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のんびり旅

40代は悩みが尽きないお年頃です。

「ま、まさか…。おわりだ…。絶望だー!」


慌ただしくクラッグさんの家を後にした俺達は東の国イルーヴァントを目指しホバーボードを走らせていた。と言っても徹夜明け、岩とかにぶつからないように高度を上げゆっくりめの自動運転で休憩しながらの移動。天気がいいから外で寝っ転がってまどろんでいる平和な空気の中、俺は絶望で崩れ落ちていた。

事の発端は頭の上のクル…


「あれ、クル?」


いつも俺の頭の上にいるはずのクルが見当たらずキョロキョロしていたらリアに肩を叩かれた。


「クルなら私の頭の上にいるよ。」


いつのまにかリアの頭に移動していたクル。なんだろう、ちょっと寂しさを感じる。


「どうしたクル?いつもは俺の頭の上なのに。」

「なんかベタベタする。あと、ちょっと臭い。」

「な゛…!!!!!」


これが絶望の理由。加齢臭か?加齢臭なのか???確かに徹夜明け…お風呂に入りそびれたけど…。40オーバー、匂いはとっくに曲がり角回っちゃってる。リアの頭の上で気持ちよさそうに眠るクルを見つめ涙を流しながら風呂に駆け込んだ。入念に、しかし頭皮を痛めないよう優しく髪を洗いしっかり湯船に使って温まる。加齢臭対策はとにかく丁寧に洗うこととしっかり湯船に浸かることって聞いたことがあるから。

湯船で頭皮の油と心のダメージを溶かすことができた俺は、扉の外に飛び出し高らかに宣言した。


「俺は、デオドラント王になる!」


疲れてお休み中のみんなは誰一人反応してくれず虚しく声だけが響き渡った。でも俺はめげない。早速材料を探すべく地図を広げた。必要なのはミョウバン、エタノール、ハッカ油、水、重曹、タピオカ粉。地球なら全部ポチってするだけだが…まずはミョウバン。確か日本でも江戸時代から精製していたはずだからやってやれないことはない。ミョウバン温泉を探しだそう。運が良ければ天然のミョウバン石が手に入ると楽なんだが…。エタノールは手に入れ方がわからないので取り敢えず強い酒で代用。ハッカ油はペパーミントなら持っているのでペパーミントオイルを作って代用。重曹も手に入れ方がわからないので天然を探す。地球だとモンゴルにシリンゴル高原っていう天然の重層が湧き出る場所がある。探せばこっちにだってあるはずだ。そんな訳で某ストーン系漫画風にデオドラント作成のロードマップを作るとこんな感じに。


1、ミョウバン温泉でミョウバンゲット

2、強いウォッカをエタノール代わりに購入

3、ペパーミントを乾燥・すり潰してオリーブオイルに浸してペパーミントオイルを作る

4、蛇口を捻って水道水をゲット

5、重曹が湧き出る場所を探して重曹ゲット

6、キャッサバを潰してこして乾燥させてタピオカ粉ゲット

7、材料を全部混ぜてスプレー容器に入れればサラサラパウダー入りデオドラントスプレーの爆誕


2、4、もうクリア済みだし、3は簡単。実はいつか使えると思ってキャッサバを見つけたときに大量に確保し作っておいてあるので6もクリア済み。問題は1と5だが、ここは精霊コンビを頼ろう。そう考えると正しいロードマップはこうなる。


1、タピオカで甘味を作って精霊コンビを呼び出す

2、精霊コンビがミョウバンと重曹をゲットしてきてもらう間にペパーミントオイルを作る

3、材料を全部混ぜてスプレー容器に入れればサラサラパウダー入りデオドラントスプレーの爆誕


実質タピオカで何か作って、後は混ぜるだけ。めちゃくちゃ簡単だ。

そうとなったらタピオカ粉で豪華なデザートを作ろう。豪華といえば【水晶湯円】なんてどうだろう?見た目に美しいし、食べ応えもばっちし。これならきっと快くお願い聞いてくれるだろう。


