EPISODE.259話〘オークションの終幕――新たなる特殊イベント〙
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
長く続いたオークションも、今回でいよいよ終幕となります。
オークションを終えたトレンとリョウの前に現れたのは、サンオンと東エリア最強錬金術師バウト。
二人から語られる用件とは一体何なのか。
最後までお読みいただけたら嬉しいです。
全てのオークションが無事に終わった。
俺たちは、自分たちが落札した出品物と、出品した八つの落札総額が1000億Gになったことを確認していた。
「トレン、自分たちの全ての出品が希少価値の高い物だったと、改めて認識したっすね」
「ああ、そうだな。予想外だったけどな。でも、楽しかったのは事実だ」
「そうっすね。それじゃ、会場を出るっす」
俺たちは席を立ち、オークション会場を出た。
会場の外へ出ると、そこにはアルジェリナギルド長が待っていた。
「二人とも、お疲れ様。どうだったかな? 初めてのオークションの雰囲気は」
「正直、予想以上でした。自分たちの出品があそこまで高額になるとは思っていませんでしたけど、楽しかったです」
「自分もっす。途中から金額が凄過ぎて驚いてばかりだったっすけど、参加出来て良かったっす」
「それなら良かったよ」
アルジェリナギルド長とそんな話をしていると――。
「すみません。トレンさんとリョウさんでしょうか?」
突然、後ろから声を掛けられた。
俺とリョウが振り向くと、そこにいたのはサンオンさんと、東エリア最強錬金術師だった。
俺とリョウは、思わず驚きを隠せなかった。
「そうですけど……北エリアの大商人のサンオンさんと、え~と……東エリア一の大錬金術師さん?」
俺は思わず、そんな言い方をしてしまった。
超有名な二人を目の前にして、思わず変な言い方になってしまった。
すると、隣にいたリョウが呆れた顔で俺を見た。
「やっぱり、有名な方々になると緊張は変わらないっすね」
「仕方ないだろ。リアルでもそうなるんだよ」
するとサンオンさんが笑いながら話し出した。
「いえいえ。トレンさんとリョウさんはトッププレイヤーとして有名ですから。こうして直接お話し出来る機会なんて、滅多にありませんよ」
いやいや。
謙虚過ぎるよ、サンオンさん。
すると東エリア最強錬金術師も話し出した。
「確かにそうですね。私やサンオンさんなんて、トレンさんとリョウさんに比べればまだまだですよ」
……この人も謙虚過ぎる。
俺がそんなことを思っていると、その人物は俺たちへ頭を下げた。
「申し遅れました。私はバウトと申します。皆さんからは『東エリア最強錬金術師』と呼ばれております」
「バウトさんですね。よろしくお願いします」
「よろしくっす」
俺たちはバウトさんと挨拶を交わした。
それにしても、オークションであれだけ目立っていた二人が、どうして俺たちへ話しかけてきたんだ?
