脱出。
「そうか」
そう言うとさっと立ち上がるノワール。
先ほどまであった椅子がすっと消える。たぶん収納魔法かな。いろいろとそういう技を使えるんだ流石にね。
「まあ聞きたいことは聞いた。帰るぞマリア」
「え? ちょっと待ってよノワ。わたしたちにはまだお仕事が残ってるんだよ?」
「ああそうだよ? よくわからんそこの兄さん。あたしらにはここの探索って仕事が残ってるんだ。まだ何にも手にも入れてないこんな状況でおめおめ帰れないぜ?」
後ろからアジャンさんもそう言う。
「あ、でも……」
はう? マリカ?
「ちょっと良くない予感」
え?
《帰って貰えるなら助かりますね。ここの存在が今の人々に知れ渡るのは時期尚早でしょうから》
そうマハロが喋ったその瞬間、悪寒が走る。周囲の空間が変わった? そんな。
《感じますか? 流石ですね。今このエデンを建物ごと次元を遷移させました。まだ入り口は現実世界と繋いでありますから今のうちに外に出てくださいな》
はう!
「あーん、もう、しょうがないなぁ。あたしまだ聞きたいことはあったけどこのままここに居て出られなくなっちゃうのも面白くないし」
マリカはちょっと周りを見渡すと自分の周囲に光の輪を顕現させた。
「みんな、この輪に掴まって。このまま入り口まで空間転移《跳ぶ》から」
「ああ、俺はいいや」
ノワはそれだけ言うとさっと姿を消した。っていうかわたしの魂に潜り込んできた。
っていうかマリカ、これだけの人数を同時に運べるの?
「大丈夫なの? マリカ?」
「うーん。二人までならなんとか連れて跳んだことあるけどこの人数はちょっと試してみなきゃわかんないかな」
「あ、あたしはいい。そこの昇降機を使って上まで上がる」「はう、アタクシも」「俺はアジャン姉さんについてくな」
「うんっもう。マリア姉様がそんなこと言うからみんな不安がっちゃったじゃない!」
「だって、マリカが不安になるような事言うからでしょー」
《急いでくださいね。入り口まで閉じたらもうそう簡単に繋ぎ直すことはできません。ここで数百年過ごす気なら別ですが》
「流石にそんなのはまっぴらだ。さあ行くよ!」
アジャンさんの掛け声に入り口隣にあった昇降機の扉を目指すみんな。
「もう。跳んだほうが楽なのに!」
そう言いつつ自分だけ空間転移するのも気がひけるのか一緒に走り出すマリカ。わたしもみんなの後に続いた。
わたしは最後に昇降機に飛び乗ると最上階のボタンを押す。これで最初の部屋まで行けるはず。
最上階のフロアまで上がりそこから階段を登って入り口を目指す。
なんとか入り口の外に出たところでそれまで入り口だった所がただの岩盤に変わり果てている事に気がついた。
間一髪、なのか、見計らって、なのかはわからないけど、マハロの手によってエデンの施設はこの世界の通常空間から切り離されたのは間違いなかった。




