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囚われた子供達の救出

エティのヒーロー譚。

通路を通ってエティが連れてこられた場所は詰所みたいなところだった。子供達が押し込められていた部屋は電気も毛布も何もない部屋だったが、連れてこられた部屋はテーブルと椅子が中央に置かれていて、壁際の店には酒瓶が並べられている。奥にも小部屋があり簡易的なベッドと毛布が置かれていて仮眠室のようになっていた。テーブルの上にはカードが置かれていて、暇つぶしにゲームなどを楽しんでいたようだ。


「ここはどこだ?」

「ここは子供達を見張る俺達の控室さ。ありがたく思えよ。少しの間とは言え、清潔で居心地いい部屋に居させてもらえてよ!」

「あぁた、余計な事教えてるんじゃあないわよ!本当馬鹿なんだから!」

「へい…すんません…。チッおめぇのせぇだかんな!覚えてろよ!」


ロン毛に怒られてシュンとするチンとピラ。チンが椅子を引くとようやくロン毛が椅子に座り、ピラがすかさずお茶を出す。そのお茶で唇を潤しつつエティを観察するロン毛。


「あぁた見た事ない種族ねぇ。西の収容所にもあぁたみたいなの居なかったし、どこで捕まえたのかしら?」

「西にも子供いっぱい捕まえてるのか?」

「あぁたには関係ない話よ。ねぇあんたどこから来たのよ?」

「オラはヒーローだぞ!ヒーローは遠い星からやってくるものなんだぞ!」

「よく分からないわねぇ。トロルと知り合いみたいだったし、森の奥で捕まえたのかしら?まぁいいわ。客は強そうなのには追加でお金払うって言ってたし、見たところあなた魔力だけは多そう。一緒に出荷しちゃいましょぉ!チン、ピラ、こいつを香の部屋に連れて行きなさい。」


いいこと思いついたと手を叩くロン毛。冒険者ではないが商人としては何気に見る目があるロン毛。魔力の多いエティに、トロル達を注文したお客への良いお土産が出来たと上機嫌に。チンとピラにエティの出荷の準備を命じる。

命令を受けたチンとピラは縛られたままのエティを抱え、子供達の部屋とは違う部屋へと連れていった。ひときわ厳重な扉の鍵を開け、急いでエティを投げ入れる。そして急いで扉を締め、元どおり鍵をかけて戻っていくチンとピラ。


「むぅ。何だこの部屋?何もないんだぞ?」


投げ入れられた小部屋は、確かに何もない部屋だった。突き当たりの壁の上部分に窓らしき穴があるのだが、ここは地下、外が見えるはずもなく真っ暗だ。そしてよくよく観察してみると、その小窓からお香のような香りが漂ってきている。


「そうか、オラが逃げないようにちっちゃい部屋に閉じ込めたんだな!そんなのオラには効かないんだぞ!」


ロン毛はこの部屋を香の部屋と呼んでいたのだが、そんなことに気づくはずもないエティ。すっかり閉じ込めることが目的だと考えたエティはとっととこの部屋を出ることにする。


「あいつら、西にも子供が閉じ込められてるっていってたぞ。よし、西にいってみるぞ!」


再び氷でハンドミキサーを作り出したエティ。今度は壁に穴を掘り始めた。地上に出て探すという発想に至らなかったエティ。西へまっすぐ向かうことにしたようだ。

こうして壁に穴を掘りながら歩き続けることしばし。穴が貫通し、別の部屋へとやってきた。

「とぉ!だぞ!」穴からヒーローポーズで飛び出すエティ。しかしその部屋は空っぽで誰もいない部屋だった。ベッドが4つ並べられていて他に何もない部屋。もちろん捕らえられた子供がいるはずもない。


「おぉ、ここじゃなかったぞ!」


気にせず再び壁に穴を開けて移動を始めるエティ。もう感の良い方はお気づきだろう。そう、エティは西を理解していなかった。外ならまだしも、地下で西の方角を知る術をエティは持ち合わせていなかった。それなのに直接西を目指したエティ。結果適当に進んでは知らない部屋にたどり着くを繰り返していくことに。自分の進む道が西だと自信満々のエティは全くめげることなく進み続ける。

