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飯テロ④ワノナ国バイファン町

合法○薬…?

「やだ。」

「ひとりが寂しかったらこだまつけるよ?」

「やだ。」

「ちょこっと人族の町に行って、こいつらつき返してくるだけだよ?それに人族の町なんて行きたくないでしょ?」

「分かってる。でも私もいく。」

「さっきのこいつらの目ぇ見ただろ?嫌な気分になるだけだぞ?」

「でも、行くの。」

「楽、リアを仲間外れにしたらダメなんだぞ?」

「仲間外れってわけじゃ…。」


何を言っても聞かず、現在俺たちは横に座るリア御者のもと人族の町を目指している。あんまり人族に近づけたくないんだがなぁ。捕虜達の歩みが遅いのでのんびり移動中だ。ちなみに捕虜達は煩いので今は猿轡を装備している。


平然とした表情で馬を操っているリアだが何か距離が近い気がする。そんな狭い御者台ではないのだけれど。指摘しても「そんなことはない。」の一点張りだ。本人は否定するが、やっぱり人族、緊張が隠せないのだろう。思わず頑張りすぎるリアの頭を撫でてた。


「ッ…何…?」

「あぁ、ごめん。なんか頑張ってるなって思って。でも無理する必要はないから辛かったら言えよ?」

「べ、別に…無理してない。」

「そっか、えらいえらい。」

「…子供扱いするな。でも…ありがと。」


辛うじて聞こえる声で返事したリア。でもさっきよりは多少緊張がほぐれたようだ。もうこれ以上辛い思いをしないでもらいたいものだ。


人族の町までは半月以上かかった。あの肉の量は、長旅のためだったんだな。食料が足りないから、魔物を狩りながらの旅。実に面倒臭い旅だった。捕虜にもちゃんと食事は与えてましたよ?死なれたら困りますからね。その代わり毎日真横で飯テロ。嫌がらせもしっかり忘れずにね。


そんな長旅の末見えてきた人族の町。それは結構小さめの田舎町だった。捕虜達から聞き出した情報によると、ここはワノナ国の中でも特に小さい辺境の町バイファンらしい。辺境すぎて他の町との交流も少なめ、自給自足で頑張ってるそうだ。

遠くからでも分かる玉ねぎみたいな建物。あれは集会所的なものかな?人の家々は瓦屋根で全体赤っぽい建物。沖縄とか中国で見かけるみたいな?町を囲う壁に描かれたデザインはどことなくタイとかベトナムっぽい。アジアをごちゃ混ぜにしたような雰囲気の町だった。


人族ではある程度の年齢になると大都で学び、様々な職業につく。特に人気があり、名誉とされる職業が騎士であり、この町にも大都で騎士になった者達が帰ってきて大手を振っている。かなり辺境の町でも騎士を配属してるって、やっぱり力が正義な国のようだ。その証拠にただでさえ騎士の権限で好き勝手やっている彼らだが、欲深い彼らは一儲けしたい、大都で出世したい、そして単純に欲を満たしたいと勝手に進軍を始めたらしい。


町には到着したが、一旦捕虜を町の外に放置し、人族に唯一紛れても違和感ない俺一人で町のリサーチへ。こだまだけ念のためリュックの中に潜んでもらい、リアとエティは「どこでもYEAH」で休憩だ。

町を歩いてわかったことは、この町の主食は米で、肉と魚をよく食べている。もちろんジャポニカ米。味噌・醤油は存在はしていたが贅沢品、貴重な食品らしく大都に行かないと手に入らない。昔の日本でも寺院や貴族階級に珍重されていたらしいし、まだ一般普及には至ってないのだろう。ということで味付けは質素な感じのようだった。

うん、指針は決まった。

さぁ、飯テロのお時間です。騎士の外道を野放しにした町の弱みを握りましょう。


一旦「おうちYEAH」に戻ったら早速仕込み開始。

今回の飯テロの主役は【ケイジャンスパイス】だ。


【ケイジャンスパイス】


材料

・パプリカパウダー

・クミン

・ガーリックパウダー

・オレガノ

・コリアンダー

・タイム

・クローブ

・シナモン

・チリパウダー


作り方は簡単。材料のスパイスをブレンダーで細かく混ぜ合わせるだけ。配分は何度か試して自分好みを探すと良いらしいがネットのおすすめ配合頼みです。

この【ケイジャンスパイス】、肉にも魚にも合い、絡めて焼くだけで爆発的に上手くなる万能スパイスだ。確実に病みつきになる。このスパイスを町に持ち込んで魅了してやろう。


大量のスパイスを作成し、更に小さな屋台を作っていざ町へ。今度は全員変装して。リアは帽子と服装である程度変装できたが、こだまとエティは難しかったがほぼ着ぐるみみたいな服と仮面でちっちゃい子供に変装した。俺も帽子に仮面、声もなるべく変えるように心がけた。


「【ケイジャンスパイス】いかがですか〜?肉も魚も劇的においしくなるよ〜!」

「うまうまうまうま」

「ケイジャンスパイスうまいぞー!」


試食用に鶏肉や魚を焼いていき、こだまとエティがうまそうに食べる。【ケイジャンスパイス】の刺激的な香りとこだまたちの美味しそうな食べっぷりにどんどん人が集まってくる。リアは俺の後ろで黙々と味見用食材を焼いている。


