ハイテク遺跡
遺跡とは過去の転生者の痕跡だったようです。
「楽、楽、穴があったぞ!突入するんだぞ!」
ホバーボードがあれば崖の側面の探索だってお手の物だ。まずは崖の下、中腹あたりまで下がっると時計回りに壁に沿って飛んいく。すると直ぐに穴を発見したのだった。
「待て待て!エティ、その穴小さすぎて俺は入れない。それにこっちにも穴があったし、あっちの方にも見えるぞ…」
「おぉ!いっぱいあって迷っちゃうんだぞ!」
エティが見つけた穴は崖の中腹に開いた穴だったが、もっと先の方にも穴らしきものが見える。そして下の方にも穴が開いているようだ。
「穴が開いてるからって遺跡とは限らないし、一回ぐるっと一周してみてどの穴を調べるか決めないか?」
「むぅ。早く探検したいんだぞ!」
「もっといい穴が見つかるかもしれないぞ?」
「本当か!楽、早く探すぞ!」
安定の簡単さでひとまず一周して見ることにした俺たちは引き続き時計回りで進んでいく。そして分かったことは中腹の穴は一定間隔で空いていて、地上に近い上部、底に近い下部の方にも時たま穴がある。小さすぎて入れないものや水が出ていて入れなさそうな自然の洞窟と思えるものも多いが、穴の間隔が均等であることからも人工的に開けられた穴があることは間違いない。
「楽、楽、あそこの穴がいいぞ!」
「お、丸じゃなくてちょっと四角っぽい穴か。確かにあそこは他とちょっと違う気もするな。」
「あそこを探検するんだぞ!」
「そうだな、あそこなら何か見つけられるかもしれないな。行ってみよう。」
均等に開けられた穴から少し外れたところにあった四角い穴は、降り立って見ると中はより一層の人の手を感じる作りとなっていた。
「足元が綺麗に均されている。壁に均一間隔で開けられた穴は…照明を入れる穴かな?天井も均されて凸凹していないし、確実に人の手が入っているな。」
意気揚々と進むエティを追いかけつつ、穴の中の様子を観察していく。床も壁も天井も、よく見ると大きめな四角い石を組み合わせて作られている。つなぎ目がぴっちりしているからぱっと見はただの四角い通路だが、非常に丁寧な作りだ。壁の等間隔に開けられた四角い穴は、照明を置く用だろうか?しばらくまっすぐ進んでいくと、行き止まりにぶつかった。
「楽、楽、行き止まりだぞ。なんにもないんだぞ…。」
「そう、しょんぼりするなエティ。見てみろ、この平らな壁、よく見ると左の角のほうに縦に溝が入ってる。きっと前見つけた遺跡みたいに引き戸になってるんじゃないかな?」
「本当か!?」
俺の言葉を聞き、早速溝に手を掛けるエティ。そして思いっきり横に引っ張ると見事岩が動き、奥へと続く通路が出てきた。
なぜ毎回引き戸なのだろう…。
「楽、楽、本当だったぞ!オラに続け!なんだぞ!」
続けと言いつつ振り切る勢いで突進していくエティ。仕方なく一生懸命ついていくが周りの観察もできる範囲ではやっていく。扉の奥はさすがに光が届かず真っ暗。部屋を明るくするためエティが光魔法で部屋を明るくすると、岩の扉の先に広がっていたのはひとまわり高い天井、廊下以上につるつるに磨き上げられた床、しかし廊下のように明かりを灯すための穴も空いてない、ただの四角い部屋だった。何もないから、何のための部屋かはわからない。そして部屋はまた岩の扉を挟んで次の部屋へと続いていく。
3つほど何もない、真っ暗な部屋を抜けると再び長い通路を進むこととなった。今度はクネクネとまがり上へ下へと移動を繰り返す。所々、小さい部屋へと繋がる脇道があったがそちらは扉が開かなかったので後回しにすることにした。
「楽、楽、ついにゴールだぞ!」
「ゴール?」
エティがゴールだと言った部屋は一際大きな部屋で、今までとは違い円形の部屋だった。壁際は一段高く、床の間のようになっていて、甲冑を飾るが如くたくさんの銅像が飾られていた。いや、銅像と言うより…
「これって…フィギュア?」
「フィギュア?それなんだぞ?」
「フィギュアっていうのはすごく精巧に作られた人形かな。ここにある人形、すごく細かくて本物見たいだろ?それに素材も…軽いから鉄とかじゃなさそうだな。」
