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クルは仕事が欲しい

小さいきのこにだってできる仕事はあるのです。

ふと周りを見渡すと、俺達が並ぶ列とは別で門に向かう一行が目に入った。馬車に門と同じ紋章がついているところから推測すると、俺達のような外国からの入国者やビジネス系の入国者はこの長い列に並ばなければならないが帰国者など自国民は審査が早いのだろう。あるいは偉い人なのかもしれない。

すると馬車の窓側に座っていた女性の帽子が風で飛ばされこちらの方に飛んできた。女性は慌てて帽子に手を伸ばすが間に合うはずもなく呆然としている。俺は足元手間に落ちた帽子を拾い、クルのホバーボードを取り出し、おやつ入れ用のボックスに入れる。


「クル、あの人が困ってるだろうから帽子届けてあげられるか?」

「?うん、クル届ける!」

「落としたよ、って言って渡すんだぞ。」

「クル!」


ホバーボードにクルを乗せてあげるとスイーっと馬車の後を追って飛んでいく。うん、クルは配達ができるな。あの可愛さだから届けられた人は嬉しいだろうし。なら、宣伝でもすればすぐ依頼がくるだろう。

きのこ族のクルの宅急便…アピールするならやはりあれだろう。

そして取り出したのが、たこ焼き機。もうお気づきだろう、そう、きのこのばら撒き宣伝菓子を作るのだ。SNSでも一時期話題になっていた【ジャイアントきのこ】を作ろうじゃないか。

ホットケーキミックスとシガービスケットを買ってきたら一瞬で完成だが残念ながらないので、一から作成だ。


【ジャイアントきのこ】


材料

(ホットケーキ)

・小麦粉

・砂糖

・重曹

・レモン汁

・卵

・牛乳

・バター


(石突き用ホットビスケット)

・卵

・サラダ油

・プレーンヨーグルト

・小麦粉

・重曹

・レモン

・砂糖

・塩


(いちごのアイシング)

・砂糖

・卵白

・いちごジャム


まずはホットケーキで傘作り。卵を溶いて牛乳、溶かしバターを混ぜておく。小麦粉をふるいにかけ、ベーキングパウダー代わりの重曹にレモン汁を加えて混ぜておいたものを少し加えておく。そこに卵液を何回かに分けてダマができないように混ぜる。後は軽く油をしいたたこ焼き機に注ぐだけだ。

たこ焼き機火を入れる前に石突きクッキー作り。

卵、サラダ油、ブレーンヨーグルト、ふるいにかけた小麦粉、ベーキングパウダー代わりの重曹レモン汁、砂糖、塩少々を全てボウルに入れて混ぜ合わせる。しっかりまとまったらフライパンに2cmくらいの細い棒状にして並べて弱火で12分ほどじっくり焼いていく。焦げないように途中転がしてあげるとよい。

こんがり焼けた石突きクッキーをたこ焼ききに流し込んだホットケーキ生地に突き刺し焼いていけばジャンボきのこの出来上がり。

焼いている間にいちごのアイシングを作っておく。

卵白を溶いて砂糖をふるいにかけたものを加えながら混ぜていく。艶っぽくなってきたらいちごジャムとレモン汁を加えて再び混ぜる。どろっとしてきたらいちごのアイシングの準備はオッケー。袋に入れ、先を少し切り落として絞り出せるようにしたら、出来上がったジャンボきのこの傘に『クルの宅急便』と書いていけば、きのこのばら撒き宣伝菓子の完成だ。

ちなみにリアがいなくて『クルの宅急便』の書き方が分からなかったので後ろに並んでる人に教えてもらった。お礼に完成したジャイアントきのこを贈呈しておいたが、すごく喜んでくれていた。これなら宣伝効果を期待できそうだ。


きのこのばら撒き宣伝菓子が完成したタイミングでクルが戻ってきた。


「ありがとって言ってたよ。」

「そうかそうか、良かったな!流石クルだ!」

「うん!お届け楽しかった!」

「クルに届けてもらったらより嬉しいもんな。そこでクル、他のみんなもクルにお届けお願いしてくれたら嬉しいか?」

「依頼?うん、クル届ける!」

「そう思って、クルが依頼待ってるって知ってもらうためのお菓子作ったんだ。ほら。」


カゴいっぱいのジャンボきのこを見せるとクルが思わず飛び込む。


「おぉ、クル危ないぞ…。」

「甘いきのこ、おいしい!いちごの味がするよ?」

「お、よく分かったな。ピンクのところはいちご味なんだぞ。しかも、美味しいだけじゃないんだぞ。ピンクのところ『クルの宅急便』て書いてあんるんだ。これならみんなクルに配達お願いしてもいいってわかるだろ?」

「依頼くる?」

「そうだぞ。それじゃ、おいしいをいろんな人にお裾分けしておいで。」

「クル!」


きのこバスケットをぶら下げてあげると、再び列に向かって飛んでいくクル。その後ろ姿にちょっとほっこりする。これが我が子の成長を見守る親の気分なのだろうか。

暖かい眼差して見つめていたらクルが突然進行方向を変えて列から離れて飛んでいく。


「クル?」


何事かと駆けつけたくなるが、今やひとりで列に並んでいる状態。列から離れるわけにもいかず、クルの進む方向を見ているとその先にとぼとぼ歩く老人と小さな子供が見えてきた。列に並ぼうとしていないところを見ると帰国者なのかな?程なくクルが老人達のもとにたどり着き何やら話した末にきのこを渡している様子が窺える。遠いから会話はさすがに聞こえてこないが老人がペコペコ頭を下げているから喜んでもらっているのだろう。


「あんちゃん、前進んでるぞ。」

「あ、はい、すみません。」


いつのまにか列が進んでいたようで、慌てて荷物をまとめ前へ進めていたらいつのまにかクルがいなくなっていた。きっと次にきのこをあげる人をみつけ、移動したのだろう。


「まぁでもクルのいい仕事も見つかってよかった。折角商業の国に来たんだ、俺もデオドラントで商売始めてみようかな?ひとりぼっちになっちゃって暇だし、ゆっくり考えてみるかぁ。」


こうしてイルーヴァントの旅は入国目前に全員別行動から始まることとなった。

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