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第1章 魔術師の水晶
「くっ、忌まわしい怪盗がっ!」
そう吐き捨てる老人の手には一通の予告状が握られていた。
『月明かりの下、魔術師の水晶を返してもらおう。
最後の魔術師レイモンド』
これは最近現れた怪盗の名だ。しかし、この国で天才魔術師と呼ばれた男の名でもある。
「どうしたの?執事長、異変かしら?」
声の主はこの国の第1王女であるミラだ。ミラは不思議そうな顔をして執事長を見る。
「なんでもない。早く部屋に戻れ、ミラ」
「ねぇ、執事長。それ見せてちょうだい。わたくし、気になるわ」
ミラが執事長の手に握られた予告状に手を伸ばしたところ、執事長は大きな声で叱責した。
「ミラ!自身の立場を忘れたのか?それとも、こんなものにうつつを抜かしている時間があるとでも?」
「……そうね、ごめんなさい」
そう言い、ミラは小さく頭を下げ、その場を後にした。
自室に戻る途中、誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。
「——でも、少しくらい見てみたかったもの」
ミラは立ち止まり、廊下の窓の外に広がる果てしない星空を眺める。その純粋な少女の小さな呟きは誰の耳に届くこともなく、満天の星空へと溶けていった。