俺は気になり、そのまま二人へ聞いた。
「それで、サンオンさんとバウトさんが俺たちに何か用件でも?」
するとサンオンさんが周囲を見渡した。
「はい。ただ、ここでは何ですから、どこか落ち着いて話せる場所へ移動しませんか?」
「確かにそうっすね。トレン、お二方とここで話すのはまずいっすよ」
「そうだな」
すると、アルジェリナギルド長が俺たちへ言った。
「それなら私がある場所へ連れて行くよ。あそこなら知られたくない事情も安心して話せるからね」
「アルジェリナギルド長、お願いいたします」
バウトさんがそう言うと、アルジェリナギルド長は頷いた。
俺たちはアルジェリナギルド長の案内で、ギレンバラの街にある宿屋街へ向かった。
しばらく歩くと、一軒の大きな宿屋へ到着した。
どうやらアルジェリナギルド長御用達の宿屋らしい。
中へ入ると、アルジェリナギルド長が受付で何かを伝えた。
すると俺たち五人は、宿屋の奥にある大きな部屋へ案内された。
部屋の中はかなり広く、五人で過ごしても十分な広さがある。
さらに奥には、寝るための部屋もそれぞれ別に用意されていた。
「随分広い部屋ですね」
俺がそう言うと、アルジェリナギルド長が笑いながら答えた。
「ここなら知られたくない事情も話せるから、安心していいよ。宿屋代も私が払っているから、気にしなくていいからね」
「ありがとうございます」
俺たちは広間へ移動し、それぞれ席へ座った。
するとアルジェリナギルド長が立ち上がった。
「それじゃ、私は席を外すね」
だが、サンオンさんがすぐに声を掛けた。
「いえ、アルジェリナギルド長もいてくれた方が助かります」
「私も?」
「はい」
「分かったよ。それなら私も聞かせてもらうね」
アルジェリナギルド長は再び席へ座った。
これで五人全員が揃った。
俺はサンオンさんとバウトさんを見ながら口を開いた。
「それで、用件を聞きましょう」
「分かりました。では、まず私からお話しします」
サンオンさんが先に話し始めた。
「実は、リョウさんがお持ちの火属性専用武器【炎帝轟黎グロー】を、私に売っていただきたいのです」
「えっ?」
「自分の【炎帝轟黎グロー】っすか?」
俺とリョウは予想外のお願いに驚きを隠せなかった。
【炎帝轟黎グロー】は、火の精霊の里で購入した火属性専用武器だ。
値段はかなり高かったが、その性能を考えれば妥当な値段だった。
しかも今は、製作に必要な素材鉱石を俺たちも持っている。
必要なら新しく製作することも出来るため、リョウが今持っている物を手放しても問題はない。
リョウは少し考えた後、サンオンさんへ聞いた。
「それは構いませんけど、理由を聞いてもいいっすか?」
「もちろんです」
サンオンさんは頷いた。
「実は私は、自分専用として各属性の専用武器を製作して揃えようと考えているのです」
「各属性の専用武器っすか?」
「はい。今回のオークションでリョウさんの【炎帝轟黎グロー】を拝見し、あのような火属性専用武器があることを知りました。それで、是非譲っていただけないかと思いまして」
「なるほどっす」
リョウは俺を見た。
俺も特に問題はないため、頷いた。
するとリョウは、再びサンオンさんへ視線を戻した。
「わかったっす。ただし、一つ条件があるっす」
「条件ですか?」
「はい。それと、バウトさんにも関係ある話っすから」
バウトさんも真剣な表情で頷いた。
「分かりました。お聞きします」
リョウは二人を見ながら説明を始めた。
「【炎帝轟黎グロー】には、オークションに出した【火霊結晶雫鉱石】や【炎轟霊極麗煉炎黎雫鉱石】を含めて、特殊な鉱石がいくつか使われてるっす」
サンオンさんとバウトさんは黙って話を聞いている。
「それらの鉱石は、火の精霊の里にしかない物っす」
「火の精霊の里……」
サンオンさんが静かに呟いた。
リョウはそのまま話を続けた。
「素材について話すのは構わないっす。でも、火の精霊の里がどこにあるのかは教えるつもりはないっす。それが条件っす」
俺も続けて二人へ言った。
「俺たちにとっても大事な場所ですから。そこだけは理解してください」
するとサンオンさんとバウトさんは、特に驚くこともなく頷いた。
「もちろんです。それで問題ありません」
「私も同じです」
あまりにもあっさり了承されたため、今度はこちらが少し驚いてしまった。
するとサンオンさんが俺たちへ説明した。
「火の精霊の里については、存在だけなら私たちも知っています」
「知っていたんですか?」
「はい。ただし、場所までは知りません」
今度はバウトさんが話し出した。
「それに、仮に場所が分かったとしても、私たちが簡単に行けるような場所ではないでしょう。精霊の里とは、そういう場所だと思っています」