【水晶湯円】


材料

・タピオカ粉

・水

・紫芋

・カボチャ

・ごま

・はちみつ

・レモン

・砂糖


まずはタピオカ粉に水を加えてよくこねる。よく言われる耳たぶくらいの硬さまでしっかり混ぜたら細長く伸ばし、1cm角に切っておく。

続いて餡作り。

紫芋とカボチャは蒸して裏ごし。そこにはちみつを加えて紫と黄色の餡が完成。

ごまは蜂蜜を加えミキサーで液状に。製氷機に通常の氷の半分の量で凍らせておく。

あとは1cm角のタピオカ団子を薄く伸ばして餡を入れてお団子にしていくだけ。3種類の餡の団子が完成したら茹でていく。タピオカ団子は茹で上がると白から透明に、中の餡が透けて見えるツルツルのお団子になるのだ。まさに映えです。透明に茹で上がり浮いてきたらすぐに氷水に入れて冷やす。

最後に水、砂糖、レモンを軽く煮詰めてシロップを作り冷やして置いたものに団子を入れれば完成だ。


「せいれいさー…」

「「もういる(わ)(ぞ)」」

「ほれ、ミョウバンと重曹も持ってきてやったぞ。だから団子ジャンジャン出せ。」

「え、早!ありがとうございます…。」

「タピオカミルクも欲しいわ。急いで作ってちょうだい。」

「り、了解。少々お待ちを…。」


慌てておもてなし料理を作り始める。


「うまうまうまうま。」

「ほんと美味しいわ!」

「こりゃいくらでも食べれるな!」


エティ達はまだ夢の中だというのにこだまだけしっかり起きて【水晶湯円】を堪能しています。きっとエティ達が後からブーブー言いそうだからあいつらの分もたっぷり作っておくか。

ブームが起こるだけあってタピオカミルクも大好評。結局大量に作って置いたタピオカ粉が底をつくまで作らされた。まぁ、ミョウバンと重曹をたっぷりゲットできたから良しとしよう。


「それで、そのデオドラントとはどんなものなのだ?早く作って見せるのだ!」


安定の心読みで何に使うかも把握済みのガルゥボーイがデオドラントに興味を持って催促してくる。もしやがルゥさんあなたも悩んでいます?年齢特有のあのスメル。


「精霊は匂いがない。悩むわけがないだろう。」

「さいですか。まぁデオドラントはめちゃくちゃ簡単なんでさくっと作って見せますね。」


【サラサラパウダー入りデオドラント】


材料

・ミョウバン

エタノール

・ペパーミント油(ハッカ油)

・水道水

・重曹

・タピオカ粉


作り方は基本的に混ぜるだけ。水500mlに焼いてパウダー状にしたミョウバン15gを入れて溶かす。混ぜるだけと言ってもミョウバンはすぐには解けないので何度か混ぜて一晩置くと解けきる。今回はさくっと精霊様の魔法で時短だ。因みに水より水道水がおすすめ。水道水なら精製水よりも腐敗しにくくなるからだ。久々おうちYEAHによるチートですね。

ペパーミント油はペパーミントを乾燥しすり鉢ですり下ろしてオリーブオイルに投入。一晩つけておく。翌日布で越して、再びすり下ろしたペパーミントを投入。2〜3回繰り返せば程よい濃度のペパーミント油ができる。もちろんこちらも精霊様々で時短。

ミョウバンが水に溶けたら酒10mlとペパーミント油2〜3滴を加えて混ぜるだけでデオドラントウォーターが完成だ。

ここにサラサラパウダーを入れていく。このサラサラパウダー、実はベビーパウダーだ。重曹とタピオカ粉半々の配分で混ぜれば食べても大丈夫なオーガニックベビーパウダーに。このパウダーをお好みの量デオドラントウォーターに加えるだけ。材料さえ揃ってれば混ぜるだけの簡単レシピ。


「ふむ、妙な水だな。効果が楽しみだから早く使ってみろ。」

「これはこう使うんです。」


家にあったスプレーボトルに自家製デオドラント を入れて脇や足など匂いが気になる部分に吹きかける。たちまち匂いが抑えられるだけでなく、ペパーミントの爽やかな香りが広がる。


「なるほど、ミョウバンが匂いを抑えつつペパーミントが爽やかにしてくれるのか。考えたもんだな。」

「考えたのは地球の誰かすごい人ですけどね。」

「乾いた後のサラサラとした感じ悪くないわね。しかも加える油を変えればいろんな香りがたのしめそうね。私も少し分けてくださる?」

「これだけ大量に材料がありますから、好きなだけ持っていっていいですよ。」

「食べても美味しいし、サラサラぱうだーにしてもいい。タピオカって最高ね〜。」


こうして俺は男の3大臭に打ち勝ち、人としての尊厳を取り戻すことに成功した。クルが起きるのが楽しみだ。

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