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「ふむ、予告の日を知りたい訳ですか」
朝から探偵ヴェリタスは王城に呼びつけられていた。
「そうだ。この予告状から盗むものは、現在王女のミラお嬢様の所有している魔術師の水晶を指していると思われる」
執事長は探偵ヴェリタスに説明する。
「『月明かりの下』……満月の事でしょうか。しかし、満月、なんて平凡なものをさしているようには見えませんね……」
「それを突き止めるのが探偵だろ。さっさとしてくれ」
執事長の愛想は悪い。なにかに焦っているようにも見受けられる。探偵ヴェリタスは考え込む。
「……つき、月といえば、ハーベストムーン祭がそろそろありますよね。その日ではありませんか?」
ハーベストムーン祭、1年内、月が最も輝く日に開催される祭りだ。
「では、探偵殿は明日の夜が予告日と言いたいのか?」
執事長は探偵ヴェリタスに疑いの目を向ける。
「はい。怪盗レイモンドは大抵なにかの記念日や過去に事件があった日に盗みに入ります。今のところ、それ以外の規則性はありません」
そう、怪盗の予告状は謎の塊である。ある時は全く何も無い日に盗みに入ったこともあった。
「僕は断言しましょう。怪盗はその祭りの日に必ず来ます」
探偵ヴェリタスは執事長の圧にも負けず、断言した。その目に迷いはなかった。
「信じるぞ。間違っていたら許さないからな。牢獄に入れてやる」
「…はぁ、僕は遠路はるばる隣国からやって来たのです。そこまで言うなら帰ります」
探偵ヴェリタスは執事長を煽るように言う。
「勝手に帰れ。明日の役目さえ果たせば、お前にもう用はない」
「…執事長、不躾ですが一つ質問しても?」
執事長は最初から様子がおかしい。探偵ヴェリタスはそれに気づいていた。
「なんだ?」
「執事長は何故さっきからそうも焦っていらっしゃるんですか?まるで、王女様より心配なものがあるように見えますが…」
探偵ヴェリタスは執事長の目を見て言う。
「ふっ、ふざけた事を言うな!俺はお嬢様を小さい頃からお支えしている!冗談でも許されないぞ!」
執事長は大声を上げ、必死に弁明すると過剰にも感じられる反応をした。
「……そうですか」
「……っ!」
執事長は探偵ヴェリタスにご立腹の様子であった。だが、対照的に、探偵ヴェリタスは落ち着いた様子で一度も振り返らず、城を去っていった。
その頃、ある人気のない屋敷の中で男が呟いた。
「偉大なる曾お祖父様、俺はあなたの願いは叶えられていますか?」
しばらく屋敷に反響し、やがて、その声は祖父には届かぬまま消えていった。




