飯テロ⑨爆弾投下
敵の姿が見えない中ですが、作戦開始といきましょう。
「そういやぁ明日は定例集会の日だ。」
「定例集会?」
「俺たちの国は情報が命だからな。定期的に集まって情報交換してるんだ。大抵昼頃から集まりだすから軽食なんかも用意される。そこでならバーンと用意して、一気に配れるぜ!」
結局俺はたいしたアイディアも思い浮かべられず、こだまのリクエストでハンバーグ作りに精を出していたらモハウクさんが集会のことを思い出してくれた。うん、なんとかなりそうで安心した。
こうして大量の【カレー香るサンラータンまん】と【黒酢いちごとカスタードまん】を準備し、翌日の定例会を迎えることに。
定例集会は街の中心部にあるホールのような場所で行われるようだ。入ってみるとまるでホテルの結婚式場のような広間になっていて、壁際にはビュッフェスタイルで料理を配るためのテーブルが並べられている。モハウクさんが言っていた通り軽食が用意される習わしのようで、無言で食事を並べる街の人達がいる。俺たちはその人達に混ざってテーブル横に蒸籠を準備していく。本来なら勝手に入ってきて料理を用意しだせば街の人たちは驚くだろう。しかし今は沈黙状態。返って気にせず用意ができてよい。そうとなれば大っぴらに用意するだけだ。
「確かにここはめちゃくちゃ広い会場だけど、それでも流石に街の人達全員は入れなくないか?」
「全員いっぺんになんて来ないわよ。みんな仕事もあるしね。仕事の合間に抜け出して都合の良いタイミングで来るから、入れ替わり立ち替わりになるのよ。時間を置いた方が良い情報が集まってる可能性もあるって何度か足を運ぶ人もいるんだから。」
俺の疑問にフィーハさんが答えてくれる。定例集会は昼頃から始まり夜までだらだらと続く、集会というよりイベントのような体裁のようだ。ということは今日は長丁場になりそうだ。
「街の人達が集まりはじめた。」
リアの声に反応し、入り口の方を注目すると確かにぞろぞろ街の人達が入ってきていた。
「そういえば、みんな喋らないのにどうやって情報交換するんだ?」
無言でゾロゾロ入ってくる街の人達をみてそんな疑問が湧き上がった。観察していると集まってきた人たちは数人のグループで固まったままじっとしている。そしてしばらくすると、出ていきはじめてしまった。
「そうか、体に染み付いた行動をしているだけだから集まってきて、そして帰っていくのか!まずい、このままじゃみんな何も食べずに帰られちゃうぞ!」
「みんなこれ、食べるんだぞ!戦う前は食べなきゃなんだぞ!」
するとエティが呼び込みを始める。街の人達は戦争の準備を始めているって聞いていたから、機転を聞かせて戦う準備のために食べなきゃと付け加える。
「エティナイス!戦争の準備って言えば絶対食べるな。そう命令されてるんだから。お前冴えてるな!」
「オラは天才ヒーローだからな!」
ドヤ顔のエティ。今回はお手柄だからゆるそう。するとこだまが率先して【カレー香るサンラータンまん】を配り始めた。クルとリアも後に続く。
「フィーハさん、こっちはフィーハさんとラジャールさんに任せますね。俺もこだま達と配って回ることにします!」
「了解、任せた!」
「お、おう、わしらに任せろ!」
フィーハさんと二人っきりにまだ緊張するのか声が上ずっているラジャールさん。微笑ましいじゃないか。
エティの呼び込みと俺達が直接手渡していったことが功を奏し街の人達が【カレー香るサンラータンまん】を手に取り出した。黒酢の香りは感じないのか抵抗なく受け取ってくれた。そして無言でかぶりつく街の人達。
動向を固唾を飲んで見守る。
すると次第にあちこちから声が上がり始める。
「「「「うまい!」」」」
「「「「あれ、俺(私)達何してたんだ???」」」」
「どうやらうまくいったみたいだな。」
「うまいから当然なんだぞ!オラも食べるぞ!」
「ハンバーグ入りは?」
こだまとエティは早々に食べる側に回ってしまった。おい、お前ら!