不思議なもので、めげずに延々進み続ければいつかは目的地を引き当てるもの。それがエティクオリティ。


「とぉ!だぞ!」


何十回目かのとぉ!でついに子供達が捕らえられている部屋を引き当てるのだった。


「…誰。」

「オラはヒーローだぞ!」

「…ヒーロー。」

「そうだぞ!みんなここに閉じ込められているんだぞ!だからオラが助けに来たんだぞ!」


ヒーローポーズを決めながら高らかに宣言するエティ。しかし、その言葉に静まり返る子供達。予想したリアクションと違い首を傾げて子供達をみると…、


「僕たち閉じ込められてない。助けいらない。」


淡々と答える子供達。見た感じ、ファル達と同じように痩せていて小さく固まっている子供達。しかし本人達は閉じ込められていないという。


「そうなのか?」

「そう。閉じ込められていない。」

「でもファル達は閉じ込められてるって言ってたぞ!あと、お腹すいてるって!食べ物欲しくないのか?」

「お腹…。」


続く言葉が出てこない。しかし、グーーー、一斉に子供たちの腹の虫が鳴り響く。


「そうか、そうか、お腹減ってるんだな!それじゃ、オラ食べ物持ってきてやるぞ!」


子供達の反応はよく分からなかったがお腹が空いているということは理解できたエティ。逃げる必要がないというので助け出すことは諦め、とりあえず楽にご飯を作ってもらおう。そう思い部屋を後にした。

シュポン。今度こそ地上に出たエティ。


「目が!目が痛いぞ!!」


久しぶりの太陽はものすごく眩しかった。目の前が白と緑とチカチカして前が見えない。しかしそこはエティ、楽の気配がする方に飛べばいいだけ。楽の気配を察知すると助走たっぷりで大ジャンプ、早朝のコーヒータイムを楽しむ楽に豪快にダイブを決めるのだった。

そう、西を目指して歩き回っていたエティはなんと夜通し歩き続けていていつのまにか夜を通り越し朝を迎えてしまっていたのだ。


豪快帰宅ののちに、楽に怒られ、お弁当を作ってもらい、風呂に入り、更には匂いはエチケットだと『匂い取る君』を大量に持たされたエティは、数時間後再び子供達の元へ訪れていた。


「ファル、ご飯持ってきたぞ!夜になったら逃げるから、それまでに食べてしっかり休んでおくんだぞ!」

「ご飯…。…僕たち逃げない…。僕たち捕まってない…。」

「あ、そうだ!匂いはエチケットなんだぞ!俺がいい匂いにしてあげるぞ!」


子供達の様子が昨日とは明らかに変わっているのだが、全く気づかないエティ。楽の言葉を思い出し、みんなにデオドラントウォーターを振りかけていく。


「西のみんなにもご飯持っていくんだぞ!みんなゆっくり食べて待ってるんだぞ!」


子供達の返事も聞かず西の部屋を目指して出ていってしまうエティ。子供達はとりあえずご飯を食べ進めていった。


「さぁみんな、ご飯食べるんだぞ!あとオラがいい匂いにしてあげるぞ!匂いはエチケットなんだぞ!」


西の部屋に到着するや勝手にご飯を押し付け、デオドラントウォーターを振りかけていくエティ。ボーッとした子供達は返事を返すことなく、しかしお腹が空いているのかお弁当に手を伸ばす。


「楽のご飯は美味しいんだぞ!これでみんな元気出るんだぞ!」


一生懸命ご飯にがっつく子供の背中にバンバン叩きながら満足感に浸るエティ。すると背中を叩いた子供が思わず食べ物を喉に詰まらせてしまう。


「おぉごめんだぞ!今お水持ってくるから待ってるんだぞ!」


むせる子供のために慌ててドアを引き剥がし水場を探して通路を走る。西もファル達が閉じ込められていた部屋同様、詰所が手前にあった。しかし詰所に水場がなかったことを思い出しスルーするエティ。しばらく探し回ったが炊事場も水浴び場も見つからない。それもそのはず、ここは地下にできた施設。地上のような施設は皆無だった。さらに基本人々は魔法か魔道具で水を調達している。エティも水魔法を使えるのだが、おうちYEAHでの蛇口を捻ったら水もお湯も出てくる環境に慣れきっていて、全く頭をよぎらなかった。


