薔薇園。
もうすっかりレティーナ様の不思議さにあてられてふらふらと歩く帰り道。
王宮のこの長い渡り廊下もすっかりと慣れたなぁ。そんな事をおもいながらとぼとぼと進む。
クローディア時代はあまり滅多に魔道士の塔には近寄ることも無かったから、この外苑の路もあまり来なかった。
色とりどりの庭園が並ぶ外苑は興味深いけどまあ普通に自邸にも似たような庭は設られてたし、そこまで物珍しくも感じなかったのよね。
まあもちろん? 転生前の世界だったらこんな綺麗な庭園は格好のデートスポットだったろうし若い女の子だったら誰でも彼氏に連れてって貰うと嬉しいベスト5に入るに違いないそんなお庭が並んでる。特にそこの薔薇園はそんな中でも多種多様な薔薇が溢れる温室になっていてすごく綺麗だって噂だった。って、マリアンヌがおすすめだって話してたんだけどね?
それでもわたしは……。前世でさえもそんなうわついた経験はほぼゼロで、そもそも男性とお付き合いした経験だってないくらいで。
マリアンヌのマリカのおすすめだからってそうそううわついて薔薇園に赴けるほど少女趣味でもないはずだったんだけど。
うーん。今日は。たまにはちょこっとくらいこういうのも良いかもね?
そんな気分で薔薇園に足を向けたのだった。
温室の扉を開け中に入るとプンと芳しい薔薇の薫り。
ちょっとむせそうになって。でもなんとか踏みとどまってそのまま奥に進んでいった。
奥まで行くと真っ白なロココ調のガーデンテーブルのセットを発見。ここでちょっと休んでいくかな、と、猫足のかわいい白いチェアに腰掛ける。
目の前には赤色の薔薇。そしてちょっと薄いピンクの花びらのものや黄色い薔薇にオレンジ色、真っピンクに白い薔薇まで。ほんと色とりどりの薔薇が咲き誇る
青い薔薇は……、ないのかな?
紫がかった薔薇ならあるけど真っ青の薔薇は見当たらない。まあそういう物なのかなと思いつつ目を閉じる。
やっぱりね。綺麗なお花を眺めるのも良いけどこうして瞳を閉じて集中すると薔薇の薫りが身体中に染み渡ってくるような気もする。
やっぱりたまにはこういうのもいいなぁ。そんな風に思って。
時間にしたらほんの一刻。
なんだかリッチな気分を味わって。そろそろ帰ろうかなって席を立った時だった。
ガランと温室の扉の開く音がしたと思いそちらを見ると。
数人の人影が見える。どうしよう知ってる人だと面倒かなとか思いつつ、振り返るけど隠れることのできるところは見つからず、で。
諦めたわたしはそのまま通路の隅っこに立ってやり過ごそうとした、のだけど。
顔を伏せて隅に立つわたしに気がついたその人が、
「マリアンヌ……?」
と呟くのが聞こえた。




