メーティスの権能。
見えたのはタコの足のような触手。うねうねと気持ちが悪く動くそれだった。
「大丈夫? マリア。咄嗟にエアーシールドを打ち出したけど」
「ありがとうございます助かりました。でも、あれ、なんでしょう?」
魔獣の気配はしなかった。魔力紋も感じられなくて。っていうことはあれは生物? 本物の化け物?
「サーチしてみたけど扉の向こうには魔力は感じないわ」
と、アマリエ。
「じゃぁ、どうする? 倒すしかないんじゃない?」
「ここはジルの言う通りか。他の扉の向こうにもあんな化け物が巣食ってないとも限らないし、一つ一つ開けて退治していくしかなさそうだ」
「にゃぁ」
はう、いつのまにかわたしのレイスから出てきたドラこ? 足元にすり寄って。
「マリアの事はドラこに任せるよ。守ってくれな?」
そうドラこの頭を撫でるアジャンさん。
「じゃぁ。腰を抜かしてるところ悪いけどマリア、合図したらもう一回その扉を開けて。開けたら壁伝いに後退ね。アマリエは最大魔法を射出できるよう準備。火はやめよう。空気が無くなっても困るから出来たら物理攻撃が可能な魔法ね。あたしも同時にニードルアタックぶちかますから、第一射が済んだらジル、ツッ込んで!」
「オーケー」
「了解デス」
「はい」
わたしたちはそれぞれに準備をして、アマリエの詠唱が終わったタイミングでアジャンさんが「ゴー」と合図。
わたしも今度はもたもたしないでさっと扉を開けたら後退し、その扉に向けてアマリエのエアーシュートと創造魔法で創られた無数の鉄のニードルが射出された。
声? 断末魔の叫び? ギャンオーとそんな叫び声のようなものが聞こえたかと思うと、扉のあった場所からうねうねと触手が這い出てきた。
やっぱりあれは、タコ? それともイカ? うねうねとした動きで這い出てくるその怪物。
ダメージはあるんだろうその動きはすこしぎこちなかったけれど、それでもまだ生きている!
ジルが剣で切り裂くもその触手は次から次へと手を替え伸ばし、わたしたちに迫る!
火を使うなと言われたせいかアマリエの魔法も冴えない。風魔法や氷魔法ではもう一つダメージを与えられないのか。
だんだんと増える触手。後退するわたし達。タコの怪物はその身体までも部屋の中に入りきり、わたしたちは反対側の壁にまで追い詰められた。
まずいよ。このままじゃ。
——マリア! 変身だ!
はう? ドラこの方からするノワールの声?
——魔・ギアの権能を解放するんだよ!
うー。しょうがない、か。
迷っててもジリ貧だ。なら。
「シルヴァ・メーティス!」
わたしは自身のレイスから魔ギアを取り出して額に装着した。
ふわんと周囲に広がる金色の光。それがわたしの身体を包んだかとおもうと、皮膚の上に膜が被ったような感触がして。
どう言う理屈なのかわからないけどわたしの身体がラギレスのそれに変化する。
髪はふわふわなウエーブのかかった金色の髪。肌の色も若干薄くなったような気がする。
身体のサイズも小さくなった。服が少しぶかぶかする。
でも。
たぶんこの身体になった事で運動能力は向上してる? 身体が軽い!
「「「マリア!」」」
みなの視線がきつい。
でも。
わたしはメーティスの中を検索。
ギア、アークとバアルの権能を使う魔術式を見つけた。
そして。魔ギア、シルヴァ・メーティスの権能を解放!
マナのコントロールに特化したその権能を使用して先程検索した魔法術式を展開。
怪物に向かって真っ直ぐに腕を伸ばす!
その指の先に二重の魔法陣が現れて。
「アーク・レイ!」
指先から五本のレーザー光が放たれて、その怪物の触手を切断していった。




