ジラーフ。
黄色い砂嵐が吹き荒れ、その合間から稲妻が襲う。
眼前に出現した大きな盾に隠れるように集まったわたしたち。
「まさかあんなものまで出てくるとはな」
盾を維持しながらそう吐き捨てるアジャンさん。
「これは流石に撤退した方がいいのカシラ?」
アマリエが力なくそう呟く。
「あれは、厄災竜だろう? この人数じゃ無理があるな」
いつも強気なジルでさえ、相手があんな巨大な化け物では諦め顔だ。
「撤退って言っても、逃げ場なんか……」
そう。此処が何処だかもわからないこんな状況じゃぁ逃げるにも何処に逃げたらいいのか、だ。
「あたしが行く、囮になるからそのうちに皆は逃げろ!」
「アジャンさん! ダメ! それならわたしが行く! みんなを守れるのはアジャンさんの盾しかないもの!」
「まて! マリア!」
制止するアジャンさんを振り切って黄色い嵐の中に飛び出した。
——もう、むちゃするんだから。
わたしに届こうとする雷撃を防いでくれてる?
ノワールがわたしの前に出て結界をはってくれた。
「ありがとう、ノワール」
——どういたしまして。これくらいは役に立つよ?
ふふ。ほんとありがとう。
頼ってばかりも居られない。わたしはメーティスの権能を解放。ジラーフに通じそうな魔法術式を検索してみる。
ファイアランス。アイスニードル。その辺りを放ってみても、うん、ダメ。なまじっかな魔法は表皮で弾かれる。あれの表皮はそれ自体が次元フィールドみたいなもの、か。
全く届いていない。
物理攻撃も一緒だった。アジャンさんの創造魔法、ニードルアタックも試したけどそれも届かない。
まるでそこに居るのにそこにはいないかのような、陽炎のような存在を相手にしているかのようで。こちらの攻撃は全て無効化された。
それでも、大きな腕を振り回すジラーフ。そこから発した黄色い嵐、風のヤイバがわたしたちを襲う。
かろうじて防ぐも腕や足に傷を負ったわたし。
はう。マトリクスが無かったら切り落とされてた……。
自身を覆うラギレスのマトリクスの防御性能に感謝し、そのまま癒しの魔法を使いつつ風のヤイバを回避する。
でも。ずるい! こっちの攻撃は当たらないのに向こうの攻撃は容赦なく降り注いでくる!
——あれは、次元が違うからね。文字通りこの空間とは別の次元に存在してる。
じゃぁどうして!? 向こうからはこちらに干渉できるって事!?
——ああ。君が紙に書かれた絵に干渉が出来るよう、高次の次元にいるあの竜もこちらに干渉ができるってことさ。
黒猫の姿のノワールはわたしの周囲を飛び回りながら、雷撃を防いでくれる。時々黒い稲妻を発して牽制してくれてるけどそれも向こうまで届いていない。
はう、じゃぁ、わたしたちに完全に勝ち目が無いって、そう言う事?
——でも、ないさ。ラギレスなら、こんな次元の壁通り抜け攻撃出来たしね。
そんな! わたしはラギレスじゃ、無いもの!
——ほんとに? 本気でそう思う?
あぁ、もう!
いいわよ!
メーティスの記憶を探ればいいんでしょ!?
そこにヒントがあるかもって、そう言いたいんでしょ!
——あは。分かればいいのさ。じゃぁ早速頑張って。この状態じゃそう長くは持たないよ。
激しさを増す黄色い稲妻。
確かにこのままじゃジリ貧だ。
わたしは防御をノワールに任せて意識をメーティスの中に潜らせた。




