厄災竜。
次の階へ降りて扉をあける。
真っ暗な空間。あかりのない部屋かと思い「ライトの魔法を使いましょうか?」と聞くわたしに、
「待って。敵がいた場合に格好の標的になる。暗視魔法は使える?」
と、そう聞いてくるアジャンさん。
暗視魔法、暗闇での視界を確保するそんな魔法。ライブラリで調べてみるとたしかにそんな名前の魔法術式を見つけた。
「ありました! これなら」
そう術式を展開。わたしの前で魔法陣が広がった。
その瞬間。見えている景色が変わる。
そこは。
遥か彼方まで続く広大な空間。地面は砂? まるで砂漠のようなそんな場所。
入ってきた扉までいつの間にか消え、ひたすら広い異空間に紛れ込んだかのような。
「嘘! ここ、外、ですか?」
思わずそう呟いてた。
「うーん。転移させられたようには思えなかったんデスけどね……」
アマリエがそう言う。
確かに。その場から空間を移動させられたようなそんな気はしなかった。
でも、この広さはありえない。
階段一つ降りてきただけのフロアのはず。
こんな、まる外のような、そんな場所ってありえない!
周囲には生き物の姿は無い。戦闘用のオート・マタも見当たらない。
暗視魔法を解除して。だんだんと目が慣れてきたところで空を見上げると、綺麗な星空がみえてきた。
綺麗、だけど、なんか恐ろしい。
吸い込まれるような空。
なんだか空に落ちてしまいそうに錯覚する。
しばらく無言で立ち尽くすわたしたち。
そんな静寂を破ったのはジルだった。
「ちくしょう! ここまでか?」
確かに。
ここが何処だかわからないけれど、わたしたちは強制排除されたのか?
そんな風に感じていた。
「しかし、此処が何処だかを確認しなくてはどうしようもないな」
「ちょっとおかしいんデス。ワタクシの探知魔法だと此処はそんなに広い場所に感じない。ねえリーザさん、どう思う?」
「ああ。風も普通じゃない。肌にあたる感触が此処は普通の外では無い感じがするけれど……」
って、アジャンさんったら野生の勘? 風の感触っそんなのわかるの?
っていうかこのリーザ・アジャンさん、わたしたちのリーダーは、ほんと人間離れしてないかな。そんなことを考えてたわたしにアジャンさん、
「なあアリア。ちょっと空に火球を打ち上げてみてくれないか?」
と、そう言った。
「わかりました」
と空に向かってファイアボールを三個ほど連続で打ち上げる。
「じゃぁワタクシも」
アマリエも続きで三発ファイアボールを飛ばす。
これが見せかけの空ならどこかで当たるだろう。たぶんそう思ってその火球の軌跡を目で追って。
しかし。
火球はどこにも当たることなく空に消えて行った。
「どうも妙だな」
そう、まだ納得できないアジャンさんが呟いたのと同時。
ファイアボールが飛んでいった方角の空が割れた。
黄色い炎が空の割れ目から吹き出して。
そこから、黄金に燃えるドラゴンが顔を覗かせた。
巨大なその顔がぐわっと牙を剥き。こちらを睨む。
「黄竜 ジラーフ……」
そう、ジルが伝説の厄災竜の名を呼んだ。