クルは配るのが楽しいのか引き続きリアと配って回っている。ため息をつきつつ俺も再び【カレー香るサンラータンまん】配りに専念する。
「楽!なんとかするんじゃ!」
手持ちの【カレー香るサンラータンまん】がなくなり取りに戻ったら、ラジャールさんとフィーネさんが街の人達にもみくちゃにされていた。
「ラジャール、こっち5個くれ!」
「家族にも食べさせなきゃ。フィーネ、あと3つね。」
「子供達は甘い方がいいわ。甘いの4つ頂戴!」
「うまかった!もっと食いたい!もう1個!」
正気を取り戻した街の人達が家族用にと殺到していた。中にはおかわりもちらほらいるが。注文が多すぎて完全に手が回らなくなっていた。慌てて俺も参戦する。そこからはもう地獄のような忙しさだった。次々やってくる人達。みんなが一様に正気を取り戻し、客として殺到する。この忙しさはなんと定例会が終わっても終わらず、気がついたら夜になっていた。仕事を早く切り上げ、モハウクさんも途中合流。それでも忙しさは緩和することなく、ヘトヘトになった俺達は最後の人が去った後その場に崩れ落ちる。
「お、終わった…。」
「地獄だった…。」
「わしはもう懲り懲りじゃ…。」
ブゥオオオオォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!!
ブゥオオオオォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!!
ブゥオオオオォォォォォーーーーーーーーーーーー!!!!!
突然、くたくたの体の底に響くような大きな音が鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
「ご飯の時間?」
「おぉご飯の時間なんだぞ!お腹すいたんだぞ!」
「デザートもある?」
俺が驚くと、こだまたちが頓珍漢なリアクションで続く。
あなた達ずっと食べてませんでしたっけ?
「こりゃー、開戦の合図だな。久々に聞いたぜ。」
「そうなの?私初めて聞いたわ。」
「まぁ、俺も昔練習で鳴らしたのを聞いたことあるだけだ。本気で合図出されるのを聞くのは初めてだがな。」
モハウクさん曰く、この音は開戦の合図と言われるもので、この合図が鳴り響いたら集合せよ、とのことらしい。フィーハさんはこの合図知らなかったらしいので、本当に戦争という事態に落ちいるのが何十年、何百年ぶりなのだろう。
「しかし何でこんな時間なんじゃ?夜に集めてもみんな来こんじゃろ?」
「攻めようとしているトラムンターナってどの位の距離なんですか?距離を考えて夜出発にしようと考えたとか。」
「確か、この合図がでたら、集合は翌朝って決まってたはずだ。」
「そうですか…。すぐって言っても、翌朝なんですね。」
「そりゃ、すぐになんて動けない奴の方が多いからな。店を閉めるのだってそこそこ時間かかるし。」
「でも、私この合図知らなかったし、街のみんなも知らない人多いんじゃない?みんなちゃんと集まるのかしら?」
「たしかにフィーハの言う通りじゃ。どうする?」
「行くわけないだろ?これ以上厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだぜ。」
「私もやめとく。昨日今日と仕事ちゃんとできなかったし、明日こそはがんばらなきゃ。」
「わしもパスじゃ。流石に明日は休みたい。」
どうやら誰も行く気がないようだ。俺達は…
「まぁ、まだ操られてる人残ってるかもしれないし、一応行ってみましょうか。」
「そうね。でもこっそりにしない?もしくは操られてるフリしないと危なさそう。」
「こっそりにしよう。エティとクルが黙って大人しくしてるのはとてもじゃないが無理そうだから…。」
「「「確かに。」」」
「ん?オラがどうしたんだぞ?」
「クル?」
自覚症状がないエティとクル。とにかく俺達は集合場所へ行ってみることにした。




