夜も更けて。
「マリアったらずいぶんとお顔がにやけてるのね。何か良いことあったの?」
修道院のキッチンで椅子に腰掛けているわたしに、カリナがそう覗き込むようにして言う。
ってそんなににやけた顔、してるの? わたし。
まあマクシミリアンに会えて嬉しかったのはほんとう。
このまま彼と好き同士になれるならほんとうに幸せなのだろう。でも。
今のわたしは本当のわたしじゃない。
特にマクシミリアンがマリアと呼んだあの姿はラギレスのうつしみ。本当のわたしじゃ、ないのだもの。
——そうか? 俺にはどっちもお前にしか見えないけどな。
何言ってるのよノワール。あなただってラギレスを探してるんでしょう? わたしじゃない、ラギレスを。
——まあそうではあるけどな。俺が取り戻したいのは遥香ねえさんのラギレスだ。元の世界に居たミーシャラギレスでも無ければ大元に鎮座する神様でもない。等身大の遥香姉さん。そのラギレスだから。
だから。わたしは違うもん。
——ん? 俺の遥香姉さんと一緒でお前はクローディアの意識を持ったラギレスだろ? 今言ったろ? ミーシャラギレスや神様ラギレス、ラギレスはいっぱい居るんだよ。確かにお前は遥香姉さんじゃないかもしれない。でもラギレスなのには変わりはないのさ。
はう。それって……。
——お前はお前さ。自信持てば良いよ。ラギレスのマトリクスだってお前だよ。なんにも変わっちゃ居ないから。
ああ。
凝り固まっていたものが溶けるような。
そんな気がした。
「きっと恋ね。マリアは恋をしているんだわ」
顔がかーっと赤くなるのがわかる。
もう喉のあたりから火照って、熱い。
「もう、カリナったら。おませさんなんだから」
わたしは恥ずかしいのを誤魔化してそう言ったのだけど。
「ふーん。でも、マリアはあたしより幼いかもね」
そう舌を出してカリナ。
「さあそろそろ寝ましょう。もう夜も遅いわ」
マリーベルさんにそう追い立てられ寝屋に戻るわたしたち。
「その恋、うまくいくと良いね」
そうウインクしておやすみって言うカリナ。
ほんと、彼女の方がわたしより精神的に年上のような気がするよ。ありがとうね。カリナ。




