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飯テロ⑨さぁ、準備をはじめよう

飯テロが久々すぎて自分もびっくり。

「イルーヴァントが乗っ取られた!!!!!」


お店に飛び込んできたモハウクさんが叫んだ。


「…乗っ取られた?」

「そうなんだ!国王が、突然現れた男どもと結託して戦争を起こすっていうんだ!」

「せ、戦争?」


どうやらこの国は実に物騒な事態に突入したようだ。


「そんなわけないだろう。あの商売にしか興味ない国王じゃぞ?それに戦争って、一体どこと戦争するっていうんじゃ?」


突拍子もないと馬鹿にするようにラジャールさんが反論する。

まぁ戦争を商売と捉える人もいるし、その男どもとやらの案に乗ったという可能性もありえると俺は思うのだが。


「それが北のトラムンターナに攻め込むらしい。」

「トラムンターナだぁ?」

「ねぇトラムンターナって悪魔族の国でしょ?悪魔族って戦闘民族じゃない。イルーヴァントじゃ勝てなくない?」


戦争という未曾有の事態にモハウクさんにラジャールさん、復活したフィーハさんが詰め寄る。詳しく聞いてみるとイルーヴァントの王は謎の男達と戦争を起こすことにしたようだ。そして戦力はなんと国民。人形のようになってしまった国民達は王の宣言に素直に従い、現在武器となりそうなものをかき集めて備えているそうだ。モハウクさん達は必死に止めようとしたのだが一切反応することなく、困って俺達にアイディアを求めやってきたそうだ。

イルーヴァントが戦争を起こそうとしている北のトラムンターナは悪魔族の国とのとこと。悪魔族は魔力が非常に高く、身体能力も高い種族だそうでかつて戦争がまだあった頃はその圧倒的な戦闘力で、悪魔族を見方につけられるかどうかが勝敗を左右すると言われていた。


「そんな戦闘民族に勝てるのか?」

「もし悪魔族が本気を出したらまずだろーな。もし本気を出せば、だが。」

「もし?」

「悪魔族は怠惰で腰が重い種族でもあるんだ。ちょっとちょっかい出したぐらいでは本気にはならないはずだ。」

「へーそうなんだ。でもなんでそんな国に攻め込むんだ?」

「さぁさっぱり分かんねーな。そんなことより、あいつらを止める方法を見つけなきゃだ!俺達がおかしくならなかったのは『匂い取る君』使ってたからだと思って、みんなにも使ってみたんだ。でも全然効果ねぇ。なぁ楽、何か他に手がないか一緒に考えてくれないか!?」


必死の様子でモハウクさんが俺に頭を下げる。その様子を固唾を飲んで見守るみんな。


「楽、楽、リックとおじいちゃんは?」


国王が変になったと聞いてクルが俺の袖を引っ張る。友達、心配だよな。


「モハウクさん、前国王達は無事なんですか?」

「前国王か?詳しくはわからねーんだが、前国王達は国王が自ら捕らえて投獄されたって噂だ。なんでも国王を止めようとしたらしい。」

「クルー…。」


モハウクさんの言葉を聞いてぎゅってしがみついてくるクル。クルを悲しませるなんて、これは由々しき時代じゃないか!!!


「モハウクさん、実は俺達もさっき『匂い取る君』試してみて、戻せないって分かったところなんです。」

「楽が試してもダメか…。いったいどうしたら…。」

「でも戻せる可能性はあります。ね、ラジャールさん!」

「ほ、本当か!!??」

「安心せぇ!俺が丹精込めて作った黒酢がある!」

「黒酢?」

「どうやらみんなを洗脳したのは服従香という香りなんだそうです。そして黒酢の香りは服従香の香りと相性が悪いみたいなんです。現に、ここにいるフィーハさん達は黒酢の香りをたくさん嗅いだから正気を取り戻せたんですよ。」

「そういやぁ、確かに、フィーハ達元に戻ってるな…。」


モハウクさんが勢いよくフィーハさんの方に振り向くと、さっきまで一緒に話していたはずなのにビクッとなるフィーハさん。まぁ、厳ついモハウクさんにガン見されたらそうなるか。


「え、えぇ、私達黒酢の香りを嗅いで元に戻ったんです。ただ洗脳されている状態の時って無意識に黒酢を避けようとするんです。街中の人達を元に戻すなんてできるのかなぁ?」


そう、問題はいかに不意打ちで強烈な黒酢臭を嗅がせることができるか。街の人達は確かに操られている。しかしいつも通りの生活を送っているではないか。ならば意外といけるかも?


