EPISODE.134話〘四精霊の樹木と憩いの場所〙
翌日――。
俺たちはいつも通り会社で仕事をこなしていた。
今日で、一ヶ月間続いたプロジェクトも終了となる。
午後からの業務を再開しようとした、その時だった。
突然、専務が部署へ姿を現したことで、社内は一気にざわつく。
[専務、どうしてこちらに……?]
[急に来て済まないね。実は、明日社長がお見えになる。その報告だけ伝えに来たんだよ]
その言葉に、部署内の空気が一瞬で張り詰めた。
さらに秘書が前へ出て、東条部長へ書類を手渡す。
[東条部長、こちらをお渡し致します。後ほど目を通して下さい]
[用件はそれだけだ。急に来て申し訳ない。それでは失礼するよ]
専務と秘書は、そのまま部署を後にした。
俺は何気なく、秘書から渡された書類へ視線を落とす。
だが、その内容を見た瞬間――思わず息を呑んだ。
……なんだよ、これ。
驚愕しながらも、なんとか表情を崩さず、俺は静かに書類をしまい込む。
そして何事もなかったかのように、再び仕事へ戻った。
やがて業務終了の時間となり、社員たちは次々と退社していく。
俺も定時で帰宅し、夕食と入浴を済ませた後、ログインした。
すると、ほぼ同じタイミングでリョウもログインしてくる。
[リョウも今来たところか]
[トレンもっすか……って、え!? ちょっと待って下さいっす! トレン、その後ろ……!]
[ん? 後ろがどうした……って、え!?]
[[ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?]]
俺たちが振り返った先には、巨大な樹木がそびえ立っていた。
『四精霊の樹木』――。
苗を植えてから、まだ一週間。
リアル時間で言えば、わずか三日ほどしか経っていない。
それにもかかわらず、樹木は既に五メートル近くまで成長していた。
しかも、その大樹の上には――。
エアネス、ヴィーシュ、ペルナギ、レイディア、セフィラ、ナイトディラン、ヴェイルガー、サクメ、ニーナシュン、シドレアたちが、楽しそうに集まっていた。
[エアネス……これはどういう事なんだ? 急激に成長してるんだけど]
すると、エアネスが優しく微笑む。
[ふふっ。私たちが毎日きちんとお世話していましたからね。『四精霊の樹木』も嬉しかったのでしょう]
[なるほどな……これは、まだまだ成長しそうだな]
[そうっすね。こんなに嬉しそうな従魔たち、初めて見たっすよ]
確かに、その通りだった。
『四精霊の樹木』の周囲には、不思議と穏やかな空気が流れている。
まるで、精霊たちの憩いの場のようだった。
従魔たちにとっても、特別な場所になっているのだろう。
……なら、今は好きにさせてやるのが一番か。
俺とリョウはホームでゆっくりとくつろぎながら、楽しそうにはしゃぐ従魔たちの姿を眺めていた。
それは――束の間の平和な時間だった。
――しかし。
この時の俺たちは、これからホームへ訪れる“予期せぬ来訪者”の存在を、まだ知らないのである――。
『四精霊の樹木』の話は、今後のEPISODEでも再登場します。
今回のストーリーはここまでです。
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