自分が自分じゃなくなるのは怖い。
マリカの方の講義はわりと今までに教わった事も多かった。
まず、この世界っていうかこの宇宙、空間がマナによって出来た泡のようなものだって事。
マナっていうのは世界の外にある、神様の氣であるって事。
マナで満たされた神様の氣のプール。その中に浮かぶ無数の泡。
産まれては消え、消えてはまた生まれる。そんな泡一つ一つがこの世界、宇宙、だってこと。
ハクアの言ってたブレーン宇宙っていうのもこういう事なのかなって。そんな風にも思う。
まあね? そうは聞いてもなかなか本当の意味で理解なんてできてないけど。
それでもね。
わたしたちの魂もまた宇宙と一緒の泡だっていう話は興味深い。
だったらさ、魂の中にも宇宙があるの? 世界があるの? そんな風にも考えられる。
例えばわたしが想像した世界がどこかでほんとに存在してたりしたら、嬉しいかも。
そんな、ね。
それからのわたしはやっぱり冒険者の端くれとしてアジャンさんのパーティーで活動を続けてた。
まあでも? ラギレスのマトリクスは内緒にしたけどね?
シルヴァ・メーティスによって強化されたマナのコントロール。そして無限に検索できる魔法術式の数々。大賢者としてのラギレス様の魔法の知識がこのメーティスには詰まってて、わたしでも使えるようになってたって、それってなんてチートなの?
ちょっと反則すぎるし持て余しそうだよそんなチート。
ふつうに冒険者をする分には要らないっていうか、かといって身に危険が及ぶ時には助かるかもっていうかそんな。
だいたいさ、さすがにチート過ぎる能力を持ってると逆に身を滅ぼしそう。
ぜったいに良いことないもん。そんなのね。
過ぎたるはなお及ばざるが如し。
身の丈に合ってない能力はかえって身を滅ぼす原因になりかねない。昔の偉い人もそう言ってたよね?
に、しても。
——だからマリアはラギレスのカケラを探すべきだ。
と、こんなことを言うシルヴァ。
なんでよ?
ってわたしが返してもはっきりとした答えを言わない。
そもそもそのラギレスのカケラって何なのよ。レイスのカケラ? だとしたら他にも同じ魂を持って転生してるだろう人を探すってこと?
——まずは、ラギレスの魔・ギアを集める、とか。
うーん。
そりゃあね? 魔ギアの方から寄ってきてくれるならともかくどこにあるのかもわから無い魔ギアを探すって、それってちょっと無謀じゃない?
——でも、マリア、自分の事を知りたいんだろ? だったらラギレスの事をもっと知ったらいいんだよ。そのためにもまず魔・ギアを集めなきゃ。
もう、シルヴァ。そもそもわたしはわたしだよ? ラギレスじゃないもの。彼女がすごい人だったっていうのはわかるよ。ほんと女神様だったかもしれないってのもね? だけど、わたしはマリア。クローディアのマリアだもの。それ以上でもそれ以下でも無いし、それに、ラギレスになっちゃうのは怖い。
わたしは自分が自分で無くなって、ラギレス様になっちゃうのは怖い、よ……。




