プチ飯テロ⑦ジクロブ・ハフナ王国
仲良くなるには酒が一番。
「この門を潜ってもらおう。このゲートは人族に反応し刃が飛び出す。もし人族が潜ろうとすれば串刺しとなるだろう。」
あれよあれよと言う間に捕まって俺だけ簀巻レベルで縛られたのち、連れてこられたのは、巨大なゲートの前。まさかの人族探知機だった。刃が飛び出して串刺しって…。俺は水晶に人族じゃない判定してもらった男、絶対通れる、はずだけど…誤診で死亡なんてことないよね?
「さっさと通るんだ!」
腰が引けてもたもたしていたら蹴り飛ばされてあっさりゲートを通過。何事もなく通り抜けることに成功したのは良かったが、少しちびりそうだったよ。
「むむ。貴様何をした!?これは、人族が通れるはずがないのだぞ!?」
「いや、そこは人族が通れないゲートを通れたから人族じゃなかったのか、でしょ?」
「悪知恵が働いてこそ人族だからな!ガッハッハ!」
何が嬉しいのか、大声で笑うドワーフ。どうしたら信じてもらえるのでしょうか。
地球でのドワーフのイメージといえば、大酒飲みで意地汚いが、手先が器用であり、鉱夫あるいは細工師や鍛冶屋などの職人であると同時に戦士。酒なんて持ち合わせてないし、意気投合できるような職人トーク術も持っていない。そもそも、仕事を依頼しに来たわけだし…。そうだ!
「俺は人族じゃない。第一ここにはあんたらの腕を見込んで道具を開発して欲しくて来たんだ。人族は頼みに来たりしないだろう?」
「ガッハッハ!人族が俺たちに頭下げてくるわけがないからな!」
「ってことは俺は、人族じゃ…」
「ないってか!?ガッハッハ!そんなわけあるかい!!」
ですよねー。しかしこのドワーフ、人族を嫌っている割には普通に会話してくれている。根は悪い人ではないのかもしれない。
「楽、お腹すいた。」
「あ、オラもオラも!」
俺簀巻状態なんだけど、気にした様子なく訴えかけてくるこだまとエティ。リアは…顔を逸らしましたが肩が笑ってますから!簀巻にされた俺の頭から救出されたクルは、リアの手の上で指でなでなでしてもらっている。俺のことはお構いなしになでなでを楽しんでいます!
「ガッハッハ!確かに腹減ったな!よしこっちこい!」
そう言うと、早よ、早よ、と手招きしてこだま達を連れて行きます。俺は簀巻だから引きずって。連れてこられたのは、集会所?なのだろうか、ビアガーデンのような広場だった。左右にバーベキュー場のような焼場が作られていて、岩を削り出して作られたテーブルと椅子が割りの酒樽があちこちに置かれている。
「ここは?」
「集会場に決まってるだろ!?まぁ最近は飲んでばっかだがな!ガッハッハ!」
尋ねると人族と疑われているのに普通に教えてくれた。集まるとついつい宴会になってしまうらしく、最近は集会=飲み会となりつつあるそうだ。飲み集会のためか焼場がつくられ、空になった樽が椅子として使われている。ちゃんと話し合いは出来ているのだろうか?
「ちっこいの、俺たちはこっちの焼場を使うから、お前たちはそっちの使っていいぞ!話しは腹ごしらえした後だ!」
俺の真偽はご飯で一旦保留するようです。こだまが催促してくるので何か作るか。ドアーフの方はせっせと樽を運び入れてるからやっぱり飲み会のようです。そう言うことなら、人身掌握の基本、献上飯と言う名の飯テロといきますか!
