主人公。
マクシミリアンに優しく声をかけて貰えたのはすごく嬉しかった。
でも。
反面、それが本来のクローディアでは無くラギレスのマトリクスである今のわたし、マリアである事に嫉妬している自分が居た。
自分で自分に嫉妬? そんなのはおかしいって思う気持ちもあるのに、抑えられない。
それに。
わたしは思い出していた。
マリア=クエストでのマクシミリアンルートで主人公が王子であるマクシミリアンに最初に出会うシーン。
そのスチルを。
美しい薔薇園。聖女修行に疲れた主人公がそこで休憩している時に偶然現れた王子様。
そんな薔薇の王子様に一目で恋に落ちる主人公。
それがマクシミリアンルートの始まり。そんなシチュエーション。
まさに今、そのままのシーンが目の前にあったのだ。
そして。
「そう。聖女候補なの。頑張ってね。マリア」
って、マクシミリアンが言うのだ。その優しい声で。
ああ、なんで。
なんで今まで忘れていたんだろう。
マリア=クエストは最終的に聖女マリアの称号を得てエンディングだってことは覚えていたけど、そのデフォルトネームがやっぱりマリアだったって事。
わたしはトールって名前をつけてたし基本的にゲームに中では自由に自分の名前をつける事ができたけど、それでも名前をつけないではじめた人用のデフォルトが、「マリア」だったって事を。
今のわたしは、このゲームの中の主人公そのものであるって事? なんだろうか?
そんなの。信じられない。
それに。
ここは現実だ。ゲームなんかじゃない。それは実感としてわかる。
確かに、此処ではゲームの中の状況と同じような事が起こる。わたしの名前がクローディアだったのそうだ。マクシミリアン事だってマリアンヌの事だって、ゲームの中とおんなじ。
でも、違う。
もし今のわたしが主人公だったとしたら、わたしをいじめるクローディアは居ない。
それだけのこと? って思われるかもだけど、それだけで充分だ。
クローディアが居なければマクシミリアンルートに障害なんてほぼ無いもの。
もちろん身分差はあるし平民のマリアが王子様と結ばれるなんて難しいのはわかってる、けど。
と、ここまで考えて気がついた。
ううん。障害が無いと王子様と結ばれるエンディングにさえ辿り着かない。
クローディアがマリアをいじめるからこそマクシミリアンの庇護欲が刺激されハッピーエンドになるんじゃなかったっけ?
だとしたら……。
って、わたしは一体何を考えてるんだろう。
あわよくばこのままマクシミリアンと結ばれるエンディングを迎えたいだなんて、そんな馬鹿なこと考えるなんて。
頭の中が混乱して。思いっきりかぶりを振って。
わたしは宮殿をあとにした。
もう今日は帰ってお布団に潜ってそのまま寝ちゃおう。うん。そうしよう。