部屋を一周するようにずらり並んだフィギュアは羽の生えた人、天使をモチーフにした戦士のような姿をしていた。それも全て女性戦士。ざっと数えてみたところ30体。人族と比べるとひとまわり小柄だが等身大といっても過言ではない大きさで羽の一本一本、睫毛や髪の毛の一本一本まで精巧に作られている。どのフィギュアも戦闘ポーズをしていていつでも出陣といった雰囲気だ。前述した通り鉄というよりプラスチック、カーボン?といった質感で、試しに1体持ち上げてみたが非常に軽かった。軽く叩いてみたが、すごく硬く、頑丈そうなのでカーボンに近いのかもしれない。手にしている武器は剣もあれば弓矢もあり、中にはみたことのない形のものもある。30体全て違う武器を手にしているようだ。
「圧巻のラインナップだなぁ。でもエティ、なんでこの部屋がゴールなんだ?」
「だって、この部屋から先はもう道がないんだぞ!」
「行き止まりってこと?」
「そうだぞ!ほら、扉を開けても岩で埋まってるぞ!」
エティが指差す奥のには確かに扉があった。扉は最初から開いた状態で、しかし埋まっている。埋まっているとは言え、扉があるのならゴールではないのでは…。
「土砂崩れなんかで埋まってしまったって感じだな。ん…これは?」
埋まってしまって通れなくなった扉を調べていると、扉の真上、天井部分に丸い出っ張りが見える。監視カメラのような透明、半円のでっぱり。しかも中にセンサーのようなものまで見える。
「照明?でもあの位置じゃ変だし、監視カメラ?」
「なあな、このフィギュア?みんな足元に丸い模様が描かれてるぞ!」
「丸い模様?」
エティの言葉に、一旦扉の上のセンサーは後回しとし、再びフィギュアを調べてみる。
「本当だな。丸くてなんか細かい模様…なんか仮面のやつと似てるな。動く仕掛けとかあったりして…。」
「こいつら動くのか!見たい、オラ動いてるの見たいぞ!」
「いや動くと決まったわけでは…。」
「いや絶対動くはずだぞ!オラが謎解きしてみせるぞ!」
絶対見つけてやると、改めて1体1体調べはじめるエティ。すると早速何か見つけたのかすぐに戻ってきた。
「楽!楽!スイッチ見つけたぞ!」
「オッ…いやこれただのステッキ!どっから持ってきたんだよお前。」
「フィギュアが持ってたぞ!」
「なんでそんなの持ってるんだ?まぁ、いいけど、これがスイッチなわけないだろ!」
「じゃこれは?」
「これはスケッチ!」
「これは?」
「スリッパ!」
「これは?」
「ん?えっと…す、す巻き!!って、ちょっとまったーーーー!!」
間髪入れずに変なものを持ってくるエティ、いつの間にか大喜利大会みたいな様相に。一旦エティを呼び戻す。
「いったん落ち着け、エティ。スイッチってのは押すボタンがついてるもんだろ?」
「おぉ、ボタン!丸いのか!」
「そう、丸いとはかぎら…」
「これだ!」
「…これはボール。」
「これだ!」
「皿…。」
「これだな!」
「ザル!」
「こっちか!」
「これは、お、けっっ!!!」
大喜利が楽しくなってきたのか、エティの持ってくるペースがどんどん上がる。
「まてぇーーーい!!!」
ワシッ!
久々のワシッ掴み。
「お前、目的変わってるだろ!あと、謎なものばかり持ってくんな!」
「だってフィギュアが持ってたんだぞ!」
「だからって明らかに違うもん持ってくるな!」
「おぉ!いたい!いたいんだぞ!」
大喜利の方が楽しくなっていたエティに罰としてこめかみぐりぐりを見舞ってやる。あと、ガラクタを仕込んでるフィギュア作成者、絶対変態だろ。この場に居たら絶対どついてたな。
「ごヨウボウはなんですか?」
ため息をついていると突然頭上から機械声が聞こえてきた。人の気配は一切感じない。なのに聞こえてくる声に驚き辺りを見回すが、やはり誰もいない。
「え、え?ご要望?」
「ヨビダシコードをカンチしました。ごヨウボウはなんですか?」
「呼び出しコード…?呼び出しコードって何…?」
「『ヨビダシコードはナニ』ですね。ヨビダシコードは『オッケー、マティ』です。」
突然の機械声はこちらの言葉を認識しているようで疑問に答えてくれた。呼び出しコードは『オッケー、マティ』。この答えに訳がわからず頭を抱えるが、すぐ直前に自分が発した言葉を思い出しある考えが頭に浮かぶ。地球には声で操作する便利なガジェットがあったではないかと。
「呼び出しコード…まさか俺が言った『お、けっっ!!!』『まてぇーーーい!!!』???」
「ごヨウボウはなんですか?」
再び声が返ってくる。
声の正体は、判定が激甘の音声認証システムだった。