「うまそうな匂いだな?どんな味なんだ?」

「味見用にいろいろ焼いたんで食べてみてください。」

「うまい!これは鶏肉か?」

「そうです。魚も合いますよ!」


【ケイジャンスパイス】は質素な味付けばかりだった町の人には衝撃のうまさだった。肉にも魚にも合って、しかも塗すだけで劇的に上手くなるスパイスは飛ぶように売れた。大量に作ったが見る間に売れていく。その日から1週間ほどスパイスを売り続けた。同時に上手な使い方も惜しげなく披露。


「【ケイジャンスパイス】で作れる美味しいご飯もお教えしましょう。」


【ジャンバラヤチキン】


材料

・ケイジャンスパイス

・鶏肉

・米

・玉ねぎ

・パプリカ

・ピーマン

・トマト

・にんにく


鶏肉はケイジャンスパイスを揉み込み30分ほど寝かせる。30分後皮目からパリパリになるように焼く。

鶏肉を漬け込んでいる間に、ご飯。玉ねぎ、にんにくをみじん切りにしフライパンで炒め、香りが立ってきたらパプリカ、ピーマンのみじん切りを加えて炒める。

米、ケイジャンスパイスを加えて炒め、米が半透明になったらトマトをつぶし入れ、水を加える。沸騰してきたら蓋をして15分ほど煮る。

炊き上がったご飯の上に焼いたケイジャンチキンを載せれば【ジャンバラヤチキン】の完成だ。


町の人たちの反応はもちろん大好評。子供たちも毎日のようにケイジャン料理をねだっているらしい。順調に【ケイジャンスパイス】に魅了される町の人たち。そろそろ頃合いでしょう。

毎日現れていた【ケイジャンスパイス】屋さんは今日で廃業です。


2・3日休んだのち、町の外に隠しておいた罪人たちを引き連れ再び町を訪れます。因みに【ケイジャンスパイス】売りをしている間捕虜たちにも【ケイジャンスパイス】堪能してもらっておきました。ずっと味のないご飯を食べてたからかみんな即【ケイジャンスパイス】に落ちました。

さて、町の入り口に立ち自作のメガホンで声を張ります。


「人族ども、我々は罪人を捕捉した。どう落とし前つけてくれる!!!」


更に、こだま&エティによる魔法花火の演出。悪いことしたらバチが当たるってみんなに知らしめなきゃだからね。その騒がしさに町の人たちが集まってきた。


「なんだ!お前達は!」


集まってきた中で、とびきり偉そうなおっさんが前へ出てきた。知ってる。あれ町長のザマクだ。


「俺たちは犬人族の村から来たものだ。お前達の町からやってきた外道どもを親切にも連れてきてやったんだ。あれを見な!」

「な…騎士隊…!?」


指差した先には十字架に貼り付けられた騎士ども。捕虜達を目の当たりにし一気に騒がしくなる。


「静かに!!!こいつらはお前達の差し金か!?何の罪もない犬人族の村に突然攻め込んできて起こした非道の数々!」


困惑する町の人たちに間髪入れずに言葉を畳み掛ける。


「奴隷が欲しいから、何の罪もない村に押し入る。それは文明人のすることか!?」

「じゃかーしぃわ!!!好きかって言ってやがるが、侵略は正当な手段だろうが!あぁ!?」

「兄貴、あいつの後ろ見てください。上等なエルフに珍しいの2匹も連れてますぜ!」


町長、町の人たちを押し除け極悪人顔の騎士が前に出てきた。

騎士ってみんなあんな顔のやつばっかなのかな?

それにしても安定の外道っぷり。リアが俺の後ろに隠れたので、こだまを拾い上げ渡しておいた。


「楽、オラお腹すいた!」

「楽、こだまも。」


こちらも安定のマイペースっぷり。もう飽きちゃったの?


「テメェら無視してしゃべってんじゃねぇ!」

「そうだそうだ!いちゃつくんじゃねぇ!」


煩いんで、極悪人顔たちサクッとエティの氷魔法でカチカチにしてその辺に転がしておきましょう。


「あなたたち、騎士の悪事放っておいていいんですか!?」

「いや、でも…。」

「犬人族は今後もうあなた達と取引はしないと言っています。」

「と、取引…?」

「私達も詳しくは聞いてないのですが、スパイスがどうのこうのって。」

「す、スパイス!!??まさか【ケイジャンスパイス】か!!??」


そう、そのまさか【ケイジャンスパイス】です。自分たちの手で騎士をきちんと裁き、犬人族に賠償するか、永遠に【ケイジャンスパイス】を失うか。そう町の人たちに突きつけると、みんな一斉に騎士を睨みつけます。すでに町は【ケイジャンスパイス】の虜。【ケイジャンスパイス】の禁断症状がでている状態。

手に入らなくなった発端が自分たちが放置していた騎士団の悪事の所為とわかり怒り心頭。二つ返事で償わせることを約束し、犬人族に謝罪&罪人を突き出すと約束してくれました。刺激の少ない食生活を送っていた町の人にとっては違法薬物ばりの効果があったようです。必ずやケルプの村に行き、謝罪を受け入れてもらうと闘志を燃やしております。和解し良い関係を(きず)けた暁には作り方教えてあげようかな…。



「例のブツ用意したぜぇ。」

「ほ、本当か!」

「シッ、声がでけぇ。」

「す、すまん。約束のものは用意した…。」

「へへっ、毎度あり。」


こっそり騎士団に【ケイジャンスパイス】を卸す楽。

その後、あっさり香りで町の人たちに見つかりこの町の騎士団はひっそりと姿を消すことになったとさ。

この威力…スパイス戦争も起こせちゃうのでは…。末恐ろしいですね。

こうして楽も震えるほどの威力を以て飯テロ成功とあいなりました。

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