ラギレス。
いきなり怒りだしたマリカとそれを宥めるように返すハクアとの会話は収拾がつかず、「ではこの続きはまたにしましょう」と席を立つハクア。
結局そのあとはマリカによるこの世界の仕組みの講義を聞いて終わった。
結局、肝心なことが聞けなかった気がする。そう思いつつ魔道士の塔をあとにしたわたし。
疑問はいっぱい残ってる。
そもそもわたし自身が何者なのか、その疑問には答えが無かったし。
それにマリカも。
彼女の前世? だという本城茉莉花のそのまた前の前世であるらしいアリシアが二十世紀末に生まれてるって言うことは、彼女は同年代に二回人生を歩んでいることになるよね?
わたしにしたってそう。ここが未来の地球なら、わたしは異世界に転生したのでは無くって普通に未来に生まれ変わっただけになる。でもそうしたらどうしてその未来のクローディアを過去の世界で知ってたの?
ゲームのお話としてその中の登場人物でしか無いのなら、どうしてそんなクローディアに転生しなくちゃなんないの?
あー、もう。
わからないことだらけだ。
わたしは頭を振って、もう何もかもリセットして考え直そうとそんな気持ちで心の中のもやもやを振り払って、王宮の大門から外に出た。
頭を振った時にふわふわと視界に入る金色の綿毛のようなその髪に、自分がラギレスの容姿のままだったことに今更ながら気がついた。
そうだよ。このラギレスの事だってそう。
ハクアはわたしをラギレスの魂を受け継いでいると断言する。そして、ラギレスは女神であるのだと、も。
そう。
女神って何よ!
人間じゃ無いって事?
——そういうことになるよな。
ちょっと待ってよシルヴァまで。人間じゃ無かったらなんだっていうのよ!
——だから、女神なんだろう? まあ今の主は人間なんだろうな。今のところは。でも前の主は確かに普通の人間とは少し違った。なんと言っても『死』という概念が無かったからな。彼女には。
はい?
死ななかったってこと?
——まあ、そういうこと。
死ななかったのならなんであんたとの主従関係が解消されたのよ! そもそもおかしいじゃ無い! 今でも生きてるってこと? ラギレス様は!
——まあ、そう怒鳴るなよ。彼女は確かに死ななかった。しかし、この世界からは消えたんだよ。俺たちを残して。
はう。
——消えた、いいや、散った、と言った方が正確か。その一部、カケラを引き継いでここに現れたのがお前と、そしてあのマリカだってことなんじゃないか? あれの中にある魔ギア達がそれを証明してる。
って、それってわたしとマリカが元は一つの魂だったって事!?
——まあ、そういう事になるよね?
ああ。
なんだか嫌だ。
そんなの。わたしがわたしであるってことが否定されるような気がして。なんだか嫌。




