移動道具を発注しよう
みんな大好きドワーフの道具作りがはじまります。
「宙に浮かぶ板を作ってくれだぁ?」
翌日改めて移動道具の作成を依頼しに行ったら、突飛な発想に訝しげな表情をするクアワさん。クアワさんはジクロブ・ハフナの王であると同時に国一番の道具発明家らしいと聞きいて朝イチで訪れていた。
「この素材みてください。ジャクブズという魔物の殻なんですが、魔力を入れると浮かぶ素材なんです。」
「聞いたことない魔物だなぁ。」
そう言って殻のひとつを手にとり、一気に魔力を注ぎ込むクアワさん。
「あ…あんまり注ぎすぎると…」
忠告間に合わず、殻を握ったまま急上昇したクアワさん、勢い余って天井に突き刺さっています。あの威力、きっとクアワさんは豊富な魔力の持ち主なのでしょう…。惜しい人を亡くしたものだと手を合わせて拝んでいると、瓦礫を押し除けてクアワさんが戻ってきた。
「勝手に人を殺すな!しかし、こりゃー面白い素材だな!一体どこで見つけてきたんだ?」
「ジャクブズは魔の森の中心近くに生息している魔物です。硬いし、魔法当てると浮かび上がっちゃうし、倒すの大変でしたよ。」
クアワさんにジャグブズの説明をすると、興味深そうにいろいろ試しては驚いたりを繰り返していく。
「強度があるのにすごく軽い。しかも魔力の伝導率がえらくいい。こりゃーいろんな新しい道具が生み出せるぞ!」
「そうなんですか。でも俺魔法使えないんです。そこで、魔石を使って俺でも使える、空飛ぶ乗り物を作りたいんです。」
発明家であるクアワさんはワクワクした様子で俺のアイディアに耳を傾ける。目がキラキラしていて実に楽しそうだ。これなら引き受けてくれそうだ。
「なるほど、平たい板に加工して、魔石のボタンを作って浮かせるってわけだな。しかも魔石の強弱で浮かぶ高さを調整すると。人族みたいな顔して面白いこと考えるじゃないか!よし、やってみようじゃないか!」
「引き受けてくれますか!よかったぁー。」
「こんな面白そうなこと、他のやつには譲れん!早速取り掛かるから素材全部だせ!魔石も全部出せ!あと面白そうな素材もってるなら全部出すんだ!」
物取りみたいな発言していますが、とりあえず持ってるの全部渡しておけばなんか面白いの作ってくれそうな雰囲気なので素直に出すことに。因みに俺が発注したのは、宙に浮くボード。そう、ホバーボードだ。これなら魔の森のような根っこだらけの場所でも難なく移動できるし、渓谷だって降らずまっすぐ対岸まで飛んでいける。重い荷物を運ぶときの台車がわりにもなるし、何枚か繋げれば馬車みたいにもできる気がする。是非とも完成させて欲しい。
「おぉ!すごい魔石じゃ!こんなの滅多にお目にかかれないぞ!」
「それ小型ではあるけど、ドラゴン系の魔石ですから。」
「なんと!ドラゴンじゃと!!お前達が倒したのか!?」
「いや、おっきいドラゴンがちっちゃいドラゴン倒してて、それをちょっと拝借してきただけですけどね。」
「なんと!いいものを見つけたな。お前達は運がいい!」
俺たちの話に興奮気味で返してくるクアワさん。めちゃくちゃ声がでかい。
「うるせーな、クアワ!なんの騒動だ?」
騒ぐクアワさんの声を聞きつけて屈強な男達が店に入ってきた。
「おぉ、昨日のつまみの兄ちゃんじゃねぇか?ん?なんだその素材は…?」
屈強な男達も加わってクアワさん達が盛り上がり始めました。ジャグブズの毛やドラゴンの爪、牙などの貴重な素材まで取り上げられてしまった。素材を取り上げるだけ取り上げたら、夢中でおしゃべりを始めてしまい話しかける隙がなくなってしまった。もう仕方ないから任せるしかなさそうです。どのくらいで完成するかもわからないし、しばらくこの国に止まるか。そうとなれば、昨日はドタバタ&簀巻状態だったからいろいろ見れなかったし、どんな国なのか見て回ろうかな。しばらく滞在するための拠点も必要だし。
こうして俺たちはクアワさんの店を後にした。
「はじめて来たけど、ジクロブ・ハフナとは不思議な国ですね。」
リアが言う通り、ジクロブ・ハフナは独特な雰囲気の国だった。家はどれもピーターラビットにでも出てきそうなホビットハウスで、小高い丘の下をくり抜いて作ったような家や巨大な切り株をくり抜いて丸いドアをつけたような家やがたくさん集まっている。そして鍛冶や道具作りを生業にしているからか、どの家からも煙突が出ている。
「本当だね。それに、煙の色が…家によって全然違う?」
煙突から立ち昇る煙が実に色とりどりだった。香りはそんなに違いがないから色の違いが何かはわからない。真っ赤なものや黄色いものが比較的多いが青や緑もちらほら見える。逆に白い煙は見当たらない。
「楽!楽!あの家からは5色の煙が出てるぞ!面白そうだから行ってみるぞ!」
エティが気になったという家は街の大分外れ、小高い丘に建つポツンと一軒家だった。他の家と違って細いけれど5つの煙突が建てられていて、ボフッボフッと煙を吹き出している。そしてそれぞれ赤、青、黄、緑、紫と5色の煙が立ち上っている。周りには他に家がなく、近づく人もいないように見える。あーゆう所に踏み入れると何か面倒ごとが起きる気がするなぁ…と思うのだがエティがガンガン走っていく。仕方なくエティの後を追いポツンと意見やへと向かった。
「ごめんくださーい?」
家の見た目的には街の家と変わりない。しかし煙が立ち昇っているにもかかわらず音が聞こえない。ノックしても返事がないので、こういう時は必ず開いちゃうんだよな…と思いつつ試しにドアを開けてみたらすんなり開いてしまった。仕方なく声をかけつつ覗いてみる。
「楽!楽!髭が落ちてるぞ!」
「正しくは髭のおじさんがな。えっと…大丈夫ですかー?」
ドアを開けた先には喋るを握ったまま倒れているドワーフがいた。
グーーーーーーッ
声をかけた途端腹の虫で返事をしてくるドワーフ。そうなりますよねー。ため息をつきつつ家に入り、今朝朝ごはんで食べたホットサンドの残り物を口元に持って行ってみる。すると予想通り一瞬で消えて無くなる。残っていた分を全て与えたらようやくドワーフが意識を取り戻した。
「な、なにかうまいものを食べた夢を見た気がするぞ!」
「おっちゃんホットサンド食べてたぞ!ホットサンドはうまいからな!」
「ホットサンド…?聞いたことのない食べ物なのだな。ん?お前達何者?」
普通にエティと話しているなと思っていたら途中で訪問者に気付いてくれたようだ。
「いかん!釜が!!」
しかし釜の管理を思い出し俺たちをほっぽってまた作業に戻ってしまった。煙と同じ5色の石が部屋の隅に積み上げられていて、順番に窯へと運んでいる。外から見えた5本の煙突は1つの窯へと繋がっている。どうやって色毎に煙突が別れるのか謎である。エティが釜の中を覗いたり、石を手にとってみたりしているがドワーフはエティを全く気にすることなく作業を続けている。あれが気にならないなんて相当な精神の持ち主と見た。しかし、いつまで俺達をほっぽっておく来だろうか…。




