飯テロ③捕虜奪還
心のケアには薬よりも故郷の味です。
さて、人族どもは2日ほど好き勝手して、帰って行ったらしい。大量の村人を連れてるから進行は遅いはず。急いで追いかけるとしましょう。
「何であんたはわしらを助けてくれるんだ…?」
見送る村の人たちは感謝しつつも不思議に思ったようだ。
「オラはヒーローだからな!」
「だそうですよ?…ま、俺たちはヒーローのお供ってことで。糞人族の悔しがる顔が見たいし。まぁ、全員生きて連れて帰れるかは分からないが、あんたらは精々帰ってきた村人を迎える準備をしておく事だな。」
「……。」
なにか言いたげにじとっと見つめてくるリアを気にせず、とっとと出発しますか。
2日も前に出発したというのに翌日の昼過ぎ頃人族一行に追いついた。捕らえた村人たちが徒歩だったので大分ゆっくり進んでいたのだろう。あと、俺らの移動スピードが早かったのもある。夜も2人交代で仮眠をとりつつ移動し続けたのが良かった。鍵持って移動すれば休んでる人も移動してることになるからな。「おうちYEAH」様様だ。
追いついた人族一行の村人たちの扱いは散々だった。
世界的に有名なミュージカル、あのレ○ゼみたいにしっかりとした奴隷つなぎでまとめられた犬人族たち。メイクさんも参考にしたほうが良いリアルボッロボロのフラフラだ。碌に食べ物も与えられてないのだろう。
追いついたのが昼過ぎ頃だったからか、馬車を停留し、その横で豪快に肉を食べている人族。人相まるで盗賊、なのに服装は騎士っぽい。まさかこの非道行為を正義の名の下にやってるの?まるでなんちゃら警察ですね。あ、うっかり言葉の暴力が…反省反省。
「さぁ食後のデザートといきますか。」
「がはは、テメェ昨日も大概だったがまだいくんかい!」
ニタニタ気持ち悪い笑いを犬人族に向ける下衆野郎に、トスッ。
あらなんて事でしょう。頭から矢が生えています。
「な…誰だ!?」
倒れる仲間に一瞬驚きつつもすぐに臨戦態勢に入る人族。素早い動きは腐っても騎士なんだなぁ。
「楽、あれが人族?」
「そうみたいですね、こだまさん。なんて醜い連中なんでしょうね。」
「て、テメェ無視してんじゃねーぞ!」
こだまとのコミュニケーションを邪魔する奴らを睨み付けると、一部はリアの存在に気づき気持ち悪いニタニタ顔をしています。
「いいもん連れてんじゃねぇか。そのちっこい変な2匹も珍しいから高く売れそうだ。迷惑料代わりにいただいてやるぜ。」
「こだま、ああいう品のない大人には絶対なっちゃダメだからな。エティ!」
エティに合図すると、地面が一気に凍りつき人族の足が固定されます。
「なっ…。」
驚くのを待たず、リアとどんどん矢を放っていきます。
狙い違わず、男たちの太腿、肩に貫通していき、こだまが石でできた縄でガッチリ拘束していきます。
最初の人思わず頭撃っちゃったけど、他は殺さず無力化していきます。
「な、何なんだオメェらは!」
「オラは、ヒーローだぞ!」
拘束された男どもにヒーローポーズを披露するエティ。
なんか、すごく楽しそう。
「あ、あのあなた達は…。」
「俺たちは、あのヒーローのお手伝いですよ。さ、怪我してる人はこちらのこだま先生が治療してくださるそうですよー。」
怪我人をこだまとリアに押しつける。するとエティが戻ってきて「楽、ご飯の時間だぞ!」と。ちょうどお昼時だし、犬人族のみんなは明らかにしばらく食べてない様子。飯テロの延長戦ですね。
こだま達は忙しそうなので、今日はエティとクッキング。
「分かった!まずはでっかい鍋に水だな!」
エティが指示通り寸胴に水を張ってくれる。
そこに、米、昆布を入れ、火を入れる。
「楽、何作るの?」
「とりあえず昆布でご飯炊いて、【昆布出汁香る親子丼】。馴染みの香りがすればあいつらもほっとするだろ。」
「昆布の旨味はすごいからな!みんな喜ぶな!」
「お、お前もグルメになってきたじゃないか。さっさと作るぞ!」
昨日村で振舞った【クラムチャウダー】や【マッシュルームとあさりのカルドソ】でも良かったんだけど捕らえられているのは若者ばっかなのでガッツリ食べれる方が早く元気でるだろう。
【昆布出汁香る洋風親子丼】
材料
・鳥もも肉
・玉ねぎ
・昆布出汁
・粉チーズ
・塩
・卵
昆布出汁に薄切りの玉ねぎ、そぎ切りの鳥もも肉を入れ煮立たせる。鳥もも肉に火が通ったら粉チーズを絡めて味を整える。
溶き卵に粉末状にした塩、昆布を入れメレンゲ状になるまで泡立てる。フライパンに溶き卵を入れ蓋をして蒸し焼きに。卵が固まってきたら、ごはん、卵、昆布出汁鳥もも肉をかければ完成だ。
卵をどんどん焼き、ご飯に乗せたらエティが肉をかける。息の合った流れ作業であっという間にみんなにご飯が配られる。
治療が終わったこだまとリアもしっかり受け取っている。
「うまうまうまうまうま」
「昆布の旨味爆発だぞ!」
「チーズも意外と合うんですね。」
とグルメが言えば、
「昆布の匂いだ…。食べたことない味。でもすごくおいしい…。」
「ふわふわで何杯でも食べれそう…。」
みんなもりもり食べてくれます。
中には泣きながら食べてる人までいます。
でもよっぽどお腹空いているのか、足りなくなりそうな勢い。
食欲も旺盛そうなので人族の馬車を漁って出てきた大量の肉と、村で奪ったであろう小麦粉を使ってもう1品。しかし、こんなに食材あるのに犬人族に少しも与えないなんて…。
うん、食べちゃいましょう。
【昆布出汁香るシュニッツェル】
材料
・豚肉
・卵
・小麦粉
・塩
・胡椒
・粉末昆布
・バター
まずは豚肉を切り、叩いて薄くする。
楽しいのかエティがどんどん叩いてくれる。
薄くなったら塩胡椒し、とんかつの要領で溶き卵、小麦粉、粉末昆布をたっぷり加えたパン粉の順で絡めて、バターをひいたフライパンでこんがり焼く。
【シュニッツェル】は薄いからどんどん焼ける。
食べ足りない犬人族が列をなし、じゃがいも食堂のような勢いで捌いていく。
転がしておいた人族達がうまそうに食べる犬人族を見てよだれダラダラに。
知らず知らずのうちに本来の飯テロもしてたようですね。
肉はまだまだあったが、みんな満足したようなのでここで炊き出し終了となった。
「エティ様ありがとうございます。本当にあなたはヒーローです。」
「オラ、ヒーローだからな!当然だぞ!」
「エティ様達の英雄譚は代々語り継いでいこうと思います!」
エティがご満悦で村人たちの対応をしている間に俺たちは馬車を拝借。馬車は全部で4台だったので、3台を犬人族が帰るための足にしよう。余った肉とかは邪魔なので、村に持ち帰ってもらおう。
俺たちは残りの1台で人族の町を目指すことにしましょう。捕らえた捕虜たちを突き出して交渉しなきゃですから。人族の移動手段?もちろんレミゼスタイルで歩いてもらいますよ?
さて、人族の町を目指すとなれば…そろそろ告げなければ。
「リア、お前はここまで。犬人族を村に連れて帰ってやってくれ。」




