EPISODE.254話〘シークレット出品――緑地樹怨の大木樹〙
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
今回もシークレット出品の続きになります。
ポーションの出品が終わり、ここからは素材と鉱石の出品へと移ります。
まず登場するのは【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】。
果たしてどのような競りになるのか。
最後までお読みいただけたら嬉しいです。
俺とリョウが出品した四種類のポーションが終わり、残る出品はあと四つ。
ここからは、俺たちが出品した素材と鉱石になる。
そんな中、壇上では次の出品物の準備が始まっていた。
俺とリョウも、次に何が出品されるのかを静かに見守っていた。
そして準備が整うと、主催者が次の出品物を紹介する。
「それでは、続いての出品物をご紹介いたします!」
主催者が壇上へ運ばれてきた素材へ手を向けた。
「こちら――【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】一点となります!」
その名前が告げられると、会場内がざわつき始めた。
「緑地樹怨デスダーグプッギ……?」
「西の森林樹の主の素材だと?」
主催者は、そのまま説明を続ける。
「こちらは、西エリア西南部にある【アルデラズ洞窟】で入手された特殊素材となります!」
「トレン様とリョウ様が、護衛の【翠烈陣氷帝】と共に鉱石採掘へ向かった際、本来そこにいるはずのない西の森林樹の主【緑地樹怨デスダーグプッギ】から奇襲を受けました!」
「そして討伐戦の中で現れた分身体から入手したものが、こちらの【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】となります!」
会場内から再び驚きの声が上がる。
「分身体から入手した素材なのか……」
「西の森林樹の主となれば、普通の魔獣素材とは違うぞ」
さらに主催者は、この素材の用途について説明した。
「こちらは主に魔法の杖を製作する際に使用される武器素材です!」
「さらに、杖以外の武器製作でも、複数の素材を繋ぎ合わせるために使用できる珍しい特殊素材となります!」
その説明を聞いた武器職人や商人たちが、壇上の【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】へ視線を向け始める。
中でも、西エリアの商人や武器職人たちの反応は明らかに違っていた。
どうやら西エリアでは、【翠烈陣氷帝】が持っていた同じ素材の一部が冒険者ギルドへ卸されており、その価値を知っている者も多いらしい。
そして主催者が、いよいよ競りの開始を告げる。
「それでは、【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】一点――開始価格一億Gから競りを開始いたします!」
その直後だった。
「二億G!」
西エリアの商人がすぐさま手を挙げる。
すると、別の武器職人も続いた。
「四億G!」
「八億G!」
「十二億G!」
金額が次々と上がっていく。
そして――。
「十五億G!」
開始価格一億Gだったはずが、あっという間に十五億Gまで跳ね上がった。
「十五億Gです!!」
主催者の声が会場内へ響き渡る。
俺とリョウも、西エリアの商人や武器職人たちの勢いを見ながら競りの行方を見守っていた。
そんな中――。
ここまで様子を見ていた他のエリアの商人や武器職人たちも、西エリアの者たちの競り方が明らかに違うことに気付き始めた。
「…西エリアの連中、随分とこの素材に食いついているな」
「十五億Gになっても、まだ引く様子がないぞ」
「もしかして、俺たちが思っている以上に価値のある素材なんじゃないのか?」
その言葉をきっかけに、他のエリアの商人や武器職人たちも壇上の素材を見る目を変え始める。
そして――。
「二十億G!」
ついに他エリアからも入札が入った。
「二十億Gです!! 遂に二十億Gへ到達しました!」
だが、競りはそこで止まらない。
「三十億G!」
「四十億G!」
「四十億Gです!!」
主催者も次々と跳ね上がる金額に興奮した様子で声を張り上げる。
会場内では、西エリアだけでなく、各エリアの商人や武器職人たちが本格的に競りへ参加し始めていた。
……四十億Gかよ。
俺は壇上に置かれている【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】を見つめる。
俺たちにとっては、あの戦いで手に入れた素材の一つだった。
それが、まさかここまでの競りになるとは思っていなかった。
そんな俺の考えをよそに――。
競りはさらにヒートアップしていく。
「五十五億G!」
「ご、五十五億Gです!!」
主催者の声が大きくなる。
すると、別のエリアの武器職人がすぐに手を挙げた。
「六十八億G!」
「六十八億Gです!! まだ上がります!」
会場内から大きなどよめきが広がる。
そして――。
「七十五億G!」
その金額が告げられた瞬間、会場内の空気が変わった。
「な、七十五億Gです!!」
主催者も驚きを隠せない様子だった。
さすがにここまで上がると、それまで競っていた商人や武器職人たちも次々と手を引き始める。
しばらく待っても、新たな入札はない。
主催者は会場内を見渡す。
「七十五億Gです! 他にご入札はございませんか!?」
誰も手を挙げない。
どうやら七十五億Gで決まりそうだった。
主催者も落札を宣言しようとした――その時だった。
会場の西エリア側から、一人のベテラン武器職人がゆっくりと手を挙げた。
「【翠烈陣氷帝】が持っていた物と同じ素材だ。ここで逃すわけにはいかない」
周囲の視線が、一斉にその武器職人へ集まる。
そして――。
「八十四億G!」
一瞬、会場内が静まり返った。
「は、八十四億G!?」
「七十五億Gから、さらに上げたぞ!?」
「そこまでの価値がある素材なのか!?」
次の瞬間、会場内が再び大きくざわめき始めた。
主催者も驚いた表情を見せたが、すぐに声を張り上げる。
「八十四億Gです!! 西エリアの武器職人から、八十四億Gが提示されました!!」
先ほど七十五億Gを提示した参加者も、しばらく考えた後、静かに首を横へ振った。
それ以上の入札はない。
主催者は改めて会場内を見渡した。
「八十四億Gです! 他にご入札はございませんか!?」
誰一人として手を挙げる者はいなかった。
そして――。
「それでは、【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】一点――八十四億Gで落札です!!」
こうして【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】は、西エリアのベテラン武器職人によって八十四億Gで競り落とされた。
俺とリョウは、八十四億Gという落札額に驚きを隠せなかった。
まさかボス級の素材が、ここまで高騰するとは思ってもいなかった。
すると、リョウが俺に小さな声で話しかける。
「トレン、残りの三つももしかして……」
「多分な……。俺たちが出品した物が、どれだけ希少なのか改めて分かったよ」
まだ俺たちの出品は、三つ残っている。
俺とリョウは、この先の競りがどうなるのか気になりながら、次の出品を待つのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は【緑地樹怨デスダーグプッギの大木樹】の出品となりました。
西エリアの商人や武器職人たちが知っていた素材の価値から、競りは思わぬ展開となりました。
これでトレンとリョウの出品は、残り三つとなります。
次回も引き続き、シークレット出品の続きをお届けします。
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