マクシミリアン。
はう!
マクシミリアン殿下!?
お付きの侍従を二人従えて目の前に立つのは、王子マクシミリアンその人だった。
記憶が蘇った当時はマクシミリアンが怖くてしょうがなかった。
悪役令嬢として処刑される未来、それ悲しくて。
そして。あんなにも大好きだったマクシミリアンに嫌われる未来が来ることが怖くてどうしようもなかったのだ。
どうせ彼はマリアンヌしか見ていない。
そんな風にも思っていた。
ううん。マリアンヌならまだ諦めもついた。そして、彼女が別に好きな人が居ると知ってからは。
もしかしたらわたしにもチャンスがあるんじゃ無いのか?
好きになって貰えるかも知れない、そんな淡い期待もあった、けれど。
でも。
彼が好きになるのはマリアンヌかもしくはマリアクエストの主人公。平民出身の聖女候補。
そして、わたしクローディアはそんなマリア《主人公》に嫉妬して意地悪の限りを尽くし、結果マクシミリアンから憎まれ処刑される。
そういう筋書きだったはずで……。
え?
今、わたし、なんて思った?
主人公の名前って。
お付きの侍従の一人。アークレフトがマクシミリアンの耳元で囁いた。
「殿下、人違いです。彼女はマリアンヌ嬢ではありません」
はう。うん。流石にそんな事マクシミリアンにも見てわかるだろう。わたしの見た目がいくら今現在マリアンヌに似てると言っても、ほんとあくまで似てる程度だ。身長だって違うし全体的に雰囲気だって違うと思う。
「ああ。言われなくともわかる」
マクシミリアンもそう返事をして。そして、改めてこちらに向き直った。
「失礼。お嬢さん、お名前は?」
はう!
「マリア、です。マクシミリアン殿下」
わたしはなんとかそれだけ答えるととにかくここから離れたい、そう願って。
「このお嬢さんは最近魔道士の塔に通い出した聖女候補の方ですね。事務方よりもそう報告があがっております」
はう。アークレフト? そこまで把握されてるの?
「そう。聖女候補なの。頑張ってね。マリア」
マクシミリアンはそうさりげなくマリア呼びでわたしの肩を叩く。
あうあうあう。
どうして!?
どうして!?
どうしてマクシミリアンはこんなに優しいの?
ああ。
わたしは顔を真っ赤にしてそのまま温室の入り口目掛けて走った。
不敬だとかどうだとかそんなふうに思われたらどうしようとかそんな事に構ってられなかった。
ただただこれ以上マクシミリアンのそばにいる事に耐えられなくて。逃げ出したのだ。
背後から、マリア、と呼ぶマクシミリアンの声が聞こえた気がした。




