EPISODE.244話〘シークレット出品――謎の卵〙
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回は、招待状を持つ者だけが参加できる
『シークレット出品』が始まります。
最初に登場するのは、正体不明の二つの謎の卵。 トレンとリョウが見出した価値とは――。
それでは、EPISODE244をお楽しみください。
全ての出品が終了し、会場内には大きな拍手が響き渡っていた。
参加者たちは満足そうな表情を浮かべながら、席を立とうとする者や、落札した品について語り合う者など、それぞれ思い思いの時間を過ごしている。
その時だった。
――ギィィィ……。
会場入口の大きな扉が、ゆっくりと閉まり始めた。
重厚な音が会場内へ響き渡り、参加者たちは一斉に入口へ視線を向ける。
[……?]
俺とリョウも思わず顔を見合わせた。
[トレン、何で入口を閉めるんすか?]
[さあ……。]
俺が首を傾げていると、近くにいた一人の商人が小さく笑みを浮かべる。
[驚くのも無理はない。]
そう言って、ゆっくりと口を開いた。
[本当のオークションは、これから始まるんだよ。]
[本当のオークション……?]
俺が聞き返すと、商人は静かに頷く。
[招待状を持つ者だけが参加できる限定オークション。]
[言わば――シークレット出品さ。]
その言葉に、俺とリョウは思わず息を呑んだ。
(シークレット出品……。)
今までとは別に、そんな特別なオークションが用意されていたとは思いもしなかった。
主催者は、壇上へ運び込まれた二つの卵を見渡しながら、ゆっくりと口を開いた。
[シークレット出品、最初の出品はこちらになります。]
会場内の視線が、一斉に二つの卵へ集まる。
主催者は静かに続けた。
[こちらは始まりの街外、サクヌラ森林とワビェラ山岳で発見された二つの謎の卵です。]
その説明に、会場内は小さくざわめく。
[出品者は重騎士の方になります。]
[発見された卵ではありますが、【鑑定】を所持していないため、何の卵なのかは判明しておりません。]
参加者たちは互いに顔を見合わせる。
主催者は小さく頷いた。
[出品者の意向により、高値で取引される可能性があるとの判断から、今回シークレット出品として出品されることとなりました。]
そして、二つの卵へ視線を向ける。
[なお、こちらは一つずつオークションを行います。]
その説明に、参加者たちは静かに頷いた。
主催者は緑色の卵へ手を添える。
[それでは最初に、緑色の謎の卵から競りを開始いたします。]
その瞬間だった。
リョウは緑色の卵を見つめたまま、小さく息を呑む。
[……あの卵の緑色、もしかして……。]
俺はそんなリョウへ視線を向ける。
[トレン、あの緑色の卵を競り落とすっすね。]
その真剣な表情を見て、俺は静かに頷いた。
[それならリョウが競りに参加しな。]
[了解っす。必ず落札するっす。]
リョウの瞳には、強い決意が宿っていた。
その様子を見届けた主催者は、高らかに宣言する。
[それでは、緑色の謎の卵の競りを開始いたします。開始価格は一千万Gからです。]
その言葉と同時に、参加者たちが入札を始める。
[千五百万G!]
[千八百万G!]
[二千万G!]
しかし、そこで競りはぴたりと止まった。
何の卵なのか分からない。 情報もあまりに少ない。
情報も少ない。
参加者たちは互いの様子を窺いながら、慎重に判断している。
会場内には、静かな空気が流れていた。
その時だった。
リョウがゆっくりと手を挙げる。
[三千万G。]
その一言に、参加者たちの視線が一斉にリョウへ集まる。
[三千万Gです! 他にご入札はございませんか!?]
その直後、一人の召喚師が静かに手を挙げた。
[三千五百万G。]
会場内から小さなどよめきが広がる。
リョウは相手を見つめると、一切迷うことなく口を開いた。
[六千五百万G。]
その金額が響いた瞬間――。
会場内は大きなどよめきに包まれた。
[ろ、六千五百万Gだと!?]
