ラギレスのカケラ。
この世界には伝説になった大賢者ラギレス様、千年以上は生きていると噂される大魔導師イクシア様。
そして、いったいお幾つなのか。いつまでもお若いままの大聖女レティーナ様と、そんな伝説級の人物が三人いる。
っていうかそもそもラギレス様は何度か亡くなったとか生きてたとかそんな波乱万丈な物語が巷に溢れてて。
結局ほんとはおいくつまで生きてたのかとかそんな話はまったく謎で。
そういえば、で、思い出したけど。
ヴァインシュタインって確か昔の公爵家。
うちのご先祖様もマリアンヌの所も今の王家も全部、ヴァインシュタイン系のはず。
っていう事はわたしにもラギレス様の血が流れてるって事、かな。
それはなんだか嬉しい。
に、しても。だ。
ラギレスのカケラってどういう事だろう?
☆☆☆☆☆
週に一度会いに行くはずのレティーナ様の所だったけど、結局今回は二週間ぶりとなった。
ギルドの用事があればそれを優先しなさいって言われてたし流石に今回みたいな長期になりそうな遠征依頼は他のメンバーだけで行かせるのは気が引けた。
まあそれもあってしばらくぶりになったわけだけど。
それはそれとしてもう一つ、わたしには魔道士の塔に行きにくい事情もあって。
魔道士の塔は王宮の中にある。
そう。王宮の中、なのだ。
っていう事は何? いつどこでマクシミリアンと出会すか分からないって事じゃない。
ほんとそれはちょっとまずい。
それ以外にもお父様だっている可能性もあるしお母様だっておじいさまだっていつどこでばったりと、って。
おじいさまなんかしょっちゅう王子宮に出入りしてるしお父様だって一応お仕事してるっぽいし、ね?
だから今日は変装することにした。
シルヴァ・メーティスをつけることで変身できる今の特殊事情を利用して、わたしはセリーヌのマトリクスを纏い、大きな帽子にメガネをかけて。
ふわふわの髪はポニーテールにしてみた。
あは。
これなら誰に会ったとしても平気。魔道士の塔の入り口で変身をとけばいいんだもん。
そんな風に思えばちょっと今回はいつもより気楽かな。ここに来るのも。
そんな感じに油断していたのが不味かった? いつもだったら用心しいしいなるべく誰とも会わないよう気をつけて歩いてたんだけど、今回はけっこう大胆に歩みを進めてたのが悪かったのか、わたしが歩いてる目の前に立ち止まりこちらを見ている人がいる。
——ふむ。あれはあきらかに主を待っているな。こちらから目を離すことがないぞ?
うーん。どうしよう? でも、なんだろう。っていうか白銀の髪? 珍しいよね?
——ああ。あれは見かけ通りの歳でも無いな。
うん。それになんだろう、とんでもない大きさのマナを感じる。これ、レティーナ様の時に匹敵する?
近づくにつれ感じるそのマナの、魂の大きさ。
それに。
なんだか目が離せない。
ゆっくりとその彼の横を素通りするわたしに聞こえるように、彼が、「ラギレス様……」と呟いた。
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