「よし、クル!久々の飯テロのお時間だぞ!」

「飯テロ?」

「飯テロは世界一おいしい攻撃だぞ。俺は悪い人族に飯テロでお仕置きするために旅してたんだ。最近すっかり忘れてたけどな!」


なんと飯テロの説明が必要になるほど久しぶり。ただの旅になっちゃってたから、ここいらでそろそろちゃんとしよう。


「人族がリックいじめてるの?」

「可能性は高いと思うぞ。服従香を作った商人がリアを捕まえようとしただろ。そして遺跡には人族がいた。謎の男達はそいつらと繋がっていると考えるのが妥当だと思う。」

「何!近くで人族を見かけたのか!?」

「えぇ外の森でですが。それに服従香を持っている商人にリアは襲われたらしいです。十中八九つながってますね。」

「確かに何故か人族はエルフを狙う傾向があるが…。まさか人族が絡んでるとは。で、どうするんだ?」

「ふふふ。それは作ってからのお楽しみ。先に材料の調達を手伝って欲しいんですが、お願いできますか?」

「おう、それなら任せとけ。」

「では俺達は必要な道具をまず作るんで、お米をたくさん集めてきて、それを水に浸けておいてください。」

「米か?よしおめーら早速取り掛かるぜ!」

「ラジャールさんとフィーハさんにも食材の調達お願いしていいですか?これ、リストなんですけど。」


仲間達を引き連れ街へと戻って行くもモハウクさんを見送りながら必要な材料を紙に書き出し、フィーハさんに手渡す。


「いいけど、私だけでも十分よ?」

「フィーハさんは料理人だから食材集めるの得意かなって。量が多いからラジャールさんを荷物運びで使ってください。」

「そういうことね。じゃ、ラジャール行きましょ?」

「え、あ、お、う…。」


そしてフィーハさんもテンパるラジャールさんを気にせず引きずっていく。さぁ、材料はみんなに任せるとして、俺達も早速飯テロの準備だ。


「それで、何を作るの?」


集めている材料からはピンとこなかったのか、リアが訪ねてくる。


「事前に黒酢の匂いがバレなくて、顔の前で突然香りが立ち込める。そんな都合のいい料理といえば…一つしかない!」

「パンに入れる?」

「こだま、おしい!でもパンダと匂いがだだ漏れになるかもな。」

「オラ、カレーがいいぞ!」

「んー、違う!けどカレー使ってみるのもいいな。」

「甘いのある?」

「甘いのか…。うん、なんか考えてみよう。」

「それで、何を作るの??」

「それはね…香りの爆弾、【サンラータンまん】だ!」


かぶりついた瞬間、顔の前で中の肉の匂いが広がる。これなら問題なく、街の人達の目の前まで香りを届けられる。


「肉まんみたいなの?」

「そう、まさに肉まん!」

「でも肉まん、食べる前から香りするよ?」

「そこは、いいアイディアがあるのさ!こだま、道具作りを始めるぞ!」


俺はこだまに頼んで巨大な鍋と、その鍋に合わせた巨大な蒸籠を作ってもらう。更にバケツコンロでは小さすぎるので煉瓦を積み上げたアウトドアタイプの竈門もお願いした。


「フィーハさん達の店を借りないの?」

「これは材料作り用だから、外でいいんだ。」


そう、今回はフィーハさん達の店、ヌドルの台所を借りて飯テロの拠点にすることにしていた。黒酢餡を作るのは、香りが漏れないように店で作ろうと思っているが、秘密の小細工は外でモハウクさん達に手伝ってもらって作ろうと思っていた。店の中で大量に蒸したら暑くてたまらないしね。

道具作りがあらかた準備できたところでモハウクさん、ラジャールさん達も戻ってきた。

準備は整った。いよいよ作戦開始。

さぁ、久々、飯テロのお時間です。

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