大魔導師イクシア。
はっと振り向いたわたし。その白銀の髪の彼と目があって。
吸い込まれるようなその黒く漆黒な瞳に、しばらく言葉も出ずに立ち尽くした。
「ああ、やはり。ラギレス様」
顔に笑みは浮かべているけれどどことなく作り物めいたその表情で見つめられ、わたしは……。
ぶるっと一瞬震え、そしてその彼を見つめ直した。
「あなた、セリーヌ様をご存知なのですか?」
もう何百年? 具体的な年数はわからないけどとにかくとんでもなく昔にいた人のはず。セリーヌ・マギレイス・ラギレス様。
こんな若そうな人が知るわけは無い、よね?
「ああ、その魔・ギアか。《知恵のサークレット》シルヴァ・メーティス。ラギレス様の知識がつまったそのシルヴァ。貴女もまた、女神なのだな……」
聞こえるか聞こえないかギリギリのそんな囁くような声でそんな事を言う彼。って、シルヴァの事も知ってるって、この人もしかして……。
「貴方は……?」
「ああ、女神よ。わたくしはハクア・マウアー・イクシア。世間では大魔導師と呼ばれております」
はう!?
この人がイクシア様?
こんなにお若いのに!?
——だから、見た目通りの年齢ではないのだろうよ。
うん。そうだね。シルヴァ。
「はう。貴方がイクシア様……?」
「ええ。ラギレス様」
「あう、わたし、ラギレス様じゃ無いです。彼女のマトリクスのキオクを纏ってはいますが……」
「いえ、わかります。貴女の魂もまた、ラギレス様のそれを引き継いでいらっしゃると。まさかこうして再び貴女のお顔を拝めるとは思いませんでした。長生きはするものです……」
はうう。
もう。まるでわたしのことを女神か何かのように見立てて拝んでくるイクシア様。
違うって言っても聞いてくれないしどうしよう。
「ハクア様!」
え?
背後からマリアンヌの声。
振り向くとそこには魔道士の塔から出てこちらに走ってくるマリアンヌ、マリカの姿が。
まだ結構な距離があったのにそれをあっという間に走り抜け、
「ハクア様! 探しましたよ!」
そう少し息を切らし叫ぶようにいうマリカ。
「どうなさったのです? マリカ様」
「今日は貴方に紹介したい人がいたんです。って、前にお話ししてましたよね?」
「ああ、そうでしたか」
「もう。ハクア様ったら」
ちょっとプンと怒るマリカ。
「っていうかそろそろマリアも来る頃なんだけど……、って、え? 貴女、誰!?」
やっとこちらに気がついた彼女、わたしの顔を見て驚いて。
って、どうしよっか。
「ごめん、マリカ。わたし、マリア。この格好はちょっと訳があって……」
「え? ほんとにマリア? そうよね。魔力紋は一緒、かぁ」
上から下までゆっくりと視線を動かした後。
「って、マリアンヌの姿に似てるけど、それよりも華奢。ちょっとびっくりだよ?」
そうわたしの顔を見て微笑んだ。




