東の国イルーヴァント
遂に新しい国。でも入国にはまだまだかかりそうです。
デオドラントから更にシャンプーなども作り、無事俺の尊厳は守られた。クルはリアの頭の上にいることも多いが俺の頭の上にも徐々に戻ってきて、平穏な旅が戻ってきた。ホバーボードの旅は魔物の届きにくい安全高度を飛べば、安全かつスピードも良好、くつろげる分座りっぱなしの飛行機よりも楽な気がする。
美味しそうな魔物が襲ってきたらリア達が狩り、俺が調理。高いところから見下ろしているため湖や果物なども見つけやすく、飽き性のエティも程よく興味を注げるものを見つけられて何ヶ月旅したってへっちゃらな快適さだ。
「お、遂に人里が見えてきたんじゃないか?」
「本当か!丁度オラのヒーロー衣装が完成したところ!バッチグーなんだぞ!」
リアに手伝ってもらって何やらヒーローコスチュームを作っていたエティ。静かで良いと思っていたが次の街到着のタイミングで完成したようだ。どれどれ、とコスチュームを覗き込もうとしたらササっと隠すエティ。
「だめだぞ!初登場までのお楽しみなんだぞ!」
「ちっ。まぁどうせ亀みたいなのだろう。」
「な!」
俺の推測にアワアワするエティ。まぁいい。まずは街に集中しよう。
見えてきた街は壁に囲まれて外からは様子が窺えないが、高い建物もちらほらのぞいていて立派な街であることが窺える。壁はインパクト大なデザインで、いろいろな色や素材が組み合わされていて、よく言えばアーティスティック、悪く言えばつぎはぎだ。
「斬新なデザインの壁だねぇ。」
「イルーヴァントは無駄を嫌う国と聞いたことがある。あの壁も素材を有効活用したのかもしれない。」
「へぇ。パッパさん達も商魂たくましかったし、イルーヴァントってやっぱり商業の国なのかな?」
そんな話をしていたら国の入り口らしき巨大な扉が見えてきた。扉の前には長蛇の列。やはり入国するには並ばなきゃならないのか。仕方なく最後尾に並ぶべく列を目指して進んでいき、ある程度のところまできたら余計な騒動を起こさないようにホバーボードから降りて徒歩移動に移行した。ホバーボードさえ見せつけなければ目立たないだろうと思っていたが、人族そっくりの俺、謎のこだま、謎のエティ、エルフ、謎のきのこ、ほぼ全員特殊な種族で構成されていたためすごい勢いで注目を集めてしまった。しかし珍しいもの慣れしているのか絡まれるまではいかなかったので気にせず並ぶことに。それにしても物凄い長い列。遠くから見た段階では数日くらい掛かるのだろうと覚悟していたが、流石商業都市、出入国に慣れているのか思ったよりも列の進みが早い。
列に並ぶ人達は隣の国とあって獣人族が割と多いが爬虫類系の人種もちらほら。羽の生えた人たちや髪の毛が炎のように揺らめいている人、ハニワみたいな謎の素材の種族までいて実に多種多様だ。ただこだまやエティと同じ見た目の人はいなく、これだけいろんな種族がいるというのに俺達はことさら珍しい一行であることは間違いなかった。
列に並ぶ種族を眺めたり、どんな行商人がいるのだろうかと推測しながらしばらくのんびり並んでいたら数組の男達が俺達の一行に近づいてきて声をかけてきた。
「そちら噂に名高いリア殿とお見受けする。そなたに仕事を依頼したく、話を聞いていただけないだろうか?」
真っ直ぐにリアの元にやってきて深々と頭を下げる男達。すると男達に続いて別のグループがこだまの元に。
「名工のこだまさんですよね!お願いします!どうか俺たちを助けてください!!」
どうやらこだまにも仕事の依頼が来たようです。
「なんでみなさんリアやこだまの事知ってるんですか?」
「商いをするものにとって情報は命ですぞ。当然リア殿の狩りの腕前もことも、こだま殿の職人技の情報も掴んでおりますぞ。」
「へぇー。俺の事は?」
「当然存じております。ただ…楽殿はまだ修行先の決まっていない見習いの身。また腕を付けられた際には依頼をするやもしれぬが…。」
「あ、はい。それ以上は大丈夫です…。」
なぜか俺の家事手伝い情報まで知れ渡っているようだ。
「依頼をしたいという事だけど、どんな依頼?」
「おぉ!お話を聞いていただけるんですね!ではぜひ街の方で。ささっご案内いたしまず。」
「こだまさんもぜひ街でお話し聞いていただけませんか!?もちろんお食事もご用意しております!」
「うん。行く。」
即答のこだま。異常に腰の低い男達に囲まれてさっさと街に向かってしまう。リアはこちらを気にするようにちらちら見てくるが、依頼のことが気になって仕方ない様子。
「気になるんでしょ?行ってきたら?」
「うん。そうする。」
俺の言葉にパァっと明るい笑顔を見せ、リアも男達と街に向かって行った。取り残された俺達、ふと見回すとエティの様子が見当たらない。
「エティ、呼ばれたって言ってどっかいっちゃった。」
「え、そうなの?いつのまにか俺達だけ取り残されちゃったのか…。」
「楽、楽。あのね、クルも依頼欲しい。」
「くぅ〜、クルも依頼が欲しいのねぇ。」
おねだりするクルの可愛さに悶絶しつつ、このおねだりにどう答えるべきか頭を抱える。
「俺が依頼するんじゃきっとクルは納得しないし、そもそも何を依頼する?」
「???」
クルはワクワクした様子で俺を見つめている。しばし見つめあい、やばいくらい汗が出てきた。
クルに出来ることってなんだ???
この可愛さを活かしてアイドルとか?でもアイドルに依頼ってピンとこないしな…。




