ラグジュン平原
寒冷地、行ったことないけど、本当はもっと厳しいのかも…なんて書きながら思ってたりする。
「はい、集合!みんな準備はいいかな!?」
「準備いい。」
「万端だぞ!」
「問題ない。」
「クル!」
「…うん。こだまとエティはいつの間に戻ってきたんだ?」
「「今(だぞ!)」」
「アンジュ達は?」
「みんなは匂い取る君を売りまくってるぞ!」
「そ、そうか。まぁうまく行っているようならいいが…。」
エティ曰くかっこいい、こだま曰く不思議な空飛ぶ移動販売車を作りアンジュ達は匂い取る君を作るチームと売るチームに分かれて移動販売を開始したようだ。いたくさんができたからそこを回ってるとのことだ。よくわからないが、もろもろ解決して戻ってきたらしい。準備は…リア以外の準備は結局俺が全部しているので後は出発するのみだ。
「おーい。お前さん達時間ぴったりじゃの。えらいえらい。おや知らないのが増えておるの?」
「こっちがこだま、こっちがエティ。2人ともさっきまで別行動してたんですけど戻ってきたんです。こだま、この人達はノマディ族の人達でラグジュン平原に向かうらしいから一緒に行くことにしたんだ。」
「わかった。」
「オラはヒーローだからオラと一緒なら百人力だぞ!」
「ふぉっふぉっふぉ。そうかそうか。また可愛いのがふえたのぉ。これで全員揃ったのかい?」
「亀さんもいる!」
「ほぉ。ブラットタートルか。珍しいもん連れているんじゃな。」
「ブラットタートル?」
「なんじゃ知らずに連れておったのか。ブラットタートルは岩のように硬い亀でな、暑さにも寒さにも強い亀じゃ。丈夫さの割には軽いから素材として人気があるが見つけるのが難しくてのぉ。ブラットタートルならラグジュン平原でも問題ないから連れてっても大丈夫だぞ。」
「へぇ。こいつ意外と珍しいんですね。」
「動きがゆっくりすぎて岩と紛れてしまうから見つけにくいんじゃよ。それでお前さん達準備はできたか?」
「はい、俺達の荷物はこっちです。」
俺達はもちろんホバーボードを使った移動小屋だ。ホバーボードをありったけ繋げてその上に床板を固定。床板の上にはこたつとかまど、更に寝床用のテントを張っている。
こたつは大人数仕様の横長のローテーブルに布団を掛け上に天板を乗せたものだ。内側、天板の裏には湯たんぽを固定する針金を仕込んである。多少手間ではあるが電気がないから湯たんぽを上に入れて中をあったかくしようかなと思っている。
竈門はおなじみバケツコンロだが暖を取るためにもコトコトずっと鍋に火を掛けて置けるよう3つ連ねている。
そして寝床用テント。こちらは寝床用としているがこっそりどこでもYEAHへ入れるように個室を作りたかったから作っておいた。
「な…、なんじゃ、これが荷物なのかの?」
「えぇ。この板を宙に浮かべてそのまま移動させるんです。」
「動くおうちなの!」
クルが嬉しそうにアピールする。
「動くおうち…。竈門まで用意してあるが、お前さん達火を使いながら移動する気か?ラグジュン平原で火は極力避けねばならぬのじゃぞ?」
「大丈夫です。実はこれ、まだ完成してないんですよ。ラグジュン平原に入ったら氷で周りを囲む予定なんです。それなら温度が周りから感知できないですよ。」
「氷で熱を囲ってごまかすのか。ふむ。悪くないかもな。でも立ち昇る湯気は防げんぞ?」
「そうですね。どうしても煙なんかは目立ちます。でも移動しながらなら魔獣が追いつく前にある程度は逃げれると思うんです。」
「そんなうまく行くかのう…。危なくなったら火を消してもらうぞ!」
「わかりました。とにかく行ってみましょう!」
複雑な表情の爺さん達の背中を押し、兎に角出発することに。俺達はホバーボード、いやホバーボードハウスに乗り込みこたつに入ってくつろぐ。予め用意しておいたお茶とみかんはもちろんコタツに配置済みだ。ホバーボードハウスの操縦はたっての希望でクルが行っている。ホバーボードハウスの先頭に台を設置し、そこにホバーボードと同じ丸いグリグリ、操作ボールをつけている。ホバーボードとのコネクションは、もちろんガルゥボーイを呼び出して無理やり作らせた。俺には魔法もないし、適材適所だ。自慢じゃないが俺ができるのはアイディア出しのみだ。どや。
クルが操作するとボハーボードハウスはスッと浮かび上がり、爺さん達を追いかけるように動き出す。その様子に更に複雑な表情を浮かべる爺さん達。ちなみに爺さん達はもこもこの箕を着せたサテュロスに乗っている。もちろん爺さん達ももこもこだ。皆武器以外は持たず軽装で、何頭かに荷物を乗せて引いている。食料やテントなどはこの荷物にまとめているのだろう。荷物を運んでいるサテュロスが万一逃げちゃったら一環の終わり…なんて想像しちゃう俺は無粋なんだろうな。
「見えてきたぞ。あの透明な幕を超えた先がラグジュン平原じゃ。」
「透明な幕?あ、本当だ!透明なカーテンみたいなのが見える。」
爺さんに言われて前方を注視してみると一見何も見えないのだが偶に光が反射する。反射した場所をじっと見ていると確かに透明な幕が見えてきた。
「あの幕を越えると一気に寒くなるんじゃ。フィルトゥル!」
