次元の遷移。
記憶の、記録の中に潜ると段々と見えてくるイメージ。
ああ。
あれはラギレスの戦闘データ?
メーティスってほんとデータの保管庫なんだな。そうちょっと新鮮な感慨もあったけど。
今まで見てた魔法術式のライブラリだけではなくてこうした戦闘の記録までイメージデータとして残ってるなんてほんと思わなかった。
これは。ラギレスの目線?
目の前の竜に向かって左手を掲げる。黒いガントレットの甲に開いた射出孔から飛び出した黒い塊。虫のように飛び回るそれがラギレスの意思にコントロールされ、目標に向かって飛ぶ。
あれは。アニメなんかでよくあったような、誘導兵器、なのかな?
ロボットアニメによく出てくるようなそんな黒い虫? 礫? が、竜を追いかけて跳ぶ。
次元の壁など無いかのように振る舞うその漆黒の礫は、竜に当たるまで追いかけ跳び、そしてその巨体に傷をつけた。
陽炎のように別の次元に逃げる竜に対して、追いかけるように転移しそして突撃するその礫たち。
これは、魔ギアの権能? 次元の転移をする武器だなんて。
こうして知ったとしてもどうしたら……。
「無理無理ムリ! あんな戦い方、できっこないよ!」
雷撃を避けつつノワールにそう叫んで。
——答え、見つけたの?
黒猫のノワールもわたしの周囲を飛び回りながらそうこちらに意識を飛ばしてきた。
「次元を転移? 遷移? そんなことしながら自動追尾する誘導兵器だなんて、いくらなんでも簡単に創れないでしょー!」
——ああ、そういう事。だったらさ、君自身が次元を遷移すればいいんじゃない?
はう!?
——周囲にいるギア、アウラを集めて!
って、どうやって!
——四大元素の風のアウラ。空間の位相、位置エネルギーに干渉する権能を持つアウラを集めるだけ集めるんだよ!
そんな!
「そんな簡単に言わないでよ!」
——出来るはずさ。君ならね。ラギレスのカケラを持つ君なら、アウラと心を通じる事もできるはず!
もう! 言いたいだけ言ってくれるよね!
でも。
雷撃が飛び交うこの場所で、なんとかするためには出来ることをやるしかないわけで。
もうヤケだ!
ギアと心を通じるだなんてできるかどうかわからないけど念じてみるしかない、か。
目を瞑り、意識を集中する。
さっきもそうだったんだけど身体の操作はメーティスの演算に任せて周囲の脅威からは自動で回避させて。
自分の中に潜るように心をレイスの中に滑らせる。
考えるんじゃなくて感じる、そんな昔聞いた映画のセリフじゃないけど、たぶん今はそう、考えちゃだめだ。
レイスの奥のゲートから自分の心を外に向かって解き放つように。そんなイメージで。
心をこの空間そのものに拡散する。
円を描く様に拡散したわたしの心に響いてくる何か、そんな何かを感じようと。
意識を深層に潜り込ませた。