つまみと言えば、えだまめとかチーズとか?みんなでわいわいつまめるスナックも良いな。ハンバーグ狂のこだまもいることだし、【キョフテ】と【台湾風枝豆】でも作るか。【キョフテ】は言うなればトルコのハンバーグ。インドのシシカバブみたいな挽肉料理。スパイスがたっぷりでガツンとした味だからビールに合わないはずがない。【台湾風枝豆】はにんにくと鷹の爪で旨さブースト版枝豆。ただでさえビールに合うのに追い討ちかける危険なやつだ。
【キョフテ】
材料
・牛挽肉
・すり下ろし玉ねぎ
・すり下ろしにんにく
・パセリ
・塩
・胡椒
・クミンパウダー
・シナモンパウダー
・オールスパイス
・コリアンダーパウダー
作り方は豪快に。ボウルにすべての材料を入れて捏ね捏ね。油を薄ーく塗った串に長いソーセージみたいに固めていく。後はじっくり炭火焼。柔らかさを求めてハンバーグみたいに牛乳に浸したパンを入れるレシピもあるようだが、俺はガッツリ肉感が好きだから入れない派だ。本当はマトンバージョンが好きだが、今回は万人受けの牛で。そう言えば最近マトン食べてないなー。そのうちマトン料理も作りたい。
簡単すぎて思考が別料理にいきそうなので、次の【台湾風枝豆】へ。これも一瞬でできてしまうが。
【台湾風枝豆】
材料
・えだまめ
・ごま油
・にんにく
・鷹の爪
・醤油
・塩
・胡椒
フライパンにごま油をひいてみじん切りにしたにんにくと鷹の爪を炒める。香りが立ってきたら塩茹でした枝豆を入れて炒める。全体になじんだら醤油・塩を少々とたっぷり胡椒を入れてさらに炒めればあっという間に【台湾風枝豆】の完成だ。鞘ごと炒めているのに、中はしっかりピリ辛味。指を舐め続けたくなる味だ。
「うまうまうまうま」
「この枝豆はすごいぞ!オラの手まで美味くなったぞ!」
安定のいい食べっぷりのこだまと、手を舐め続けるエティ。おこちゃま舌だがつまみもいけるようだ。
「スパイスの香りが鼻を抜けて、ハンバーグとはまた違った味わいですね。強い味がもっと食べたくさせてくれる。」
「クルこの枝豆好き。楽、デザートは?」
美食家みたいな食レポするリアと、もりもり食べながらデザートを要求するクル。みなさん相変わらずです。
がっつくみんなの様子とスパイス&ピリ辛にんにくの香りに隣で宴会するドワーフ達がちらちらこちらを見ています。
「みなさんもお酒のつまみにいかがですか?きっとお酒に合いますよ。」
酒に合うと言われれば断れるわけがない。ドアーフは訝しげな顔をしつつ料理に手を出していく。
「「「「「うま!!!!!!」」」」」
「めちゃくちゃうまい!」
「さ、酒がとまらない!」
「お前はつまみがなくてもとまらんだろ!」
「おい!【台湾風枝豆】追加頼む!」
「おれは【キョフテ】の方追加で!」
俺の人族疑惑が晴れていないというのに背中をバンバン叩きながら料理を褒め、追加を要求してくるドワーフ達。いつの間にかこだまもエティもリアも、みんなドワーフと混ざって宴会の様相に。
俺も肩を組まれて酒を勧められている。それはまるで初めましての人たちが酒の席で一気に意気投合する新歓コンパのよう…。うまい飯と酒は人との距離を縮めるいいスパイスですね。
「うん、お前は人族じゃない!こんなうまいつまみが作れるんだからな!ガッハッハ!」
謎ロジック炸裂で俺の存在を認めてもらえたようです。献上飯成功ですね。
「俺はジクロブ・ハフナ王国の王、クアワだ!ようこそジクロブ・ハフナ王国にだな!ガッハッハ!」
「お、王だったんですね…。俺は楽。こっちは、こだま、エティ、リア。頭の上にいるのがクルです。」
「おう!みんなよろしくな!しかし…エルフの嬢ちゃん以外はみんな見たことない種族だな!」
まさかの王でした。エルフ以外は初めて見る種族らしいですが、人族じゃなければ知らない種族でも警戒しない大雑把な人達のようです。ま、ドアーフのイメージ通りではありますが。これでやっと道具の依頼ができるなと胸を撫で下ろしたまでは良かったですが、広場の宴会は夜中まで終わることなく続き、お酒にそこまで強くない俺はいつの間にか意識を手放していましたとさ。