「なるほど……」
二人とも、最初から無理に場所を聞くつもりはなかったようだ。
それなら俺たちも安心出来る。
こうして【炎帝轟黎グロー】については、条件を守ることを約束した上でサンオンさんへ売ることになった。
サンオンさんの用件が終わると、今度はバウトさんが俺たちへ視線を向けた。
「では、次は私からお願いがあります」
「俺たちにですか?」
「はい。トレンさんとリョウさん、お二方に協力していただきたいのです」
俺とリョウは顔を見合わせた。
「協力っすか?」
「一体何でしょう?」
するとバウトさんは、一度大きく息を吐いてから説明を始めた。
「私は東エリアにある、とある鉱山洞窟で採掘を続けています」
東エリアの鉱山洞窟。
錬金術師であるバウトさんなら、鉱石を求めて採掘へ行くこと自体は不思議ではない。
「その鉱山洞窟にある採掘場所を調べながら一通り回っていたところ、ある条件を達成したらしく、突然アナウンスが流れました」
「アナウンス?」
「はい」
バウトさんは続けた。
「新たな鉱山洞窟が解放された、という内容でした」
「新しい鉱山洞窟っすか」
「私も気になり、すぐにその場所へ向かいました。ですが、入口で入ることが出来なかったのです」
「何か条件があったんですか?」
俺が聞くと、バウトさんは頷いた。
「はい。その時に表示された内容が――【鉱山採掘権利書】の所有者がいなければ、この先へ進めないというものでした」
「鉱山採掘権利書……?」
俺はその名前に聞き覚えがあった。
隣を見ると、リョウも同じように何かを思い出した顔をしている。
「トレン……それって」
「ああ。メーラさんから貰ったやつだ」
※EPISODE.13話参考
かなり前のことだ。
リョウがナイトディランを初めてテイムした時、依頼をくれたメーラさんから俺たちは一枚の書類を受け取った。
それが――。
【鉱山採掘権利書】
だった。
「やはり、お二方がお持ちだったのですね」
バウトさんがそう言った。
「どうして俺たちだと分かったんですか?」
「その後、さらに通知が表示されたのです」
バウトさんはそう言うと、自分の画面を操作した。
「こちらをご覧ください」
バウトさんが俺たち四人へ画面を見せる。
そこには――。
【この先へ進むには【鉱山採掘権利書】の所有者が必要です】
【対象となる【鉱山採掘権利書】の所有者が確認されました】
【所有者:トレン・リョウ】
と表示されていた。
「本当に俺たちの名前だ……」
「まさか、あの権利書がここで出てくるとは思わなかったっす……」
俺とリョウは驚きながら画面を見ていた。
だが、表示されているのはそれだけではなかった。
「そして、こちらが今回お二方へ協力をお願いしたい理由です」
バウトさんが画面を切り替えた。
次の瞬間――。
俺たちの目の前に、特殊イベントの内容が表示された。
【特殊イベント】
【鉱山採掘権利書】の所有者を連れて行き、闇属性鉱石を発見せよ。
成功報酬
【闇の精霊の里】
【闇の精霊】
「……闇の精霊の里?」
俺は思わず声を漏らした。
「トレン、それに【闇の精霊】って書いてあるっすよ」
「ああ……俺にも見えてる」
サンオンさんも驚いた様子で画面を見ている。
アルジェリナギルド長も、いつもの落ち着いた表情とは違い、驚きを隠せていなかった。
「まさか、こんな特殊イベントが隠されていたとはな……」
「私も、この報酬を見た時は驚きました」
バウトさんがそう言った。
俺はもう一度、画面に表示された内容を見る。
【鉱山採掘権利書】。
まさか、あの時メーラさんから受け取った権利書が、こんな形で再び関わってくるとは思ってもいなかった。
しかも、その先に待っているのは――。
【闇の精霊の里】。
そして【闇の精霊】。
長かったオークションが終わった直後、俺たちの前に新たな特殊イベントが現れた。
俺とリョウは、画面に表示された二つの報酬を見ながら、驚きを隠せないのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、オークション終了後にサンオンとバウトから思わぬ話を持ち掛けられることになりました。
そして、以前から所有していた【鉱山採掘権利書】が、ここで新たな特殊イベントへと繋がることになります。
成功報酬として表示された【闇の精霊の里】と【闇の精霊】。
果たして、この特殊イベントの先には何が待っているのか。
次回も引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
最後になりますが、ブックマークや評価、ご感想をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




