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飯テロ⑤エルフからの攻撃と顛末

兵糧攻め成功したようです。

大量の【ルンダン】の素、長芋を土産に再びソッジャへ戻ってきた。

1週間位掛かっちゃったけど、その後あの親子はどうしているだろう?そんな風に考えながら村に入ると、街の雰囲気が気持ち明るくなっているように感じる。いや、明るいと言うか、前よりもみんなアドレナリンが出ている感じ?

不思議に思いながら親子の家に行くと、二人とも元気だった。ちょっと痩せた?と息子が心配していたお母さんは妙にデカくなっていた。太ったというよりは、筋肉方向に。


「あ、ココ!エコ!見て見て、お母がめちゃくちゃ元気になった!」

「元気っていうか…」

「マッチョですね。」

「最近調子よくってねぇ!ほら!」


俺たちに気づき、作業を止めお母さんが手を開くと、なんてことでしょう、手からパラパラ粉が落ちます。まさかあれ、きなこじゃないですか!?粉末大豆の作り方を説明したときに、炒った大豆を粉にするときなこになり砂糖とちょい塩混ぜれば、お餅にしたご飯とめちゃくちゃ合うよって教えてあげたんだけど…。手で握り潰して作るもんじゃないですよ?


「こうやって作るとトレーニングにもなって一石二鳥なのさ!それより、そっちのべっぴんさんは?コーダの嫁さんかい?」

「い、いえ…。仲間です。ちょっと用事があっていなかったんですけど、戻ってきたんで。」

「リッコです。」

「リッコか、みんな兄弟みたいだな!」


わっはっはと笑うお母さん。明らかにコミットされちゃってますね。タンパク質めちゃくちゃ摂取してますしね。もしかして、村にどことなく漂うアドレナリン感、コミット…!?

ちなみにリアも例の仮面装着済みです。


「でも、筋肉はついたんだがパワーがもたなくてねぇ…。」

「タンパク質しか摂取してないですからね。そこで、米に代わる主食用意したんです。村のみんなにも意見を伺いたいんですけど、集めることは可能ですか?」

「米に代わる主食?それはすごいね。それなら、この後定期集会で集まるから一緒に来るといいさ。豆の使い方皆も喜んでるんだ。その主食とやらもきっと喜んでくれるさ。」


今日は丁度集会の日だったらしい。集会は全ての村の人が参加し、普段であれば作物の育ち具合や大都への定期便で必要なものを相談したりしているらしい。最近は米を失った事による対策やら、主食を食べられなくなったことで起こる体調の悩みなどを相談しあっているらしい。

集会場は田舎の地区センター位の大きさだった。中は厚手のラグが敷いてあって基本はみんな地べたに座って話すようだ。端には木の箱がいくつか置いてあって、足が悪いお年寄りは木の箱を使うようだ。昔祖母が牛乳パックを使って座る椅子作って、軽いからいいっていいながらどこにでも持ち歩いていたのを思い出すな。


カイト達に連れ立って俺達が集会場に入ると、一瞬騒ついたがお母さんが豆の使い方を教えてくれた人だと紹介すると物凄く歓迎された。本当に喜ばれていたようだ。


「実は俺達は今回、エルフの国タルウィドゥナの代理としてこの村に戻ってきました。」


再び騒つく村人達。


「エルフから?そ、それは何故…。」

「縁あってタルウィドゥナの人たちにこの村の状況を話しました。騎士達に米を奪われ豆しか食べれない状況にあることを。そして、米に代わる主食を提供したいと。」

「し、しかし騎士達はこれからエルフの国に攻め込もうとしているんじゃぞ?」

「えぇっと…」

「村長のモンドだ。」

「モンドさん、ご懸念は分かります。ですがエルフの方達は、ソッジャの方達が騎士団の被害者、エルフと同じ立場と感じたようです。それに、主食を奪われる辛さが痛いほどわかると。主食を食べないと人は力がでなくなる、疲れも溜まりやすくなり、体臭がきつくなる、抜け毛が多くなるなどの不調が起こりますから。」

「な!俺最近抜け気で悩んでるぞ!」

「私も疲れが取れなくって…。」

「おとうちゃん臭い!」


一斉に体の不調を訴えるソッジャの人達。早くも実感し始めているようです。おとうさんの匂いだけは炭水化物不足が原因と言い切れないけどね…。


「そ、それでエルフ…さん達は何を提供してくれると?」

「それは、こちらです。」


モンドさんの良いフリを受け、みんなの前に長芋とココナッツ容器に入れられた【ルンダン】の素を披露します。みんな初めてみる食材に首を捻りつつも興味津々な様子です。


「こちらは長芋と【ルンダン】の素です。今から作ってみせますので皆さん是非味見してください。もしお口に合うようでしたら、この料理を次の米が収穫できるまで支援してくれるそうです。」

