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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第二章 「胎動」 第二十二話 「親子三人」



「天眼 風をみる」


 第二章 胎動


 第二十二話 「親子三人」



   昨日の嵐が、嘘のように晴れわたり、障子の隙間から、


  朝日と共に雀の鳴き声が入り込んでいる。


  お菊は、いつの間にか、龍気の横で眠り込んでしまっていた・・・。


  「目」を覚ましたのは、お鈴であった。  


 熱も下がり、意識もはっきりとした目覚めであった。


 感じるのは、右目の違和感と、「うずき」である。  


  道願の薬と「紅玉」のおかげで、傷は回復に


   向かっていたが、空洞となった右目を感覚で追うと、


   何か、物足りなさと寂しさが、湧いてきた・・・。  


  もう一つの「左目」で、左手を見ると、 自分の手相が見える。


  手を動かす度に、動く手相を見て、 生きている


   実感が湧いてきた・・。


   お鈴は、静かに体を起こすと、周囲の状況を確認する。 


  昨日は、もうろうとした意識の中で、詳しくは覚えていない・・。


  すぐ横で、 父、龍気とお菊が、仲良く寝ている。


   お鈴は、この光景に驚いた、自分の父、龍気が、私以外の


   人と気を許し、完全に寝入っているのを、初めてみたのである。 


  お鈴は、ちょっとだけ嫉妬したが、それ以上に、


   この二人の行く末を強く感じた。


お鈴(とっちゃは、お菊さんと夫婦になる。)そう強く感じたのである。


  

   お鈴は、龍気とお菊の間に、二人を抱き合うように入り込んだ、   


   お鈴の脳裏に、「親子」と言う、言葉が浮かんできた、  


お鈴(この感じが「親子三人」ってことなんだ・・・。)


   お鈴の腕に力がはいる、二人を「ギュッ」と抱き寄せた・・・。


   龍気とお菊は、同時に目覚めた。


   そして、ほぼ「同時」に、お鈴に声をかける。


龍気「お鈴、大丈夫か?」


お菊「お鈴ちゃん、大丈夫?」


お鈴「うん、大丈夫だよ、「とっちゃ」も「お菊」さんも、ありがとう」


    その言葉だけで、十分であった。


    三人は、お互いに強く抱き合った。


   お菊の目にも、龍気の目にも、安堵の光が流れた・・・・。


   その後、龍気達は、忍犬・「小鉄」を呼び、今回の事を、


   忍びの「頭」・半兵衛に報せる。 


    報せを受けた半兵衛は、 すぐに、旅籠に飛んできて、


    龍気と話をすると、忍びの者、全員に今回の事を伝えた。 


   小笠原家からの報復を用心せよとの旨を伝えたのである。

    

   ただ、今回の事で、「小笠原家」の家臣の中でも、動きがあった。  


   長棟の「命」(めい)で、 忍びの頭領である、


   龍気とお鈴を殺害するために、家来のいのちが、


   五十人以上死んだのである。 中には、龍気達を「恨む」者


   も居たが、 家臣達が、その事の顛末を知れば、


   知る程 「長棟」に対しても忠義が薄れてきた・・。


    元々、長棟よりも、「長政に家督を継いでもらいたかった」


    と、考える家臣が多かったのは、事実である。


    そう考える家臣の願いは、「長政様が、早く帰って


    きて欲しい」であった。   


    今回の事は、その後、「小笠原家」を更に分裂させる


    「大義名分」にもなるのである。


    そして、龍気達、「親子三人」は、町に溶け込んだ。


   龍気は、早朝に、「永光寺」で修行し、昼間は、


    「木こりの茂助」の所で働き、お菊とお鈴の待つ、


    長屋に帰る。


    永光寺での修行は、「やり方」・「その訳」を聞いたら、


    後は、人知れず、別の場所に移り、繰り返し、


    「鍛錬」するのである。


   それなら、永光寺にも迷惑がかからず、


    自分の身と家族を危険に晒す事も無い。


    玄海にしても、ずっと永光寺に居る訳ではない。


    自分の寺である「正覚寺」の仕事もある。


    毎朝、「通う」事には、違いないが、「鍛錬」(修行)は、


    「正覚寺」でも出来る。むしろ、「正覚寺」でする修行の


    時間の方が、多くなってきた。


    それは、二人の修行が、進んだ事を意味していた。



   そして、一年が過ぎようとした頃、一人の「男」が、


   正覚寺の玄海のもとを尋ねてきた。



   男の名前は、「剛力」(ごうりき)と言った。 


   色黒で、 身の丈、六尺(180センチ程)の


   大男、二の腕に太い血脈が浮き出ている。


   背中に大きな「甕」(かめ)を背負い、野太い声で、


   正覚寺の門の前に立ち、


   「誰か、居らぬか~」と叫ぶ。


   このかめの中身こそ、長政が「長崎」で手に入れた、


   「大風子」(たいふうし)の実を煎じて煮詰めた塗り薬。


   あの、「不治の病」を治す、「塗り薬」である。


   そして、「剛力」は、 大風子の種と、枝を持っている。 


   枝の根元は、枯らさぬように、水蘚みずごけ


   巻きつけてあった。


   いよいよ、長政の旅の成果が、現れ創めた・・・・。




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