「んー、水が見つからないぞ。そうか、井戸が必要なんだな!」


斜め四十五度の発想で井戸を掘ることにしたエティ。早速ハンドミキサーを生み出し地面に穴を開けていく。場所は、適当である。水脈が近ければすぐに水が出てくるだろうが、そこは適当、水が出るまで永遠に下に掘り進めていく。そして何度かの掘削作業の末ついに、


ゴゴゴゴゴーン!!!


激しい摺流とともに水が吹き出した。


「水見つかったぞ!よし、持ってってあげるぞ!」


吹き出した水をどこからともなく取り出したコップで汲むと部屋に戻るエティ。部屋に戻ってみると子供達は、泣きながらご飯を食べていた。


「みんななんで泣いてるんだ?」

「僕たちここから出たい…。」

「なんだ、それなら大丈夫だぞ!ご飯食べたらオラが外に出してあげるぞ!」

「本当!?助けてくれるの??」

「オラはヒーローだからな!でもさっきは出たくないって言ってたぞ?」

「うん…さっきまでは出たくなかったんだけど…なんでだろう…?」

「きっとあいつらが怖かったんだな!でも追っかけてきたらオラがやっつけてやるから安心するんだぞ!」

「ヒーローさんありがとう…!」


子供達がご飯を食べ終わるとエティは天井に開けた穴を大きくしていく。そしてホバーボードに氷の板を載せると子供達を板の上に乗せて一気に外まで浮上していった。


「わぁすごい…!こんなにいっぱい乗れて空を飛べる乗り物初めて見た!」

「これはヒーローの秘密道具の一つなんだぞ!」

「え!他にも秘密兵器あるの!?」

「あるぞ!でも秘密道具だから秘密なんだぞ!」


子供達を乗せたホバーボードはあっという東のファル達の閉じ込められている部屋に到着した。


「太陽が沈んできたから、逃げる時間なんだぞ!えい!だぞ!」


いきなり魔法を放ち、こちらも天井に開けていた通路の穴を豪快に広げる。激しい爆破の音は地下全体に響き渡りあたりが騒がしくなっていく。しかし、そんなことは気にするエティではない。開けた穴へホバーボードで飛び込み、中の子供達をさっさと回収してしまう。チンとピラを先頭に悪人達が部屋へと駆けつけたが、時すでに遅し、エティ達が飛び去った後だった。


「な、何が…。子供達はどこへ行ったんだ…?」

「チン、まずいぞ!このままじゃボスがブチギレるぜ…!」

「あ、兄貴大変だ!西側が突然水没して壊滅状態に!!」

「なんだと!?」

「あぁ!こっちにも水が押し寄せてきます!!」

「やべー、ひとまず逃げろ!!」


一仕事終えて夕方アジトに戻ってきた悪党たちは何が何だかわからず慌てていた。子供達に逃げられたこともまずいのだが、エティにより闇雲に開けられた穴も手伝って地下アジトが一瞬にして水没。運良く戻ってきていなく難を逃れたのはボスだけだったが、いずれは売却済みの子供達を失い追い詰められることに。こうして一夜にして人知れず人身売買組織が姿を消したのだった。

もちろん、この事実、エティは知る由もなかった。


種明かしをしよう。

お気づきの方も多いだろうが、実は子供達お香による催眠で逃げられないように操られていた。エティもこのお香で操ろうとお香部屋に閉じ込めたのだが、香りに気づくこともなく脱出してしまった。更にデオドラントウォーターにより子供達の催眠も打ち消され、抵抗されることなく救出できていた。知らず知らずにいろいろ解決しちゃう運の良さ、ヒーローを垣間見せるエティだった。

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