聞いて黙り込んだ。
俺が急にアイムフィロゼと互角以上に戦えるようになった理由も、まだ理解出来ていないみたいだ。
リョウの表情は明らかに混迷していた。
「リョウ、焦るな」
「……トレン」
「ゆっくりで良い。自分自身の中にある壁を見つけろ。焦らず冷静にな」
俺はリョウを見ながら話を続ける。
「俺から答えを言うつもりはないよ。自分自身で見つけて、それを乗り越えれば見えるはずだから」
「自分自身で……」
「それと一つだけ言っておく」
「何っすか?」
「俺はリョウがいたからアイムフィロゼに勝てたんだ。それだけは信じてくれ、リョウ」
「俺がいたから……勝てた……」
リョウは更に考え込んでしまった。
「信頼されている……俺……?」
……ダメだな。
完全に自分を見失っている。
俺はリョウへ強く声を掛けた。
「リョウ!! 自分を見失うな! いつものリョウらしく戻ってくれ!」
「なっ!?」
俺の声にリョウは驚いていた。
そして少しずつ頭の中を整理するように、黙り込んだ。
その時だった。
クライザーヴァイザの声が聞こえてきた。
(リョウ、お前らしくないぞ!)
「クライザーヴァイザ……」
(いつものポジティブはどうした? 俺と戦った時のお前は、もっと冷静だっただろ)
リョウは何も言わず聞いていた。
(今のお前は、勝てないと思った瞬間に自分自身を見失っている)
「自分自身を……」
(俺にも弱さはある。リョウ、お前にもあるはずだろ。本当の弱さがな)
「クライザーヴァイザにもある……本当の弱さ……」
リョウはしばらく黙っていた。
そして――。
「……あっ」
何かに気付いたように顔を上げた。
「そうか……」
「リョウ?」
「俺、自分が強くなったって無意識に過信してたんだ」
俺は何も言わず、リョウの言葉を聞いていた。
「強い相手とも戦えるようになった。クライザーヴァイザの力もある。だから自分なら大丈夫だって、どこかで思ってたっす」
「…………」
「だけど魔神には通じなかった。それで自分じゃ勝てないって思った瞬間、自分自身を信じることまでやめてた」
リョウは自分の拳を強く握った。
「そして無意識に……トレンなら何とかしてくれるって思ってたんだ」
ようやく気付いたみたいだな。
「それだけじゃないっす。クライザーヴァイザの力にも頼り過ぎていた」
(やっと気付いたか、リョウ)
「ああ……やっと分かったよ。トレン、クライザーヴァイザ」
リョウの表情が少しずつ元に戻っていく。
俺はそれを見て安心した。
「やっと気付いたか、リョウ」
「トレン……」
「俺も前に似たような事があったからさ」
俺は以前、自分一人でリョウや従魔たちを守ろうとしていた時のことを思い出していた。
「リョウも無意識に自分の強さを過信してる時があった。だから俺から答えを言っても意味がないと思ったんだ」
「…………」
「本当に強い相手と戦って、自分自身で気付くしかないってな」
「そういう事だったんすね」
「まあ、俺も人の事を言えるほど完璧じゃないけどね」
「それでも……ありがとうっす、トレン」
「気にするなよ」
俺は少し笑いながら答えた。
リョウもようやく、いつもの表情に戻っていた。
これなら大丈夫そうだな。
「それじゃ、バウトとサンオンが待っているから洞窟から出るぞ、リョウ」
「了解っす」
俺は【ワープ】を発動させた。
そして俺とリョウは、洞窟の入り口手前まで移動する。
そこにはバウトとサンオン。
そして俺たちが預けていた従魔たちが待っていた。
俺たちの姿を見た瞬間、バウトとサンオンがこちらへ近付いてきた。
「トレン、リョウ! 無事でしたか」
「何とかギリギリ勝てたけどね」
「本当に良かったです」
バウトは安心した様子だった。
リョウも二人へ顔を向ける。
「洞窟内の強い敵はヤツだけだったっすよ。もう大丈夫っす」
「トレン、リョウ。ありがとうございます」
バウトは俺とリョウへ頭を下げた。
「いやいや、気にしなくていいですよ」
するとサンオンも俺たちへ声を掛ける。
「流石ですね。トレン、リョウと一緒に同行出来て、バウトに誘われて来て良かったと思います」
「そう言ってもらえると嬉しいですよ」
俺はそう答えながら、リョウを見る。
さっきまで迷っていた表情は、もう無かった。
今回の戦いで俺だけじゃなく、リョウも自分自身の弱さに気付いた。
だけど――。
まだ俺たちの目的は終わっていない。
こうして俺たちはバウトとサンオンと再び洞窟に入って行くのであった。
だがこの後、予想外の出来事が待っていることを、四人はまだ知らないのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、長い戦いを終えたリョウが、自分自身の弱さと向き合うお話となりました。
そしてバウトとサンオンとも再び合流し、四人は改めて洞窟の中へ進んでいきます。
洞窟の先で待っている新たな出来事も楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後になりますが、ブックマークや評価、ご感想をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




