EPISODE.245話〘シークレット出品――生きている世界樹の杖〙
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回は、シークレット出品に『世界樹の杖』が登場します。
驚きの性能を持つ世界樹の杖、そして『生きている杖』と呼ばれる理由にも注目していただけたら嬉しいです。
それでは、EPISODE.245をお楽しみください。
二つの謎の卵を無事に落札した俺とリョウは、競り落とせて良かったと思っていた。
会場内では未だざわめきが収まらず、参加者たちは俺とリョウへ驚きと不思議そうな視線を向けている。
正体すら分からない二つの謎の卵に、六千五百万Gと七千万G。
それだけの大金を出して落札した俺たちが、どうしても気になるようだった。
もちろん、その中にはサンオンと『東エリアの最強錬金術師』の姿もある。
二人もまた、俺とリョウへ不思議そうな視線を向けていた。
そんな中、主催者が再び壇上の中央へ立つ。
[皆様、シークレット出品はまだ続きます。]
その言葉に、ざわめいていた参加者たちの視線が一斉に壇上へ集まった。
主催者は会場全体を見渡し、静かに口を開く。
[それでは、次なるシークレット出品をご紹介いたします。]
その言葉と共に、一振りの杖がゆっくりと壇上へ運び込まれる。
参加者たちは、運び込まれた杖へ興味深そうな視線を向けていた。
主催者は杖の傍へ立つと、静かに手を添える。
[こちらの武器は――『世界樹の杖』です。]
その名前が告げられた瞬間、会場内から小さなどよめきが広がった。
主催者はそのまま説明を続ける。
[こちらの『世界樹の杖』は、世界樹の枝を用いて製作されたオリジナル武器になります。]
[攻撃力は8000。そして最大の特徴は、火・水・風・地・氷・土・雷・光・闇――全九属性の上級魔法を使用することができます。]
その説明に、会場内のざわめきがさらに大きくなる。
[全九属性の上級魔法だと!?]
[そんな杖が存在するのか……!?]
驚きの声が飛び交う中、主催者は静かに頷いた。
[そして、この杖の製作に使用された世界樹の枝は、南エリアで発見されたものになります。]
参加者たちがさらにざわめく。
しかし、主催者は続けて説明を加えた。
[なお、世界樹の枝が発見された詳しい場所につきましては、出品者の意向により非公開とさせていただきます。]
その言葉に、参加者たちは互いに顔を見合わせる。
南エリアで発見されたこと以外、世界樹が存在する詳しい場所は明かされないようだった。
主催者は再び世界樹の杖へ視線を向ける。
[続いて、今回こちらの杖が出品された理由についてご説明いたします。]
[出品者は、新たな杖を完成させたことで『世界樹の杖』を必要としなくなり、今後の魔法研究に必要な資金へ充てるため、今回の出品を決められたそうです。]
その説明を聞いた参加者たちから、驚きの声が上がる。
[世界樹の杖が必要なくなっただと……?]
[これ以上の杖を完成させたっていうのか……!?]
俺とリョウも、その説明には驚きを隠せなかった。
これほどの性能を持つ杖を必要としなくなるほどの新たな杖。
一体どんな武器なのか、想像すらできなかった。
そして主催者は、出品者について説明する。
[今回『世界樹の杖』を出品された方は、賢者バゼラム様になります。]
その名前が告げられた瞬間――。
会場内の一部の参加者たちが大きく反応した。
[世界樹だと……本当にあったんだ……。]
[待て……今、バゼラムと言ったか?]
一人の参加者が驚いた表情で壇上の世界樹の杖を見つめる。
そして、信じられないといった様子で口を開いた。
[賢者バゼラムって……まさか、元最強四天王【聖神賢者】バゼラム!?]
その言葉が響いた瞬間、会場内が大きくざわめいた。
[元最強四天王だと!?]
[じゃあ、この世界樹の杖は……!]
そう――。
『世界樹の杖』を出品した賢者バゼラム。
その正体は、かつて【闘神聖】ネイザーラルファたちと共に最強四天王として名を馳せた一人――。
【聖神賢者】バゼラム。
そして今回出品された『世界樹の杖』は、そのバゼラムが所有していた杖なのであった。
その時だった。
会場入口付近から、一人の人物がゆっくりと壇上へ向かって歩いてくる。
その姿に気付いた参加者たちが、次々と驚きの声を上げた。
[ま、まさか……!]
[本人だ……【聖神賢者】バゼラム本人だ!]
会場内が一気にざわめき始める。
俺とリョウも、思わず壇上へ向かって歩いてくる人物へ視線を向けた。
[トレン、あの人がバゼラムなんすね。]
[ああ……まさか本人が来ていたとはな。]
バゼラムは参加者たちの視線を浴びながら壇上へ上がると、主催者の隣へ静かに立った。
主催者はバゼラムへ一礼する。
バゼラムも静かに頷くと、会場全体を見渡しながら口を開いた。
[今回、私がこの『世界樹の杖』を出品した理由について、私自身の口からもう一つ伝えておきたいことがある。]
ざわめいていた会場内が静まり返る。
[この杖は長年、私と共に歩んできた大切な杖だ。]
バゼラムは『世界樹の杖』へ静かに視線を向ける。
[新たな杖が完成した今、私が持ち続けるのではなく、この杖を必要とする次の者へ継承してほしいと思っている。]
その言葉に、参加者たちは静かに耳を傾けていた。
すると、バゼラムの表情が僅かに険しくなる。
[ただし――商人の諸君には、一つだけ忠告しておこう。]
その一言に、商人たちの表情が引き締まった。
[この杖を金儲けのために悪用することだけは、絶対にやめておいた方がいい。]
[世界樹の杖には、自らの意思がある。]
会場内から驚きの声が上がる。
[杖に……意思がある?]