「な、なんと!そんなに助けてくれるのか?なんて優しい人たちなんだ…。」


俺達は早速【フフ】と【ルンダン】の作り方を紹介した。【ルンダン】の具には、まだこの村では肉が狩れてないのでもちろん【トーフミート】だ。【フフ】はつくだけ、【ルンダン】は好きな具材を入れて煮込むだけ。あっという間に完成、実食してもらうと概ね大好評だった。一部この複雑な味に戸惑っていたが【フフ】は皆大好きだった。


「【フフ】は主食なだけあって食べやすいですからね。豆から作ったきなこをかけて食べても美味しいですよ。」


俺が提案すると、カイトのお母さんが手作りきなこを持ってきた。本当の手作りのね。

子供にも女性にもきなこフフは大好評だった。甘いものは皆好きですよね。


「こんな美味いものを提供してくれるなんて…わしらはそんなエルフに攻め入ろうとしていたのか?」

「攻めようとしているのは騎士団で、あなた達ではないですよね?」

「だが、同じ人族じゃて…。」

「俺もエルフの国に攻め込むのは人道的じゃないなって感じてたんです。欲しいから暴力で奪うって、魔物と一緒だと思いませんか?」

「確かに…。そう言われると理由もなく攻め込むのは決して良い行いとはいえないな。」


俺の訴えに村人達の騎士団への不信感が加速します。煽るぜぇ、煽っちゃうぜぇ。


「騎士達村から米奪った。」

「そう、騎士団は同じ人族である村を苦しめている!」

「ご飯美味しいからしょうがないぞ!」

「そう、騎士団は美味しいご飯を独り占めしている!俺は子供達にそんな大人に育って欲しくない!」


こだまとエティの言葉に、騎士達の悪事を突きつけていく。


「私もカイトがそんな育ち方して欲しくないわ。」

「お母、僕はエルフさんいじめたりしないよ!」

「エルフ達は俺の髪の救世主だ!」

「もう娘に臭いなんて言わせない!」

「だったら騎士団の非人道的な攻撃はやめさせなきゃ!」


カイト親子が参戦すれば、村人達も堰を切ったように声を上げる。最高潮に盛り上がった集会。その日のうちに村人達からの嘆願書が提出された。今すぐエルフへの攻撃をやめ、大都に帰って欲しいと。


一方その頃騎士団でも事件が起こっていた。


「コウウ様、てぇへんだ!もう塩も醤油も底をついた。米も…殆ど残ってない…。」


ガンテツが慌ててコウウの部屋に飛び込んでくる。そう、あんなにあったご飯泥棒が早くも底をついていたのだ。それに伴い村人から奪った米も残りわずか。コウウは未曾有の危機を迎えていた。


「もう、大食らいどもを前の食生活に戻すのはむりですぜ!大都からの追加はいつですか!?」

「くっ…。それは…。」


大都からの返事などもちろんきていない。再三に渡り要請はしていたのだが、若いコウウの団は優先度が低い。よって支援どころか、返事すら戻ってきていないのだ。雨季が終わり、戦闘開始まではもう1週間も無い。しかし戦いが1日で終わるはずもなく、食料は確実に足りないだろう。エルフから奪えばと考えていたがもはや、奪うまでには間に合わない状況。たらふく食べた騎士達の胃は膨れ上がっているし、贅沢に慣れてしまった今食事の質を落とせば肝心の戦闘にまで影響がでてしまう。そこに更に騎士が飛び込んできた。


「コウウ様!村人から嘆願書が届きました!」

「た、嘆願書だと?村人達はなんと言っている?」

「……エルフへの攻撃を諦め、撤退して欲しいと。」

「騎士団の行いに痺れを切らしたか…。流石に全ての米を奪ったのは愚作だったか…。」

「コウウ様…いかがしましょう?」

「もう潮時かもしれぬな…。撤退しよう。」

「しかし、それでは村人への米代は…。」

「このままでは、戦にまで負けてしまう可能性がある。米代は…策の練り直しだ。これ以上村人達の不信感を煽らぬよう速やかに撤退だ!」

「ハッ!了解しました!!ガンテツ、みんなに撤収の合図を!」


こうして呆気なく、コウウ率いる騎士団は戦わずして敗戦することとなった。

村を去るとき、エルフの国、そしてエゾの国の方を一人睨み付けるコウウに誰も気づくものはいなかった。

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