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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第一章 「旅立ち」 第三十六話 「お鈴」


「天眼 風をみる」


 第一章 旅立ち


   第三十六話 「お鈴」



   父、貞朝の屋敷で、「元服の儀」を済ませると、長政は、


その衣装を着たまま、馬小屋に向かう。


   馬小屋には、着飾った春風と龍気が来ていた。 


 お菊は、そのまま永光寺に向かったようである。


  龍気は、長政の顔を見て、何か、よからぬ事がおきたと察した。


龍気「長政様、いかがなされました?」


長政「うむ、ここでは、まずいので、歩きながら話すとしよう。」



   長政は、春風の手綱を持ち、龍気と共に歩きながら話し出した。 


 春風が「カッポ、カッポ」と歩くたびに、お菊が付けた「鈴」が、


 「シャン・シャン・・・、」と鳴る。


長政「ちと、厄介な雲行きになってきた、龍気よ、永光寺の住職とは、


そんなに気難しい人なのか? わしと話をしていた時は、


そのような素振は、微塵も感じなんだがの・・・、 」


龍気「永光寺の住職、道願どうがん様は、決して、気難しいお方では、


ございません。


   拙者が、「わが妻」を亡くし、気落ちしていた時、それは、


親身になって話を聞いて頂きました。


    ある時は、「禅語」の中で、例え話をして頂いたり、


共に座禅をして頂いたりと、およそ、三箇月程、寝食、共にいたしました。        


     恐らくでは、ございますが、「相手」によるのでは?


     無いでしょうか・・・。」


  

長政「うむ、「相手」によるか・・、 道願殿も、わしと同じような力を


   持ち合わせているのかも知れんの・・・、


    一目見て、その「相手」がどの様な「人」なのかが、解るのであろう、 


    しかし不思議じゃ、わしが道願殿を(風よみ)した時、


    何も、見えなんだ・・、無心であったのか、


    それとも、(風よみ)させぬわざを持ち合わせておるのか・・、


    どちらにしても、底が見えぬ御仁であるな・・。」


龍気「その、道願様が、どうかなさいましたか?」


長政「うむ、今回、永光寺の本堂を借りる事が、父上と長棟殿には、


    面白くないようだ、以前から、永光寺の本堂を借りようと


   していたらしいのじゃが、道願殿は、一度たりとも、


    本堂をかさなんだみたいでの・・・。」


龍気「なるほど、それは、面白くないでしょうな・・・。    


   して、長政様に逆恨みでございますか?」


長政「・・・・、う、うむ、あまり、言いたくは無いが、そんな感じじゃな・・・。


   それと、父上に言われてしまったが、 元服するのであるから、


   小笠原家の忍びは、今後、使うなと言われての・・・。」


龍気「は、わかりました。 小笠原家の忍びは、使えないとの事ですね。」


長政「おい、おい、何を考えておる。  そこは、驚くとこじゃろうが、


   それを、さらに、上を行くか! わしの方が、 驚いたわい!  


    龍気の考えは、わかっておる、「忍びの里」の総ての忍びを、


    「大日方家」の忍びとするつもりであろう」


龍気「は、その通りでございます。 正覚寺の宴で言った通り、


    我ら忍びの者共は、「お館様」に仕える事を願っておりますゆえ、


   小笠原家の貞朝様が、そう言ったのであれば、好都合でございます。」


長政「ま、まて! 今はまだ、まずい!  そうなれば、


    小笠原家との戦になる、それに、わしは、明日には


    旅に出るのじゃぞ、 それは、わしが旅から戻った時に、


    改めて話そう。」



龍気「そうでございますか・・、皆の者、とりあえずは、


    旅から戻るまでの辛抱じゃ」


     龍気がそう言うと、アチコチから、「忍びの者」が顔を出した。 


    くの一達は、町の娘に姿を変え、男共は、町人の姿になっていた、


    町の娘に化けた者は、「鈴」を持ち、町人に化けた男共は、「小太鼓」を


    持っている。中には、大太鼓を担いでいる大男もいる。


    その数、50は、居るであろう。


長政「皆の者、来ていたのか、さすがは、手練てだれの者達よの、


    まったく気がつかなんだわ、」


一同「長政様、 元服  おめでとうございます」 


    と、同時に「勝ちどき」があがり、一斉に拍手がおきた。


長政「うむ、ありがとう、ありがとう。  


   わしは、今日から大日方おびなた 長政ながまさじゃ、


    皆もよろしく頼むの」


 

    そこで、さらに大きな「勝ちどき」があがる・・・。  


    拍手は、しばらく止みそうになかった。



    ここで、長政は、初めて元服した実感が湧き、目頭が熱く、


    頬をつたうものがあった。



     しばらくして、どこからか、「笛」の音色が聞こえてきた、優しく、


    穏やかだが、その内なる所には、


     しっかりとした「意志」を感じさせる笛のである。

  

長政「この笛は・・、まさか」


   忍びの集団が「さっと」分かれ、一本の道が出来た、


   その道を、小さな女の子が笛を吹きながら歩いてくる。


長政「おりん、お鈴ではないか! 大丈夫なのか?」


    そこまで、言うと、その女の子は、泣きじゃくりながら、


    長政に向かって走り出した。 


    長政が女の子を優しく受け止めると、女の子は、




  「長にい~(長利兄と言う意)あたいも、一緒に行く~」


    と駄々をこねだした・・・。


    女の子の名前は「お鈴」(おりん)、龍気の娘である。


   長政が、忍びの里の小川で、溺れそうになった女の子


   を助けた事があった。


    あの、女の子である。  歳は13、長政の3つ下であるが、


    まだまだ、幼な子である。  笛が得意で、忍びの


    里では、笛の音で、 一日が始まり、一日が終わる・・・。


    「心の村」(心を読んでしまう人達の住む村)の食料を


    届ける役目を父親、龍気に頼まれ、自分も同じような能力を


    身につけてしまった、女の子である。(この時はまだ「隻眼」ではない) 


     通常は、沢山の人がいる所には、出て来れない。


    総ての人の「心の声」が聞こえてきてしまうからである。


    長政もそれを心配して、「大丈夫なのか?」と声をかけた。     



 

    

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