幕の前まで到達すると一旦止まり、爺さん達は魔法を唱える。空気の幕をフィルターのように纏うものらしく、多少寒さを軽減できるのと体温を感知されづらくなるらしい。俺達も最終準備としてホバーボードハウスを完成させるとしよう。
「こだま、クルお願いできるかな?」
「分かった。」
「クル!」
こだまとクルには氷の壁を作ってもらうことに。かまくらスタイルだ。説明したらあっという間にイメージ通り若干丸みを帯びた壁が完成した。どうやったのかは分からないが白い氷と透明な氷を使い分け、窓まである。これなら外からは冷え冷えで中の温度は感知されない。中に入ってみるとメインはダイニングキッチンのような空間。そしてテントで区分けされた寝室の2部屋構造だ。コンロからの湯気や煙は煙突で逃す式だが、流石にそちらの温度は隠しきれない。だが走っているから問題ないだろう。
「オラは?オラは?オラなんだってできるんだぞ!」
自己顕示欲のかたm…エティがこだまとクルを褒めてたらグイグイ来る。そこでエティには煙突につける風車を作ってもらうことにした。風車が回ったら煙が拡散して温度も紛れやすくなるだろう。
「おぉ!オラの芸術が爆発するんだぞ!」
爆発系太郎さんみたいなことを言うエティ。作り方を説明して、煙突の上につけるからホバーボードハウスのシンボルになるねって言ったらやる気がダダ漏れらせて張り切るエティ。まずはデザインだと画用紙に向かい出した。非常に楽しそうで…何よりです。
ホバーボードハウスはとりあえず完成したのと爺さん達の好意で俺たちにも魔法をかけてくれたので、早速ラグジュン平原に突入することに。幕を持ち上げてくぐるのかな?って思っていたら爺さん達は幕を気にすることなくまっすぐ向かっていく。幕に触れるとふれた部分がスッと消えて穴が空き、難なく通り過ぎていく。俺達も後に続き幕に触れると同じく幕がスッと消える。
「多分私達の体の温度で幕が一瞬で溶けてるんだと思う。」
俺が首を傾げていると、リアが教えてくれた。俺達の体だけでなくホバーボードハウスとかもこの幕にとっては温度が高いのだろう。外気だって高いだろうに触れた時だけ解けるのが不思議だ。異世界だから…って便利な言葉で納得しておくことにする。世の中なんて分からないことの方が多いのだから。
そしてラグジュン平原、入った瞬間に環境が一変した。寒さで空がクリアになったのか、急に真っ青な空が広がり、地面はもちろん山、木々、全てのものが凍りついていて全てが青白い。幕の外からも青く感じていたのだが、想像していたよりも一色の世界だ。
「い、息がしづらい…。」
自分の息が吐いた瞬間凍るのか、呼吸が難しく感じる。
「あまり大きく息を吸い込むんじゃないぞ。肺に氷が入っちまう。最初は息がしづらいが徐々に慣れてくるわい。」
爺さんがすかさずアドバイスしてくれる。肺に氷が入るって怖っ!そして寒っ!!いや、痛っ!!!魔法で空気のフィルターかけてもらってるのに尋常じゃなく寒痛い。
「ダメだ!こたつは半外でいいかと思ったけど…こだま、クル!ちょっとホバーボードハウス改築だ!」
現在はホバーボードの先頭に操縦台、そのすぐ後ろに長いこたつ、そして次に氷の部屋が設置されている。こたつを御者台替りにと思っていたが外だと耐えられそうにない。そこでこだまとクルに頼んで、操作台とこたつを囲うように透明な壁を設置してもらった。サンルーム状態だ。料理をしたりする部屋よりは暖かくはないがしっかり周りを見渡せて、寒さも防げる。急に魔物が襲ってきても壁になってくれるので防犯の意味でも良い気がする。入り口は両サイドと天井に設置しすぐに外へ飛び出せるようにもした。
「風車できたぞ!」
どうやらエティの担当していた風車も完成したようだ。
「えっと、これは?」
急かされて煙突を見上げるとカラフルなハスの花が煙突の真上に咲き誇っていた。そして風車の横には人が一人立てる足場が設置されている。
「エティ、あれじゃ煙を直撃しちゃうぞ。あと、あの足場は?」
「えっへんなんだぞ!あれは攻撃もできる風車なんだぞ!見てるんだぞ!」
そういうや、足場に飛び乗るエティ。そしてカラフルなハスの花を回すともくもくと出ていた煙がワイドに広がりその分薄くなる。ちゃんと拡散できているようだ。
「でもあんなに直接煙を当てちゃうとあの花が氷ついたりしないのかな?」
「大丈夫。水滴つかないようにつるつるの魔法かけた。雨でも濡れない。」
「なるほどね。それなら安心だ。」
続いてエティが花の方向を縦に回す。花弁を萎ませて回転を高速にしはじめる。すると花から氷の塊が連射されちょっと先に見える石に当たった。石は連続で当たる氷に負けついには砕けてしまった。
「うわっ、凄いな!」
「煙の中の水分を放出したんだぞ!あっという間に凍るから氷の玉になるんだぞ!」
これ以上ないほどのドヤ顔でエティが戻ってきた。
「氷に魔法付与すればいろんな攻撃できるようになる。」
「おぉ!それはいいアイディアだぞ!試すのが楽しみだぞ!早く襲われたいんだぞ!」
こだまのアイディアに不謹慎な発言をするエティ。何はともあれホバーボードハウス改が完成。
いざラグジュン平原とあいなった。




