ワノナ国大都
戦わずして帰れば…怒られるのは当然ですよね?散々な目にあうコウウのその後です。
ーコウウ視点ー
「失礼します!」
豪華絢爛な大広間。壁には金の刺繍のタペストリーが所狭しと掲げられている。そのデザインは歴代の国王を象徴する紋様。中央には縁に金の刺繍が施されたレッドカーペット。カーペットの両脇には筋骨隆々な武官に始まり、仕立ての良い服を召した貴族然とした男達が並ぶ。その中央、レッドカーペットを颯爽と歩くのはソッジャの村から帰還したコウウその人だった。
帰還後すぐに、王に遠征の報告に。コウウはその若さ故に日の目をなかなか見れずにいるが、非常に優れたリーダー、例え失敗に終わったとしてもきっちり報告義務を全うする男なのだ。
「王ギキョウ、コウウ第九騎士団長、ただいま帰還いたしました。」
「お前達、聞けばエルフの国に攻め込まず、のこのこ帰ってきたそうじゃないか?」
「…はい。部下達の食料が足りなくなり止むを得ずの撤退、私の算段が間違っておりました…。」
「なるほど、つまりお前達は遠足に行って帰ってきただけと?」
「…はい。」
たっぷり嫌味を込めたギキョウの言葉に唇を噛むコウウ。
「王ギキョウ!このもの達は貴重な兵糧を無駄にした!これは責任問題ですぞ!」
「そうだ!我々は大きな戦を控えているんだ!」
「王ギキョウ、これは由々しき事態ではありませんか!」
「だからこんな若造に1団任せるなんて早すぎたんだ!」
ガヤ貴族がここぞとばかりに煽り立てます。決して高貴な生まれとは言い難いのに、若くして実力でのしあがったコウウは貴族達から煙たがられている。非の打ちどころのなかった若造の初めての失態、付け入らないはずがない。
「それにエルフを捕らえられなかったのも問題ですぞ!」
「あの勇者か…。けもみみ…だったか?獣人族とエルフの仲間がいなければ戦えないと抜かしておったな。まぁ橋が完成するまでにはまだ時間がある。そっちは高くつくが奴隷商をもう一度あたらせろ。」
「はっ!了解であります!コウウこの借りも努々わすれるなよ!」
「…。」
コウウが出陣して程なくした頃、大都ではスキルを使いこなすため訓練に勤しんでいる勇者がエルフを仲間にしたいと言い出していた。エルフを仲間にすることが趣味なのか、それとも作戦なのかはわからない。なんとなく前述が理由だろうと思いつつ、異世界チートで高い戦闘力を有する勇者をうまく戦争に絡ませるために、人族はエルフを調達しなければいけなくなった。丁度コウウが向かっているのでそこに期待しようと思っていたのだ。つまりエルフを捕らえる命など受けてなかったコウウ。身に覚えのない借りをつくられるのだが、反論しづらい状況に下唇を噛むことしかできなかった。けもみみに関しては既に奴隷を宛てがっていたのだがエルフはその能力の高さからなかなか捕らえることが難しい。奴隷商もなかなか手に入れることができない商品だった。
「それで、お前はどう考える?」
「考える…とおっしゃりますと…?」
「どう責任を取りたいか、ということだ。」
正義感の強いコウウを試すようなギキョウの言葉。自ら厳しい罰を選択せざるを得ない。ニタニタ笑う貴族達に臆することなく考えを巡らし思い立つ。食べ物による失敗は食べ物で取り戻すべきであると。
「今回の遠征で気になる料理を発見しました。その料理はエゾに秘密がある可能性があります。エゾの地に向かい、失った兵糧を確保してまいります。」
「なるほど。では、無駄にした兵糧を集めてくるというのだな。よかろう。ただし…部下の騎士達は置いていけ。」
「「「え??」」」
ギキョウの言葉に貴族まで声を漏らします。
「今二番隊と三番隊が魔族へ攻め入る準備のため北に向かっている。」
「北へですか?北と魔族の住む大陸とは繋がっていなかったはずでは?」
「繋がっていないのならば繋げればよいのだ。二番隊と三番隊は近くに点在する島を橋でつなぎ北への道を建設しておるのだ。魔族どもはよもや道ができるなどとは思っておるまい。その油断の隙をつくのだ。」
「しかし橋となると莫大な資金と労力が必要なのでは…。」
「だからお前の部下達には食糧の運搬要員として動いてもらうというのだ。部下を連れて行ったらまた食い尽くすだけだろ?ハッハッハ!」
「そ、そんなことは…。…分かりました。エゾへは私と直属のバチョウ、レイキョウの3人で行って参ります。」
士気の高い部下達をただの補給要員に使われる屈辱をグッと堪え、応じるコウウ。堪える顔に溜飲が下がったのか見守る貴族達も嬉しそうだ。
「面白そうねぇ。私もお供しますわぁ!」
突然溌剌とした若い女性の声が広場に響き渡る。みな一斉に振り返ると、着物のようなドレスのような、奇抜な着こなしの女性がツカツカと歩いてくる。真っ先に驚きの声をあげたのはギキョウだった。
「な、アイファ!何を言っている、ダメに決まっているだろ!!」
「コウウと共に行けばぁ、新しい食に出会える可能性があるのでしょう?私が行かない理由はなくってぇ?」
「姫アイファ、この旅は危険を伴うもので…。」
「危険があったらあなたが死ぬ気で守ってくれればよいじゃなぁい。それとも守ってくださらないのぉ?」
「いえ、滅相もございません…。しかし必ず新しい食が見つかるとは…。」
「いいわぁ。失敗があるからこそぉ美食に出会えた時の感動も大きくなるですからぁ。」
そう語るアイファだが、ここにいる誰もが、見つけられなかった場合面倒くさいことになると分かっていた。
そして、アイファが言い出したら誰も止められないことも。
かくしてコウウとお供のバチョウ、レイキョウにアイファの新しい食探しの旅が人知れず決定したのだった。