[どういうことだ……?]
バゼラムは静かに世界樹の杖へ手を添えた。
[もし悪意ある者がこの杖を利用した場合、杖は自らその者との繋がりを断つ。]
そして、商人たちへ念を押すように続ける。
[最悪の場合、その者が営む店ごと消滅させることもある。くれぐれも気を付けることだ。]
[み、店ごと……!?]
商人たちは驚きながらも、元最強四天王であるバゼラムの言葉を真剣な表情で受け止めていた。
誰一人として、その忠告を軽く考えている者はいない。
バゼラムはそんな商人たちの様子を確認すると、静かに頷いた。
[この杖が『世界樹の杖』と呼ばれているのは知っているだろう。だが、もう一つの名がある。]
参加者たちの視線が世界樹の杖へ集まる。
[――『生きている杖』だ。]
その言葉が静かな会場内へ響き渡った。
俺は世界樹の杖を見つめながら、思わず息を呑む。
(生きている杖……。)
ただ強力な性能を持つだけの武器ではない。
自らの意思を持ち、次なる主を選ぶ杖。
それが『世界樹の杖』なのだと、俺たちは初めて理解した。
説明を終えたバゼラムは、主催者へ静かに頷く。
主催者も一礼すると、再び会場全体へ視線を向けた。
[【聖神賢者】バゼラム様、ありがとうございました。]
[それでは皆様、大変お待たせいたしました。]
主催者は『世界樹の杖』へ手を向け、高らかに宣言する。
[『世界樹の杖』の競りを開始いたします! 開始価格は一億Gからです!]
その言葉と同時に、参加者たちから次々と声が上がった。
[二億G!]
[三億G!]
[五億G!]
競り額は瞬く間に上昇していく。
そして――。
[十億G!]
その金額が響いた瞬間、会場内から大きなどよめきが巻き起こった。
主催者も興奮した様子で声を張り上げる。
[一気に二桁へ到達しました! 十億Gです! 他にご入札はございませんか!?]
しかし、ここから参加者たちの様子が変わった。
バゼラムの言葉を聞いた商人たちも、その意味を十分に理解している。
世界樹の杖を悪用するつもりなどなく、その価値を理解した上で適正な金額を見極めながら競りへ参加していた。
そして、ここから本格的な勝負が始まる。
一人の商人が静かに手を挙げた。
[十四億G!]
その直後、王族に仕える一人の貴族が声を上げる。
[十八億G!]
一気に四億Gずつ上がったことで、会場内の熱気はさらに高まった。
[十八億Gです! 他にご入札はございませんか!?]
参加者たちは互いの様子を窺う。
その時、一人の賢者が静かに立ち上がった。
『世界樹の杖』を真剣な表情で見つめ、勝負に出る。
[二十二億G。]
その金額に、会場内が大きくざわめいた。
[に、二十二億Gだと!?]
[さすがにこれで決まりか……?]
主催者も会場全体を見渡す。
[二十二億G! 他にご入札はございませんか!?]
誰もが、このまま賢者が落札すると思っていた。
その時だった。
これまで静かに競りを見守っていた一人の魔道士が、ゆっくりと手を挙げる。
そして、落ち着いた口調で告げた。
[二十六億G。]
その一言が響いた瞬間――。
会場内は大歓声とどよめきに包まれた。
[に、二十六億G!?]
[まだ上がったのか!]
主催者も驚きを隠せず、声を張り上げる。
[二十六億Gです! 他にご入札はございませんか!?]
先ほど二十二億Gを提示した賢者は、魔道士へ静かに視線を向ける。
しばらく考えた後、小さく息を吐き、ゆっくりと手を下ろした。
商人も貴族も、それ以上入札する様子はない。
会場内は次第に静寂へ包まれていく。
主催者は会場全体を見渡し、大きく頷いた。
[二十六億G……他にございませんね?]
誰からも声は上がらなかった。
そして――。
[それでは、『世界樹の杖』は二十六億Gで落札です!]
その宣言と同時に、会場内から盛大な拍手が沸き起こった。
二十六億Gという高額で落札された『世界樹の杖』。
元最強四天王【聖神賢者】バゼラムから、新たな持ち主となった魔道士へ――。
『生きている杖』は、新たな主の元へ受け継がれることとなった。
バゼラムは落札した魔道士へ静かに視線を向けると、小さく頷いた。
その表情は、自らが長年使用してきた杖を託せる者が現れたことに、安堵しているようにも見えた。
会場内では、未だ世界樹の杖が繰り広げた競りの興奮が収まっていない。
俺とリョウも、その光景を静かに見つめていた。
[二十六億Gか……凄い競りだったな。]
[そうっすね。それに、まさか元最強四天王まで現れるとは思わなかったっすよ。]
[ああ。俺も驚いたよ。]
すると、主催者が再び壇上の中央へ歩み出す。
その姿を見た参加者たちは、まだシークレット出品が終わっていないことを察し、再び壇上へ視線を向けた。
世界樹の杖という驚愕の武器が落札されてもなお、シークレット出品はまだ続いていく。
次は一体、どんな出品が待っているのか――。
俺とリョウも期待を膨らませながら、次なる出品を待つのであった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、シークレット出品に登場した『世界樹の杖』を巡る熱い競りと、新たな持ち主へ受け継がれるまでを描かせていただきました。
そして、シークレット出品はまだまだ続きます。
次はどのような出品物が姿を現すのか、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。
最後になりますが、ブックマークや評価、ご感想をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