[正体も分からない卵だぞ!?]
召喚師も驚いた表情でリョウを見つめる。
しばらく沈黙した後、小さく息を吐き、静かに首を横へ振った。
その姿を確認した主催者は、会場全体を見渡す。
[六千五百万G! 他にご入札はございませんか!?]
会場内は静まり返る。
やがて主催者は大きく頷き、高らかに宣言した。
[それでは、緑色の謎の卵は六千五百万Gで落札です!]
大きな拍手が会場内へ響き渡る中、リョウは静かに安堵の息を吐いた。
俺は静かに紫色の謎の卵を見つめ、小さく息を吐いた。
会場内に響く拍手がゆっくりと静まっていく。
主催者は笑みを浮かべながら頷くと、壇上へ残る紫色の卵へ視線を向けた。
[続きまして、紫色の謎の卵の競りを開始いたします。]
[開始価格は、一千万Gからです。]
その宣言と同時に、参加者たちが次々と声を上げる。
[千五百万G!]
[二千万G!]
[二千五百万G!]
しかし、競りはそこで止まった。
会場内には静かな空気が流れる。
緑色の卵と同じく、情報があまりにも少ない。
何の卵なのかも分からず、安易に大金を投じるには危険すぎた。
参加者たちは互いの様子を窺いながら、慎重に判断している。
やがて、一人の参加者が静かに手を挙げた。
[三千万G。]
その声に続き、別の参加者も入札する。
[三千五百万G。]
再び会場内は静まり返った。
その時だった。
俺は紫色の卵を静かに見つめる。
(……あの紫色の卵、何かを感じる。)
言葉では説明できない。
しかし、心の奥底で何かが訴えかけてくるような、不思議な感覚だった。
俺は迷うことなく、静かに手を挙げる。
[七千万G。]
その一言が響いた瞬間――。
会場内は大きなどよめきに包まれた。
[な、七千万Gだと!?]
[ありえない……。情報が少ないとはいえ、リスクがあり過ぎるぞ。]
[あの二人は……なぜそこまで出せるのだ。]
参加者たちは驚きを隠せず、トレンとリョウへ視線を向ける。
しかし、俺は紫色の卵から目を離さなかった。
その様子を見た参加者たちは、誰一人として手を挙げようとはしない。
主催者は会場全体を見渡し、大きく頷く。
[七千万G! 他にご入札はございませんか!?]
静寂だけが会場内を包み込む。
やがて主催者は高らかに宣言した。
[それでは、紫色の謎の卵は七千万Gで落札です!]
その宣言と同時に、会場内から大きな拍手が沸き起こる。
俺は静かに息を吐き、紫色の卵へもう一度視線を向けた。
(……この卵には、きっと何かがある。)
その確信だけが、俺の胸の中で静かに大きくなっていた。
隣ではリョウも安堵したように笑みを浮かべている。
[これで……有り金は全部使い切ったっすね。]
[ああ。]
俺は苦笑しながら頷く。
[これで残金はゼロだ。]
それでも、不思議と後悔はなかった。
俺とリョウは互いに顔を見合わせ、小さく笑みを浮かべる。
二人とも、この二つの謎の卵には、それだけの価値があると信じていたからだ。
そしてシークレット出品は、まだ終わりではない。
会場内には再び静寂が流れ、主催者は次なる出品を紹介するため、ゆっくりと壇上の中央へ歩み出たのであった――。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
シークレット出品が始まり、今回は二つの謎の卵を巡るオークションをお届けしました。
正体不明だからこそ価値を見抜ける者だけが動く──そんな駆け引きを楽しんでいただけたなら嬉しいです。
次回は、シークレット出品の武器がいよいよ登場します。
ぜひ、次回もお楽しみください。
最後になりますが、ブックマークや評価、ご感想をいただけますと、今後の執筆の励みになります。
これからも『VRMMOでスローライフするつもりがなぜかソロ最強プレイヤー?』をよろしくお願いいたします。




