第二章 「胎動」 第二十三話 「剛力と言う男」
「天眼 風をみる」
第二章 胎動
第二十三話 「剛力と言う男」
正覚寺の門の前で立つ男、「剛力」は、ボサボサの頭を搔きながら、
先程より、大きな声で唸った
剛力「だれか、居らぬか~~、」
ちょうど、そこに 永光寺から玄海が帰って来た。
玄海「何用かな? わしは、この正覚寺の和尚、玄海じゃが・・・、」
後から声をかけられた、剛力は、ちょっと慌てた様子で・・、
剛力「これは、失礼した。 わしは「剛力」と言う者じゃが、
長崎で知りおうた「大日坊」様(長政の意)の使いで参った。
この書状が証じゃ、まずは読んでくれ」
そう言うと、懐から風呂敷に包んだ書状を、大事そうに
取り出すと、それを両手で玄海に差し出した。
玄海もその書状を両手で受け取り、差出人を確認すると、
「大日坊」とある。 間違いなく、「長政」の字であった。
玄海は、一年ぶりの長政からの便りに、緊張したが、
心を落ち着けて、中身を読んだ・・・。
「手紙」の内容は、 この男、剛力は、信頼しても
良い人物である事、
持たせた甕の中身は、太風子の
実から造り出した、「はぐれ村」の住人に効く、
「塗り薬」である事、そして、
その太風子の種と枝を持たせてある事、
などが書かれていた。
玄海「なるほど・・・、 剛力とか申したの、長い旅路、ご苦労でござった。
ささ、まずは、上がられよ、色々と話を聞かせて貰いたいからの・・・。」
剛力は、進められるまま、正覚寺の本堂に案内された。
玄海は、剛力の為に、「茶」を煎れると剛力にすすめた・・。
剛力「これは、ありがたい、遠慮なく頂くといたします」
重い荷物を背負い、汗だくで、喉が渇いていた剛力は、
すすめられた「茶」を「ゴクゴク」と飲み干した。
そこに、流れるように、二杯目の「茶」が注がれる。
今度は、少し熱めであった・・・。
剛力も、初めての場所で、緊張していたが、
この「茶」のおかげで、落ち着きを取り戻した。
玄海「剛力殿、貴殿が「大日坊」殿と知り合ったのは、どの様な、
いきさつなのかの?」
剛力「わしは、「長崎」の港で働いておりました。
船に荷を運びこむ仕事でありやす。
そん時のわしは、気性が荒く、腕っぷしにも、
自信がありやしたから、面白しろ~無いことがあれば、
すぐに、「喧嘩」となっていやした・・・。
そんなことじゃけん、仲間とは上手くいかず、
益々仕事も面白くのうなりやした・・・。
そんな時に、「大日坊」様に会うたので、ございやす。
「大日坊」様は、わしを見るなり、
「そんなことじゃ~いかん!」とお叱りになりやした。
わしは、腹が立ちやしたが、あの方の「目」を見た時に、
自分の「父」を思い出したのでありやす・・。
「父」と同じ「目」でありやした・・・。
お叱りになるのも、わしのこつを案じて、ほんにこつ、親身になって
「お叱り」して頂きやした。
そんこつが、わしには、痛い程、わかり申しやした・・・。
そして「大日坊」様は、こんなこつを言われやした。
「お主が、人の事を悪く思えば、その人も、お主を悪く思う、
人とは、そういうものじゃ、人とは、「己を映し出す鏡」の
ようなものじゃ」と・・・。
わしは、自分のこつを「見透かされた」ように思いやした・・・。
その後も、大日坊様には、色々なこつを話してもらいやした・・、
そのすべてが、わしには、当てはまるのでありやす
それからは、大日坊様の言われるとおりに、「仕事」をしておりやすと、
不思議に、「仲間」との話も弾み、仕事にもやりがいを持つように
なりやした。
暫くして、わしは、大日坊様に「旅」の理由を聞きやした。
何故? この長崎に来たのかと、そこで、この「太風子の事」
「不治の病の事」を聞いたのでありやす。
熱く語る、大日坊様を見て、わしは、是非、
このお方のお役に立ちたいと、思うようになりやした。
長崎には、南蛮のものが沢山入り込んできやす。
ある時、町の「青海楼」と言う、店の店主と大日坊様が、
港にお見えになりやした。
南蛮から着いた荷物の中に、この甕と「種」・「木の枝」が
ありやした。
それが、大日坊様が、熱く語っていた、「不治の病」に効く「塗り薬」で
あると聞いた時、わしは大日坊様に言いました。
「この塗り薬を、わしに運ばせてくれ」と・・・。
初め、大日坊様は、「そなたに、そんな事は頼めぬ、」と、
言いましたが、わしが、大日坊様のお役に立ちたいと、
強く願うと、しばらく考えた後、承諾して頂きやした。
そこで、「今日」これをお持ちいたしたのでありやす。」
そこまでを、一気に話すと、剛力は、「ふーーーーっ」と息をつき、
二杯目のお茶を飲んだ。
剛力は、なるべく、「御国言葉」を話すまいと、思っていたが、
思いの丈を話すうちに、変な話し方になっていた。
それでも玄海は、 剛力が伝えたい想いは、
「感覚」で分かっていた・・・。
ここにも一人、大日坊(長政)に仕える、
「心根の良い男」が加わったのである・・・。




